われらがキム・ナムギルさんラブラブと、韓国の名優ハ・ジョンウさんが初共演された話題の韓国映画『クローゼット』(韓国公開:2020年2月5日)を公開初日(12月18日)に見に行きました。若干の事前情報と韓国語版の報道資料を読んでいたので、タイトルにもなっているクローゼットをめぐって起こるミステリードラマということはだいたいわかっていましたが、そこはまずもって観客の期待を裏切らない韓国映画なので、おそらくありきたりな展開ではないに違いなく、またナムギルさんが格別の愛情をもって選択された作品ならば、ナムギルさんのこころの琴線を揺さぶる何かがきっとあるはずなので、それも含めて“見たい映画”でした。

写真はシネマート新宿で公開前に配られていたチラシよりお借りしました。

 

 ストーリーは、じぶんが運転する車の事故で突然妻を亡くしたサンウォン(ハ・ジョンウ)が、その事故のショックでこころを閉ざしてしまった11歳の娘イナ(ホ・ユル)との関係修復のために自然豊かな郊外の家に引っ越しをするところからはじまります。建築士という職業柄、サンウォンは現場へ出向くためにイナをひとり残して家を空けることも多く、家政婦を雇ったり、手に入れるのが困難な外国製の人形を買い与えてみたりするのですが、一度行き違ってしまったイナとの仲はなかなか元には戻せず、打ち解けるきっかけをつかめずにいます。

韓国を代表する名優のおひとりであるハ・ジョンウさんですが、意外にもミステリー作品は人生初の挑戦だったそうです。これ以下の写真はすべて、韓国語版一次報道資料よりお借りしました。

 

 さいわい医師の助言を受けて引っ越した郊外の大きな一軒家を気に入った様子のイナは、「新しい友だちができた。」と笑顔を見せるようになるのですが、平穏な日々は長くは続かず、次第にイナに異常な症状があらわれはじめ、サンウォン自身も悪夢にうなされたりするうちに、ある日突然イナが忽然と姿を消します。テレビの捜索番組などの力も借りながら必死でイナの行方を捜すサンウォンの前に、なんとも胡散くさい様子の謎の男ギョンフン(キム・ナムギルラブラブ)があらわれて、じぶんはイナの行方を知っていると言いながら指さす先は、イナの部屋の大きなクローゼット・・・。さてサンウォンは消えた娘イナを無事に救い出せるのかはてなマーク、10年間、同じように失踪した子どもたちの行方を追い続けているというギョンフンとはいったい何者なのかはてなマークはてなマークはてなマーク・・・というのがおおまかなストーリーです。

退魔師ギョンフンを演じるにあたり、国内外のホラー映画などをたくさん見て参考にしたそうですが、実はギルさん、「ホラー映画が本当に苦手なので、観るだけでも本当に大変だった。」(※『クローゼット』のパンフレットより抜粋)と語っておられます。かわいいラブ

 

 電気工事の職人を装ってはじめてサンウォンの前にあらわれるときのギョンフンはこれ以上ないくらいに胡散くさいのですが、点検するふりをしながら問題のクローゼットを突き止めたときにすっと冷たく変わる視線はまさにナムギルさんの真骨頂、ただものではない気配を漂わせています。サンウォンに渡した名刺によるとギョンフンは『韓国ナンバーワンの退魔師』らしいのですが、“異界”に連れ去られたと思われるイナを捜しに自らもクローゼットを通って異界へ行こうとするサンウォンを独特の呪術によって支えるシーンなどは真に迫り、その姿はまさしくほんもののムーダン(巫堂:朝鮮のシャーマン、祈祷師)のようと思っていたら、冒頭で流れたふるい録画テープの映像とともに、その謎も解き明かされてゆきます。

 

 大音響とともにさまざまな怪奇現象が起きるのでホラー映画の要素も多分にあり、また事実ナムギルさんも世界各国の退魔の方法や呪術について徹底的に調査研究したうえで、どれかひとつにのみ偏らない独特の退魔儀式を編み出し存分に披露しておられますが、全体的に暗く澱んだ雰囲気のスクリーンに悪魔祓いとくればシリアスなシーンの続出かと思うとさにあらず、ところどころ笑わせてくれるセリフなどもあってホッとひと息つくことができます。また物語の途中からは、単なるミステリー&ホラーの心霊ものではなく、親と子のあり方や大きくいえば児童虐待などにもつながるはなしを含んでいることにも気づかされます。

韓国語版『クローゼット』一次報道資料の表紙です。

 

 本作品の脚本も手掛けたキム・グァンビン監督をして“シナリオを書く者なら誰もが夢見たキャスティング”(※韓国語版『クローゼット』一次報道資料より抜粋)と言わしめたハ・ジョンウさんとわれらがキム・ナムギルさんラブラブの絶妙なアンサンブルは言うに及ばす、イナ役で初のスクリーン・デビューを果たしたホ・ユルさんほか子役たちの真に迫った演技のうまさには、いつもながら舌を巻きます。映画のなかのはなしではあっても、イナやミョンジン(キム・シア)など、親に見捨てられ虐げられてきた子どもたちの傷ついたこころのうちを想うだけでも胸が詰まり、劇中のイナの異常な行動は、子どもなりに自らを守ろうとする防衛本能のあらわれなのかもしれないとも思いました。

 

 公開第一週目の入場者特典として配られたポストカード・サイズの2021年『クローゼット』カレンダー。第二週目は韓国版の『クローゼット』チラシの予定です。

 

http://klockworx-asia.com/closet/左矢印『クローゼット』公式ホームページ

 

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