雨上がりの秋の一日、紅葉の時期の混雑を避けて、昇仙峡(しょうせんきょう・山梨県甲府市)を訪ねました。

 

 昇仙峡は甲府盆地の北側の荒川上流に位置する峡谷で、その景観は国の特別名勝に指定され、“日本五大名峡”のひとつにも数えられる山梨県を代表する観光名所です。

 

 昇仙峡のなかでも観光のメインとなるのは“滝上エリア”と呼ばれる上流の仙娥滝(せんがたき)周辺なのですが、今日は時間があるので、昇仙峡の玄関口である下流の長潭橋(ながとろばし)から渓流沿いの道を歩いてみようと思います。天神森(てんじんもり)にある市営無料駐車場に車を停めると目の前に、菅原道真公を祀る御岳天神社があるので、まずご挨拶をしてから歩きはじめます。

 

 石碑に刻まれた“特別名勝 御岳(みたけ)昇仙峡”が正式名称で、案内板を見ると~秩父多摩甲斐国立公園~と記されています。昇仙峡は山梨県と思い込んでいましたが、昇仙峡をふくむ国立公園は埼玉、東京、山梨そして長野の一都三県にまたがっているのですね。

 

 台風と雨にたたられたシルバーウィークの最終日、ぽっかりと晴れ上がった青空晴れを見たら家にじっとしているのがもったいなくなり、急な思いつきで飛び出してきたのですが、埼玉の我が家から圏央道、中央道を経由して昇仙峡の入口まで約2時間、ドライブにはもってこいの距離です。

 

 初夏の新緑、冬の雪景色なども美しいのですが、昇仙峡といえば秋の紅葉が最も有名で、辺り一面色鮮やかに染まる見ごろの10月下旬~11月中旬は、例年多くの観光客でにぎわいます。今日はまだ紅葉の時期ではないのですが、雨上がりの緑が青空に映えてとても美しい景色です。

 

 荒川沿いにきれいに整備された道は木陰が多くとても歩きやすいのですが、ごくたまに横を車が通るので、遊歩道ではないようです。

 

 昨日まで降り続いた雨で水嵩が増しているのか、川はごうごうと音を立て、しぶきを上げながらかなり早いスピードで流れ下ります。

 

 こんなに好天の連休最終日なのにほぼ誰にも会わず、この景色をふたり占めビックリマークマスクも外して歩けるので、マイナスイオンたっぷりの清々しい空気を胸の奥までいっぱいに吸い込みますラブラブ

 

 歩き始めから道路脇には『大砲石』『オットセイ岩』『トーフ岩』などユニークなネーミングの表示が次々と現れて、矢印の指す方向を探しながらのぞき込むと、なるほど言われれば確かにそう見えると思われる奇岩に出会えます。これは『ラクダ岩』…だったかなはてなマーク

 

 天高く~と言いますが、秋の空はほんとうに澄み渡って一段と高く感じられます。

 

 擬宝珠(ぎぼうし)かなはてなマーク

 

 ところで昇仙峡は峡谷ですが、峡谷(きょうこく)と渓谷(けいこく)の違いって何はてなマークと気になって調べてみると、それは谷間の幅だそうで、峡谷は山と山のあいだの谷の幅が狭く、川の両側に切り立った崖が聳えているのが特徴なのだそうです。なるほど~。

 

 『大仏岩』。木々が生い茂り全体が映っていませんが、確かに大きな大仏さまが印を結んでおられるように見えました。

 

 川の上流に向かって遡るので、実はずっと地味~に上り坂ですあせる

 

 岩々にぶつかりながら流れ落ちる水の勢いはとても迫力があり、同じく雨上がりで水の多かった吹割(ふきわれ)の滝(群馬県沼田市)を思い出します。あっビックリマークそういえば吹割は“渓谷”で、たしかに川幅が広かった覚えがあります。

 

 見上げれば峡谷らしい切り立った崖。

 

