日本の「八月」といえば、子供の頃から「日本列島民が受けた空襲被害と原爆投下、そして敗戦」という一連の流れのドキュメンタリー等が集中的に放送される時期でした。

 

近年、散発的に「日本があちこちの侵攻先に残してきた問題」「自国兵の遺骨収集すらほとんどやっていない問題」「放置され続けた帰還兵のPTSD問題」等々が以前よりやや報道素材として注目されるようになった感がありますが、それでもあまり取り上げられないなと思うことが。

 

15年戦争は言うに及ばず、明治維新とともに1945年8月に至るまで拡張主義を唱え対外侵攻を続けた「加害者としての日帝の姿」です。

「日本人はそんなことはしない」という言葉にも(特にSNS等では)遭遇しますが、そもそも大日本帝国を名乗り帝国主義を標榜していた以上、それはむなしい擁護だと思います。

 

個人的にときどき調べると、まあ出てくる出てくる蛮行の数々。

詳細はここでは割愛しますが、日本人でいること自体に申し訳なさを感じるレベルの多さと規模です。

そういう意味では本邦の近代軍国主義は実にG7的というか白人支配者的というかアングロサクソン支配者的だな...と個人的に思ったりするわけであります。

 

歴史的にそういう面が明確にあるにも関わらず、政府もマスメディアもそれに関する事実共有が乏しく、総合的な総括や国内外を問わない補償(日本人自身も被害者甚大だったわけですから)も戦没者の遺骨収集も国として大規模になされていない...ことを考えると、日本の「戦後」は実はまったく到来していないのだろうとさえ考えてしまう次第です。

儲備銀行券の償還だって正式にはなされてこなかったわけですし(これによって財政的被害を受けた日帝軍侵攻先の現地民無数)。

 

 

それと同時に、日中平和友好条約が締結されたのもこの8月。

中国ではその時期に、両国間の歴史をしっかりと振り返るドキュメンタリーを国営放送でもちゃんと放送してくれたりするわけですが(昨年視聴したものは、日本側の事情についても本邦の放送機関より詳しく誠実に報じてくれていた印象)、私個人の経験の範囲内に限っていえば日本の放送がそこに力を入れてこの8月に放送してくれたことは近年皆無だったように記憶しております。

https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/china/nc_heiwa.html

 

この温度差は正直由々しい問題だと私個人としては考えていて、しかも米英欧に追従して過剰に反中意識を煽る日本政府とマスメディアを見ていると、それ自体が「締結された平和友好条約に反している」とさえ感じますし、太平洋戦争末期に「さんざん反ソ的態度と行動をとっておきながら、日本のために都合よく和平交渉の仲介をしてほしいとソ連に勝手に期待をかけ、仲介してくれなかったから”ソ連が突然中立条約を破って攻めてきた”という”前後の経緯を無視”した刷り込みを自国民である日本人に続けている」こととも重なって見えてきます。

(ちなみにですが、第一次世界大戦における日本のシベリア出兵(日本がロシアに侵攻)も8月から始まっています)

重なって見えてくるものは、「周囲の現実の展開に粛々と対応するのではなく、自分たちに都合よく過剰な楽観性を以って物事を考えてしまいがちな習性」です。

これは、「もしもどこかの国が日本に攻めてきたら、米軍が我々を守ってくれる」という過剰な楽観性にも通じるものがあると思います。

 

決してそんなことはないのに、なぜそう思い込めるのか。

我々人間は一度刷り込まれたものに弱いのだということを、過去の自分の反省も踏まえながら痛感する次第です。

 

現在の自民党政権下では到底実現しそうにありませんが、いつになったら本邦は加害の歴史を含めた本当の意味で「八月」を総合的に総括できる国になれるのか、正直私が生きているあいだにそれはなし得ないだろうなあとさえ思う遠き道のりに、思いをはせ続ける日々なのであります。