薄曇りながら、長袖では少し暑いくらいの陽気になった春の一日、東京の藤の名所の亀戸(かめいど)天神社(東京都江東区)へ出かけました。

 

 最寄り駅のJR総武線(そうぶせん)亀戸駅北口から亀戸十三間(じゅうさんげん)商店街を通り、ゆっくり歩いて約15分。“亀戸天満宮”の名で古くから親しまれている亀戸天神社は、天満大神(てんまんおおかみ)の菅原道真公を奉祀しており、本社である九州太宰府(だざいふ)天満宮に対して“東宰府(ひがしさいふ)天満宮”と称されることもあるそうです。

 

 最初に朱塗りの美しい大鳥居をくぐります。この日はちょうど4月15日~5月5日で開催されている“藤まつり”の期間中で、平日にもかかわらず境内は多くのひとたちで賑わっています音譜。お好み焼きやさつまいもスティック、鮎の塩焼きなどを売る露店が軒を連ねる様子もほんとうに久しぶりに見た気がして、何となくうきうきします照れ

 

 大鳥居をくぐると、目の前に池と大きな太鼓橋が見えます。そして左手には東京スカイツリーも~目ラブラブ

 

 亀戸天神社のホームページによると、境内は本社である太宰府天満宮を模して造られていて、この“心字池(しんじいけ)”には太鼓橋がふたつと平橋ひとつの合わせて3つの橋がかけられているそうです。太鼓橋の上から見るスカイツリーと藤棚と池のコラボレーションも素敵~キラキラ

 

 同じくホームページの境内案内によると、心字池にかかる3つの橋はひとの一生に例えられ、手前から過去・現在・未来を表していて、それを「三世一念の理(ことわり)」と呼ぶのだそうです。ひとつめのこの急勾配の太鼓橋は別名“男橋”ともいわれ、これまで生きてきた過去を表すそうです。かの徳川家康も「人の一生は重荷を負うて遠き道を行くがごとし・・・」と言い残したように、急な石段を一歩一歩上りながら来し方を思うと、たしかに平坦な道のりばかりではなかったなぁという思いがこみ上げてきます。

 

 太鼓橋(男橋)の上からのこの眺め、なかなかの絶景です合格

 

 ふたつめの“平橋(ひらばし)”はその名のとおり平らな橋で、現在歩んでいる道を表わすそうです。この橋は参道でもあるので、そぞろ歩きの花見客とは別に参拝を待つ長い列ができていて、橋の写真を撮ることができませんでした。

 

 藤棚の下にくるとほのかな甘~い香りが漂ってきて、とても幸せな気持ちになりますラブラブ

 

 過去、現在を経て、最後に男橋より少し小ぶりの赤い太鼓橋があらわれます。これが未来を表わす“女橋”で、三つの橋をつづけて渡ることで心が清められ、そのまま神前へとすすむように造られているそうです。由来を知るとなるほどなぁと思います。

 

 女橋を渡った先には境内社の“弁天社(べんてんしゃ)”があります。太宰府天満宮の心字池のほとりにある“志賀社(しがしゃ)”を勧請したもので、江戸時代、心字池を上野不忍池(しのばずのいけ)に見立てたことから、弁天社と呼ばれるようになったそうです。

 

 参道をすすむと、スカイツリーがだんだん近づいてきます音譜

 

 ようやく拝殿の前に出ました。手前に手水舎(てみずしゃ)があるのですが、すぐそばで何かイベントが行われているのか黒山の人だかりで囲まれている上に、一度この場を離れると、また大鳥居からつづく参拝の列に並び直さなければならないので、大変申し訳ないと思いつつ持参の手拭いで代用させていただきました。

 

 御祭神の菅原道真公は幼少のころから学才に優れ学問の神さまとして信仰を集めているので、亀戸天神社も一年を通して合格祈願や学業上達を願って参拝される方々がとても多く、そのような“学業講員(こういん)”を対象に、藤まつりの期間にあわせて特別昇殿による御祈祷が行われ、それを“学業講祭(こうさい)”と呼ぶそうです。ふだんわたしは参拝時に願いごとをしないほうなのですが、ちょうど学業講祭期間中ということもあり、今日ばかりは勉強中の韓国語の上達を静かに祈りました。