 歩きながら見つけた道端の小さなお社に目をやると、なんと祀られているのは蛙さんビックリマーク。“天鼓林(てんこりん)かはず大明神”という神さまだそうです。ちなみに“天鼓林”とはこの一帯の林のことで、そこでとんと足を踏み鳴らすと、地中から鼓のようなポンポンという共鳴音が返ってくるのが“然の太”のようというのでついた名だそうです。これは地盤の固いこの地ならではの現象で、山梨県の天然記念物にも指定されているのだとか。水琴窟の地面版みたいですね。

 

 天鼓林の中には1922(大正11)年、当時の東宮(皇太子時代の昭和天皇)殿下のご登臨を記念する石碑もありました。

 

 カップルで渡れば恋が成就するという“愛のかけ橋”は素通りして(笑)、荒川にかかるもうひとつの橋“羅漢寺(らかんじ)橋”を渡ります。

 

 橋の上からの眺めもまた格別音譜

 

 ガイドマップによると対岸には、“羅漢寺(らかんじ)”というお寺さんがあるようです。

 

 傍らに立てられた羅漢寺縁起を読むと、開創は詳細は不明ながら鎌倉時代の1,200年頃で、人里離れた深山幽谷の景色が中国の仙嶺(せんれい)天台山に似ているところから山号を天台山とした、と書かれています。また開創当時は真言宗でしたが、のちに曹洞宗に改宗されたそうです。

 

 寺名の羅漢寺はこの羅漢堂に安置された五百羅漢からきているようで、弘法大師の作と伝わる日本最古の木造一本造りの羅漢像が、現在154体奉安されているそうです。中は暗く、硝子越しにのぞき込むと、阿弥陀如来像を真ん中に羅漢像がいくつか見えました。

 

 元の道に戻って“落石注意”の立て看板を見ながら歩いていくと、

 

 なんとその落石事故のため、ここから先が昇仙峡観光のメインともいうべき肝心なところが通行止めになっているそうですビックリマークオーマイゴッド!!

 

 ここまで来て昇仙峡の主峰、覚円峰(かくえんぽう)や美しい仙娥滝(せんがたき)が見られないなんてあまりにも残念ですが、天災に文句を言ってもしかたがありません。ひとまず迂回路の標示に従って歩いていると、なんともおもしろい形の隧道(ずいどう)があります。

 

 その迂回路は荒川に沿って走る昇仙峡グリーンラインで、ひっきりなしに車やバスの行き交うこの殺風景な道路を上流まで歩いてもハイキングにはならないので、元来た道を引き返し、いったん車に戻ることにします。

 

 通行止めの標示が出ていたのはバス停もある県営グリーンライン無料駐車場のところで、時計を見ると、天神森の長潭橋(ながとろばし)からここまでゆっくり歩いてちょうど1時間、緩やかながらずっと上り坂だったので、戻り道はおそらく30分強で行けそうです。

 

 長潭橋(ながとろばし)のたもとの食事処“渓水館”でひとまず腹ごしらえ、そば定食をいただきます。キンキンに冷えた手打ち蕎麦と、とろろや山菜のおかずがどれも美味しくて箸が進みます。一息ついたところで午後の予定を立て直し、絶好の日和なので、昇仙峡ロープウェイに乗ることにします。レッツゴービックリマーク

 

 グリーンラインを走って10分ほどで昇仙峡ロープウェイ乗り場に到着。観光地なのに、どこも駐車場が無料なのがありがたいです。

 

 ロープウェイ乗り場の前には珍しい金色の鯉たちが泳ぐ“黄金池”があり、待つあいだも目を楽しませてくれますラブラブ。なになにはてなマークからしちゃんを探そうって・・・。この金色に輝く鯉たちのなかに、さらに珍しい“からし鯉”のからしちゃんがいるらしいのです目

 

 どれどれ・・・と目を凝らしている間に乗車案内のアナウンスがあせる。乗せていただくロープウェイは“ふくちゃん号”です。

 

 片道5分で高低差約300mを一気に上ります。途中“ゆめちゃん号”とすれ違いました。

 

 遠くに見えているのは、奥昇仙峡に作られたロック式ダムの荒川ダムです。

 

 標高1,058mのパノラマ台駅に到着。

 

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 眼前に絶景のひろがる“浮富士広場”。今日は雲が多くて見えませんが、正面の雲のなかに遠く富士山も望めるそうです。

