第31代アメリカ合衆国大統領ハーバート・クラーク・フーヴァーが20年もの歳月と、何人ものアシスタントや協力者の助力を得て膨大な量の公文書や多種多彩な資料を集め、調査・編纂して書かれた本『裏切られた自由 フーバー大統領が語る第二次世界大戦の隠された歴史とその後遺症』の上巻を読み終わったばかりの今週。

日本人も知っておいたほうがよいことがいくつも書いてある貴重な一冊なのですが...

 

昨今の露烏戦役情勢を眺めていて思うことのひとつと重なる興味深い点が、「現物の強み」ということ。

人類が戦争を起こす大きな理由に「資源」があるわけですが、この「資源」のひとつである石油を金本位制から石油本位制に置き換えることによって自国通貨を基軸通貨にすることにかつて成功したのがアメリカ合衆国。

石油に紐づけられたものを金本位制に戻すことで米ドルの牙城を崩していこうとするのが中露をはじめとする複数の国々。

政治・経済に関するパラダイムシフトが起こる予感がするので、米ドルの凋落に巻き込まれる構図の中にいる日本としてはリスクが高い話ではあるものの、個人的には「世相の変わり目」を見ることができそうなのは興味深くもあります。

 

さて、ここで出てきた金(gold)や石油はいずれも現物です。

信用(credit)だけに裏打ちされた不換紙幣よりも、時には強みを持つわけですが、それがうかがえるお話が、上述の本『裏切られた自由』の中にありました。

 

それは、第二次世界大戦中の連合国の会談にて「ルーマニアがロシアに対する賠償をどうするか」というくだりで言及されていた模様。

通貨が不安定になりやすい時期であったことを反映してか、賠償内容が牛、羊、豚、馬、穀物、飼料、原油、木材.....と「現物での支払い」になっています。

 

そういえば日本でも、「お金があっても食べ物を売ってもらえない」「食料を作れるところが結局強い」という事例が終戦前後の時期にあったと聞いています。

お金=貨幣は「複数人のあいだの物々交換を円滑化しスピーディにする」機能がある便利なアイテムですが、世相や時流によっては現物のほうが強い、ということがわかるサンプルだと言えるでしょう。

 

今後日本でまだまだ進むであろうスタグフレーションを考えても、「現物であるがゆえの強み」が時に出てくることは、覚えておいて損がない事柄ではあると思います。