「日本の土地が外国人に買われたら大変だ。日本の領土がなくなっていく」と発言するかたをSNS上でそこそこしょっちゅう見かけるようになった昨今。

その言説を見かけるたびに、呆(ほう)けて半眼になってしまうわたくし。

 

というのも、外国人のいち個人が一般的な取引で買っただけでは他国の領土になんかなったりはしないからです。領有権が日本に属している土地を、日本の不動産取引に関する法律のもとで普通に売買する...この場合、基本的には不動産の登記簿に載る名前が外国人、もしくは外国人が設立した日本法人になるだけです。日本の領土のままなので、固定資産税の納付先はもちろん日本です。国家権力が及ぶのも日本政府のそれだけです。

(日本人がパスポートを携帯していないと入れない東京のニュー山王ホテル(米軍関係者法体制ホテル)や米軍関係施設を除いては、基本的に上記の「不動産所有権移転」構造の中で売買取引が成立します)

 

 

買ったあとに何に利用されるか...は領有権とはまった別の話なのでここでは割愛しますが(と言っても、北海道を例にとって買われた場所を地図で見てみると「外国人を騙す対象にした原野商法による詐欺」の可能性が高いように見受けられるので、そういう可能性も含めてこれは別途調査と確認をすべきだと思います。)、何にせよ結論から言って基本は「日本の領土、日本の土地であることには変わりはない」のです、ただ単に一般人が”単に買っただけ”では。

 

個人的に驚くのは、このこと=「領有権と所有権は違う」を本気で理解してなさそうな反応が散見されることです。

買っただけで自分の国の領土にできるなら、政府間交渉を長年やる必要もなく買えばいいだけなのに、領土問題を抱える各国政府間がそうしていない.......そのことから想像がつきそうなもんですが...... (ㆆ ㆆ ).。oஇ(考)

いや、それが想像がつかない人がときどきいるのが世の中というものでして。

 

おそらく政治家や有識者と呼ばれるかたたちでもその理解のレベルだったりするから、「尖閣国有化」というおかしなことを言い出してしまい、それが本気で通用すると政治家も国民も思ってしまっている......という状況になっているのだろうと思ったりします。

「国有化」というのは、当事国も国境を接する近隣諸国もそれ以外の非当事国も全体的に「うん、これはあなたの国の領有権が及ぶ範囲ですね」という中でのみ通用する概念なので、内容はともかく「多国間で国境策定が正式に線引きされてない係争中エリア」に通用するのは適切ではない、という話になってしまう。

まあ、尖閣国有化もここでは本題ではないので、「領有権があいまいな条件下で、係争当事国のどこか(もしくは全部)が「そこを国有化します」と係争相手の同意や承認を得ずに言い出して実行してしまうは適切ではない」と言及するだけにとどめておきますが。

 

何にせよ、「領有権と所有権は違う」を理解できてない人が意外とちらほらしてる感じなのは、「嗚呼教育の失敗」と嘆かわしく思うとともに、以前にうちの近所で偶然聞こえてきてしまった雑談ー「うちの不動産の登記は役所が決めたから登記簿の名義は変えられへんのや」を思い出してしまい、そういう理解レベルで人生を送っている人が実は意外と市井にいるんだなあ.....という、なんとも複雑な思いにかられてしまうのであります。

「役所が決めたから」のあたりに、封建的な権威主義の痕跡が色濃く残ってるとでも言いましょうか......(汗)

(;ーωー)