 

 ロープウェイ駅を出てすぐ右手の六角堂は“和合権現(わごうごんげん)”といい、縁結びや子宝、金運の神さまとして有名なのだそうです。今生では縁結びも金運も今以上を望む気持ちはありませんが、龍脈(富士山の強い気)を受ける御神木にはやはり、お参りしておきたいと思います。

 

 六角堂に納められた御神木は樹齢350年を超す楢(なら)の木で、もとは水晶を産出する金峰山(きんぽうざん)の麓にあり地元のひとたちの信仰を集めていたものを、ロープウェイの開業にあわせてここに移し権現さまとしてお祀りしたそうです。お賽銭を上げたあと太鼓を一回だけ鳴らし、御神木に拝礼してから両手で触れて、その後富士山に向かって合掌するとよいそうです。

 

 奥に赤い鳥居が見えるので行ってみると、“八雲(やくも)神社”がありました。ガイドブックによると八雲神社は麓の金櫻(かなざくら)神社の末社で、こちらも縁結びのご利益があるそうです。

 

 手前の拝殿は空っぽですが、奥に石造りのとても趣のある本殿が見えています。

 

 こちらの本殿、いいですね~~音譜 この一画は清々しくてとてもよい気が感じられますラブラブ。御祭神は素戔嗚尊(すさのおのみこと)と櫛稲田媛命(くしなだひめのみこと)だそうです。

 

 八雲神社の裏手からつながる道を歩いていくと、大きな岩盤の上から絶景を眺められる“うぐいす谷”に出ます。ここも絶好のフォトスポットになっていて、若者たちのグループが交互に写真を撮りあう姿がとてもほほえましかったです照れラブラブ

 

 うぐいす谷からの戻り道の途中には臥龍梅ならぬ“龍の松”。この龍の腹にも富士山から発する龍脈が当たり、龍穴を生じるのだそうです。

 

 “約束の丘”と名づけられた小高い丘の上に建つ“出合いの鐘”。ふたりで訪れて仲良くロープウェイに乗り、和合権現、八雲神社で手を合わせた後ここで出合いの鐘を鳴らしたら、もうこれ以上のご縁はないビックリマークというくらい恋愛成就スポットが満載ですね~合格

 

 下から見るとあの岩の向こうは急斜面になっていて、落ちそうで落ちないところから“合格岩”と呼ばれるそうです。受験生は必見ならぬ必触!?ですね。

 

 ここまでがロープウェイのパノラマ台駅を出て右手のエリアで、一度浮富士広場に戻り、つぎは左手のエリアに行ってみます。雲の形がまるで雪を戴く富士山富士山みたいに見えます。

 

 マスコットの“ふくちゃん”と“ゆめちゃん”の案内で、展望台まで行きましょうか。

 

 砂地の斜面を上るとその先に、

 

 岩場が空中に突き出したような天然の展望台があり、遠く甲府盆地まで見渡せますラブラブ合格

 

 ぐるりと見回す景色のすばらしいことビックリマーク我が足を酷使することなくたった5分でこの絶景まで連れて来てくれて、ロープウェイってなんてありがたいものでしょう照れベル

 

 20分に一本のロープウェイを待ちながらパノラマ台駅でシャインマスカットのソフトクリームをいただき、麓まで帰ります。あ~もっと乗っていたいビックリマーク

 

 ロープウェイ乗り場の周辺には飲食店や天然石を扱う店などが立ち並び、“水晶街道”と呼ばれているそうです。その中の“昇仙峡水晶宝石博物館”では水晶をはじめダイヤモンド、エメラルド、サファイア、ルビーなど世界5大宝石と、それらを加工して作られた美術品の数々が展示され、無料で見学することができました。

 

 先ほどグリーンラインを通ったとき、仙娥滝(せんがたき)前の駐車場に車が停まっていたので、もしかしたら滝だけは見られるかもしれないと思い、下りてみることにします。

 

 仙娥滝(せんがたき)ってとても珍しい名前ですが、調べてみると仙娥とは、中国の神話に登場する月に帰った仙女の名前の嫦娥(じょうが)のことで、月のように美しい滝という意味で名づけられたそうです。

