映画『劇場版シグナル~長期未解決事件捜査班』を見ました。この映画は、2018年、関西テレビの制作でフジテレビ系列で放送されたテレビドラマ『シグナル 長期未解決事件捜査班』(全10話)の完結編ともいえる作品で、さらにそのドラマシリーズは、2016年に韓国のテレビ局tvNで放送され、同年の第52回百想芸術大賞他で数々の賞を受賞した大人気テレビドラマ『시그널(シグノル)』(全16話)の日本版リメイクです。

写真は『劇場版シグナル~長期未解決事件捜査班』公式サイトよりお借りしました。

 

 わたしは韓国の原作ドラマのほうだけ見たことがあって、たまたまテレビコマーシャルで映画『劇場版シグナル』の上映を知り、それを見たさに日本でリメイクされたドラマをNetflixで全話視聴してから映画館へ行ったので、ストーリーの基本的な設定などもわかっていてスムーズに見ることができましたが、映画の冒頭でごく簡単にドラマの振り返りはあるものの、ドラマシリーズを見ていなくて映画だけを見ても、ストーリー展開についてゆけるのかなはてなマークと、それは少し気になりました。

こちらの写真は、フジテレビのドラマ『シグナル~長期未解決事件捜査班』の公式サイトよりお借りしました。

 

 主人公は、子どものころに実の兄を理不尽な事件で失い、警察に不信感を持ちながらも自ら警察官となった警視庁捜査一課長期未解決事件捜査班のプロファイラー、三枝健人(坂口健太郎)警部補と、不器用だけれど、どんな圧力にも屈しない正義感あふれる熱血刑事、城西警察署刑事課強行班係の大山剛志(北村一輝)巡査部長のふたりで、協力しながら過去の未解決事件を捜査してゆくのですが、じつはふたりは実際に会ったことはなく、唯一無線機を通して交信することができるだけ、しかも決まった時間に、ほんのわずか話を交わすことができるだけの関係というのが、この映画と日韓双方のドラマシリーズ全体のストーリー展開の根底を支える設定になっています。

『劇場版シグナル』の人物相関図。

 

 情報交換し、助け合いながら同じ事件の捜査をしているのにふたりが一度も会ったことがないのは、三枝は“現在”を生きる刑事であるのに対し、大山は“過去”に生きている刑事だからなのですが、同時に存在することはあり得ないふたりを時空を超えてつないでいるのが、廃棄寸前の一台のふるい無線機・・・。ある日、ゴミ袋に捨てられていた無線機が突然つながって、通りがかりに偶然それを拾った三枝が恐る恐る応答すると、無線の向こうの相手は大山で、そのときから“現在”の三枝と“過去”の大山の不可思議な交信がはじまります。

現在の警視庁捜査一課長期未解決事件捜査班の面々。

 

 最初は互いに状況を把握できず半信半疑なのですが、現在の三枝が過去の大山に、ある事件の顛末を話すことで殺人事件を未遂で終わらせたり、真犯人を突き止めたり、事故を阻止したりできたことで歴史が変わることを身をもって体験したふたりは、この不思議な現象の理由はわからないながらも、不定期につながる無線を利用して未解決事件を次々と解決に導いてゆき、同時にふたりのあいだに信頼関係も生まれます。

 

 さらに三枝と大山に共通して関わる人物が、現在の三枝の上司で、警視庁捜査一課長期未解決事件捜査班の班長である桜井美咲警部(吉瀬美智子)。彼女がかつて城西警察署刑事課強行班係に配属されたとき、指導係として刑事のイロハを叩き込んでくれたのが当時の大山巡査部長で、美咲は彼をこころから尊敬し、ひそかに淡い恋心も抱いていたのですが、大山はある事件に関わって収賄容疑をかけられたまま失踪してしまい、美咲は大山の生存を信じて今なおその行方を探しています。ドラマの後半で、三枝と大山のふたりだけの秘密だった過去と現在をつなぐ無線機の存在を美咲も知ることとなり、現在の警部になった美咲と、過去の大山巡査部長が無線機で話を交わすシーンはとても感動的です。

 

 現在公開中の映画なので内容の詳細を記すのは控えますが、『劇場版シグナル』もドラマシリーズと同じく、頻繁に時間軸が入れ替わりながらストーリーがすすみ、三枝と大山と美咲は過去を変えることで未来に起こることを変えようとします。日本版ドラマシリーズの最終回を見終えたときは若干消化不良で、エッ!?これで終わりなのはてなマークと首を傾げていたのが、映画を見て一応の決着はついたのですが、“現在”の三枝と大山と美咲は、無線機を通してではない生身のままで、“同時に”“三人で”会うことはできたのかはてなマークという疑問は最後まで残り、それがそのまま映画のラストシーンになっていたので、もしかしたらこれで完結ではなく、今後さらに続編があるかもしれないとの期待もふくらみました。

『劇場版シグナル』の予告編よりキャプチャしました。

 

 韓国tvNの原作ドラマ『시그널(シグノル)』では三枝健人役をイ・ジェフンさん、大山剛志役をチョ・ジヌンさん、桜井美咲役をキム・ヘスさんが演じておられ、ご存じのとおり優れた演技力をお持ちの三人なので、日本版のドラマや映画を見るときその先入観が邪魔にならないか心配だったのですが、この『シグナル』に限ってはまったくそんなことはなく、坂口健太郎さん、北村一輝さん、吉瀬美智子さんはそれぞれのキャラクターのイメージにぴったりで、絶妙なキャスティングだったと思います。とくにわたしは今回はじめて坂口健太郎さんを知ったのですが、ドラマシリーズから映画にかけて、ストーリーの展開とともにどんどん成長してゆかれる姿がとても印象的でした。

韓国の原作ドラマ『シグナル』が日本で放送されたときの公式サイトよりお借りしました。

 

 誰しも人生のなかで、「あのときこうしていればよかった・・・。」と思ったり、違う選択をしていたらどうなっていただろうはてなマークと思うことはあるものです。現実には過去は変えられないし、今となってはどうしようもないと諦めることのほうが多いのも事実ですが、より良い未来に向かって、今からでも変えられることはきっとある、ということを気づかせてくれるのが、壊れた無線機からの“シグナル”だったのかもしれません。

https://signal-movie2021.jp/左矢印『劇場版シグナル~長期未解決事件捜査班』公式サイト

 

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