台風一過の秋の一日、日本の政治の中枢である国会議事堂の見学に行きました。以前は衆議院、参議院ともに当日現地で申し込みをすれば見学できましたが、今年(2020)は新型コロナウイルスのために一時見学は中止となり、7月1日から再開はされましたが、現在衆議院のほうは衆議院議員の紹介があるかたのみの受付けとなっており、参議院の見学も事前予約のうえ参観者名簿の提出が必要ですので、これから行かれるかたは最新の情報を確認してから予約申し込みをされることをおすすめします。

ちょうど逆光になってうまく写真が撮れず、案内の衛視さんが記念に撮ってくださったこの一枚が、一番国会議事堂の建物がきれいに写っていました。お見苦しくてすみませんあせる

 

 というわけで今回は参議院の見学を申し込んだのですが、ご存知のように国会議事堂は中央塔の正面に向かって左側が衆議院、右側が参議院という左右対称のつくりになっているので、ひとまず片方を見学すればだいたいの全体像がつかめます。参議院の見学は平日の午前9時から午後4時までの毎正時スタートで、その20分前から建物裏側の参観者入口で手荷物検査とセキュリティーチェック、サーモグラフィーによる体温チェックが行われます。

 

 チェックと受付を済ませた順にエスカレーターを下りて地下一階の“参観ロビー”に案内され、ここで見学スタートを待つのですが、広いスペースには参議院の前身である貴族院時代に使われていた品々や国会議事堂の建物の模型、議員席のレプリカなど各種資料が展示されていて、それらを見ながら参議院の歴史を学べるようになっています。この参観ロビーは参議院にしかないものだそうで、とても見ごたえがありました。

 

 こちらは貴族院時代に明治天皇がお座りになっていた椅子です。ガラス越しできれいに撮れていませんが、実物は写真で見る以上に重厚で威厳があります。

 

 参議院本会議の採決方法にはおもに“起立採決”“記名投票”“押しボタン式投票”の三つがあり、写真は記名投票につかわれる木札です。自身のなまえが書かれた木札のうち、議案に賛成者は白色票、反対者は青色票を投じます。たしかにテレビで議員さんたちが順番に登壇して投票する場面を見ることがありますね。牛歩戦術もこのときかなはてなマーク写真上が貴族院時代に使われていたもので、下が現行のものですが、ほとんど変わりはないのですね。

 

 現在は新型コロナウイルス感染予防のため利用中止になっていますが、議員席のレプリカもあって、通常時ならば実際に座って議員になった気分を味わうことができます。横になっている黒い氏名標を立てると出席がカウントされる仕組みで、氏名標の横には上記“押しボタン式投票”用の投票機があり、賛成は白、反対は緑、取消は赤のボタンを押すとその場ですぐに集計記録され、議場内三ヶ所に設置された表示盤に反映されるようになっています。押しボタン式も参議院独自の投票形式だそうで、なかなかハイカラですねニコニコ音譜

 

 案内してくださる衛視さんの先導で参観ロビーを出て延々と階段を上り、テレビなどでよく見る“本会議場”へ向かいます。本会議場は2階にあり、わたしたちはさらにひとつ上の3階の傍聴席に座って見学するのですが、重厚な扉を開けて中に一歩足を踏み入れただけでも議場内に漂う厳粛な雰囲気に包まれて、身の引き締まる思いがします。中央の議長席の後ろの一段高いところには、国会の開会式のときに天皇陛下が御臨席になるお席が見えますが、開会式は参議院でしか行われないので、このお席も参議院にしかありません。

 

 本会議場の天井は美しいステンドグラスで飾られていて、建物全体がほぼ国産の材料でつくられている国会議事堂のなかで三つだけある舶来品のひとつが、この唐草模様のステンドグラスなのだそうです。国政の中心にふさわしい格調高いつくりになっています。ちなみに舶来品の残りふたつは真鍮製のドアノブと、各階の廊下の壁に取り付けられている郵便投函筒(郵便ポスト)です。

 