 

 仙娥滝(せんがたき)入口にある“昇玉堂”には、日本一大きい水晶玉が祀られています。

 

 昇仙峡の上流にある金峰山は水晶の一大産地として有名ですが、それにしても不動明王に守られたこの水晶玉の大きいことビックリマーク。直径85cm、重さ850kgもあるそうです。周りには“鈴結び”という金と銀の願掛けがまさに“鈴生り”です。

 

 滝への下り口の鳥居も立派なのですが、その脇にひっそり佇むバス停がおもしろいんですスター。こんなところをバスが通るのはてなマークと思って見ると、『クリスタル街道 しあわせ行き 昇仙峡 しあわせの一歩手前停留所』と書かれていますひらめき電球。さらに時刻表ならぬ“願掛表”までついていて、それぞれの願掛けスポットまでの歩数が記されています。芸が細かい~爆  笑

 

 傍らには『昇仙峡 未来電話』と書かれたクラシカルな木製の電話ボックスまであります。のぞきこむと「受話器をあげて未来への願い事をお話ししてください」と書かれていました。

 

 鳥居脇の岩陰には“蛙仙人”。小さな蛙がいっぱいいるので「かえる仙人」と読むのかと思ったら、案内板を見ると、蛙の字の中に『叶』(赤字)が隠れているので「かなえる仙人」と読ませるそうです。「無事かえる、若がえる、お金がかえる、福をむかえる・・・」水鉢に50円を入れると叶わぬ願いはないそうですよ。

 

 滝に向かって石段を下ってゆくと、すでにどうどうという轟音が聞こえてきます。

 

 たおやかな女性のシルエットを連想させるような美しい仙娥滝(せんがたき)は、地殻変動による断層に生じた昇仙峡の中でも最大の滝で、両側から迫る花崗岩のすき間を流れ落ちるさまはとても迫力があります。日本の滝百選にも選ばれている名瀑です。

 

 滝を見守る小さな石仏。

 

 ガイドマップによると仙娥滝(せんがたき)から荒川の下流へ向かうこの遊歩道は、今日は落石のため通行止めでしたが午前中に歩いた道路とつながっているので、ひとまず逆行しながら行けるところまで歩いてみようと思います。

 

 崖を穿って作られたような道を通り抜けるのは、おとなでもワクワクしますね~音譜

 

 荒川にかかる“昇仙橋”を渡り、対岸に出ます。橋上からの眺めは昇仙峡のハイライトキラキラともいえる絶景です。

 

 奇岩の間をすり抜けるようにして流れる川と、そそり立つ昇仙峡の主峰、覚円峰(かくえんぽう)の裏側を見上げながら歩いていると、まるで水墨画の中に入り込んだような気分です。

 

 振り返ると今渡ってきた昇仙橋が見えます。

 

 気のせいか、下流よりも岩のひとつひとつが一段と大きく感じられます。

 

 自然の花崗岩がつくり出す“石門(いしもん)”。これは岩をくり抜いたものではなく、上の岩が覆いかぶさるように落ちかかってできた自然のアーチなのですが、不思議なことにこの二つの岩は接していないのです。

 

 ねっビックリマークわずかに離れていますよね。

 

 と、ここで気がつきました。この石門から先ほどの通行止めの標示まではもうほんのわずかな距離なのですが、その間で落石があった模様です。

 

 天鼓林(てんこりん)方面から上流へ向かう道は落石で通行止めですが、仙娥滝(せんがたき)方面から下流へ向かって逆行すれば、景観を楽しみながら歩けることがわかりました。ちなみに落石現場の一時開通は、2022(令和4)年9月末を予定しているそうです。

 

 石門まで行って引き返し、仙娥滝(せんがたき)入口まで戻ります。このとき気づきましたが、この石の鳥居には“金櫻神社”の扁額がかかっているので、神社の参道だったのかもしれません。

 

 帰り道、水晶街道の近くで出会った人懐こい猫ちゃんは、両の瞳がまるで水晶宝石ブルーのように美しいブルーでした~宝石白

 

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