 

 御朱印を待ちながら境内を散策します。こちらは本殿向かって右手に建つ神楽殿(かぐらでん)。

 

 その隣の石造りの鳥居の奥は

 

 道真公の教学上の師である延暦寺第十三代座主(ざす)、法性坊(ほうしょうぼう)尊意僧正(そんいそうじょう)を祀る“御嶽(みたけ)神社”です。今でも“卯(う)の神”として知られ、卯は時間では午前6時、方角は東を指し、ものごとのはじまりにつながるので、開運の神さまと言われるそうです。

 

 その向かいには“なんじゃもんじゃの木”目ビックリマーク。たしか深大寺(東京都調布市)の境内にもあって、そのときに読んだ説明書きの「4月頃雪のように白い花をたくさんつける」というのが忘れられず、一度花を見たいなぁ~と思っていたのが叶いましたラブラブ。別名スノーフラワーというだけあってほんとうに雪のように白く、失礼ながらちょっと風変わりな名前からは想像もつかないような可憐なお花です。

 

 先ほど渡った太鼓橋(女橋)を心字池越しに眺めるのもまたよき哉。

 

 同じく境内社の“花園社(はなぞのしゃ)”は、菅原道真公の奥方さまと御子(みこ)十四方をお祀りし、安産、子宝、育児、立身出世の守護神とされているそうです。

 

 心字池には回廊(かいろう)が巡らされ、池を覆うような藤棚を眺めながら散策できるのですが、何しろひとが多くてごった返しているので、歩くのも写真を撮るのもひと苦労ですあせる。 

 

 “明月樓(めいげつろう)”と彫られた石碑の上では鳩が羽を休めています。

 

 金沢の兼六園(けんろくえん)のものとよく似た琴柱(ことじ)灯籠もありました。

 

 心字池では大小の亀さんたちが甲羅干し~。亀たちは回廊からの参拝客の視線に慣れているのか、カメラを向けても悠々としています。

 

 横から見ると、男橋の大きさとアーチの深さがよくわかります。

 

 本殿向かって左手に鎮座する“御神牛”。牛は天神さまの使いとされ、御神牛を撫でると病気平癒のご利益があるといわれています。皆が撫でる頭や手足はピカピカに光っていますねキラキラ。案内板には道真公と牛のふかい御神縁が詳しく記されています。

 

 ふと見ると、すぐそばの玉垣(たまがき)の内側に、御神牛と同じ形で丸くなっている猫がいました。玉垣の外から手を伸ばして届くか届かないかの絶妙なこの距離が、さすがですビックリマーク

 

 つづいて境内社の“紅梅殿(こうばいでん)”。道真公といえば京都から太宰府へ流されたとき、菅公を慕って飛んできたという“飛梅(とびうめ)伝説”が有名ですが、太宰府天満宮の御神木である「飛梅」の実生(みしょう)を勧請し奉斎してあるそうです。

 

 亀戸天神社の御朱印。藤まつりの添え印がありました。

 

 御朱印は書き置きではなく御朱印帳に直書きしてくださる上に、季節の絵はがきと神社に因んだかわいらしい金太郎飴までついてきます。 

 

 パンフレットを見ると、江戸時代の浮世絵師、歌川広重(うたがわひろしげ)の『名所江戸百景』にも「亀戸天神境内」と題して太鼓橋と藤の花が描かれているそうです。縁起によれば、亀戸天神社は天神信仰に篤かった徳川家第四代将軍家綱(いえつな)がこの地に境内地を寄進したことで建立されたそうで、周囲の環境は目まぐるしく変わりながらも、今もこうして360年前と同じ景色を見られるのはほんとうに幸せなことだと思います。

 

クローバー チューリップオレンジ クローバー チューリップピンク クローバー チューリップ紫 クローバー チューリップ赤 クローバー チューリップ黄 クローバー

 

 そしてそして、亀戸といえば元祖くず餅の“船橋屋”さんは決して外せないのですが、本店も出店も想像以上の大混雑ビックリマーク。順番を待つ列は先が見えないほどで、この日は泣く泣く諦めることになりました。本店入口前の藤棚も、ちょうど見ごろの満開を迎えていました。

 

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