 手前の丸椅子は記者席で、テレビ中継などはここから撮影されています。議員席は中央の議長席、演壇を中心に半円形に配置されており、会派別に座るようになっています。参議院議員の定数245名に対して議席が全部で460席あるのは、貴族院時代の名残なのだそうです。この議席に座れるというだけでも名誉なことですが、議員の皆さまにはどうぞ、国民の負託を忘れないでほしい、と強く思います。

 

 本会議場の傍聴席を出て長い廊下をすすむと、“御休所(ごきゅうしょ)”があります。ここは国会の開会式に御臨席される天皇陛下が到着されたあとお入りになり、衆参両院議長、副議長と面会される場所です。緞通(だんつう)の絨毯が一面に敷き詰められ、壁面や天井の装飾、背後の暖炉の意匠も素晴らしく、ガラス越しに見ても国会議事堂内で一番豪華なお部屋であることがわかります。

 

 御休所の前は国会議事堂の正面玄関につづく大理石仕様の中央階段で、玄関にご到着された天皇陛下が中央広間を抜けてこの階段をお上りになると、そのまま御休所へと入れるようになっています。通常はこのように覆いをかけてありますが、パンフレットの写真を見ると階段の中央には真紅の絨毯が敷かれています。

 

 御休所入り口の頭上にはひとつの大理石を彫り込んでつくられた美しい装飾が施されていて、ひときわ目をひきます。

 

 また御休所前の床は、2cm角に細かく切られた大理石のモザイクでできていて、踏んで歩くのがもったいないほど美しいです。

 

 ここは中央塔の真下の部分の“中央広間”で、3階のバルコニーから見学します。三密を避けるため3人ずつ順番にのぞき込むのですが、後にひとが待っていると思うと気が急いて、写真もうまく撮れませんあせる。四隅には議会政治の基礎を築くのに貢献した方々の銅像が立っていて、見えているのが板垣退助(左)と大隈重信(右)、手前に伊藤博文と空席の台座がひとつあるそうです。パンフレットによると、四人目を決められなかったので将来に持ち越されたそうですが、三氏と並んでここに立てるような偉大な政治家は現れるでしょうか!?

 

 中央広間の壁面は琉球石灰岩でできているそうで、その白い色と、ところどころ気泡が入ったような肌面が、ステンドグラス越しの光をさらにやわらかくしてくれますラブラブ

 

 中央広間は2階から6階まで吹き抜けになっていて、天井までの高さは32.62mもあり、法隆寺の五重塔がすっぽりと入る大きさなのだそうです。パンフレットで建物の構造を見ると、中央塔部分は9階建てとなっているので、おそらくこの天井の上にさらに何かあるようですが、もちろん見学はできません。

 

 ふたたび最初に上った長い階段を下りると中庭に出ます。これは噴水かとおもったら、パンフレットを見ると外気取入口なのだそうです。国会議事堂は大正9(1920)年1月着工、昭和11(1936)年11月竣工なので、クーラーのない時代に使われていたものでしょうか。規則正しい石組みの外壁もすぐ近くで見ることができます。

 

 衛視さんに連れられて頑丈な鉄の門から議事堂の外に出ます。振り返って建物の写真を撮りたいのですが、写真撮影は決められた場所のみなので眺めるだけでした。そして見学コースの最後となる国会議事堂の前庭には美しく整備された遊歩道があって、小径の両側には都道府県の木が一本ずつ植えられています。

 

 国会議事堂の正門前の景色。澄んだ青空がきれいです。日本の政治の中心地なので議事堂周辺はどこも警備が厳しく、見学中も決められた場所でしか写真を撮れないなど制約もいろいろありますが、日本の国政を担う現場に直に立ってみると、次はもう少し関心をもってテレビや新聞記事に接することができるような気持ちになりました。

https://www.sangiin.go.jp/japanese/taiken/bochou/kengaku.html左矢印参議院見学受付

 

 ベルオマケベル

 議事堂裏側の参観者入口の並びの“参議院別館”のなかには売店があって、菅総理大臣などをあしらったお菓子や手ぬぐい、歴代首相の名前が入ったマグカップなどなど、国会グッズがた~くさん売られていました爆  笑音譜。建物内は撮影禁止なのでご紹介はできませんが、早めに着いたらお手洗いを借りて、ゆっくり見物するとおもしろいですよ。

参議院別館の外観。