この日は一路、都内の議員会館へと向かいました。
Qingxiangの日々的話話-2011July27_WatchChernobylHeart

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福島みずほ議員が主導で、映画『チェルノブイリ・ハート』の無料上映を議員会館でおこなってくれたからです。
福島議員との交流があるわけでもなく、シンパというわけでもありませんが、せっかく無料上映してくれるなら......という、ただ「映画が観たいだけ」の為に行ってまいりました。

都内の劇場でも封切りを控えていたこの映画のチラシと、映画『二重被爆 語り部山口彊の遺言』のチラシ、そしてこの日の上映会用の映画内容のレジュメをいただいての観賞。
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感想は、ひとことで言えば.........「悲しい、見ていて胸が痛む」に尽きます。
タイトルの由来は、チェルノブイリ原子力発電所事故にともなう放射能汚染で発生した、先天性心臓疾患から来ているのですが、手術をしなければ短命にして亡くなっていく子供たちの姿と、放射能との因果関係はともかくとして事故後に異常に増えた各種の出産異常や先天性疾患の子供達が、チェルノブイリ事故前には存在していなかった「遺児院(親に捨てられた乳幼児たちのための国の施設)」にたくさん収容されている様子が紹介され、何と言うかもう......悲しくて涙があふれてくるばかりでした。




いただいたレジュメの内容は、下記の通りです。

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「チェルノブイリ・ハート」レジュメ  2011.7.27

【チェルノブイリ・ハート】
この映画は2002年製作の「チェルノブイリ・ハート」(40分)とその6年後に製作された「ホワイトホース」(19分)を、日本語版バージョンとして特別に編集された。
「チェルノブイリ・ハート」は2003年アカデミー賞短編ドキュメンタリー部門でオスカーを受賞。
マリアン・デレオ監督は、日本語版製作にあたり、トルコ生まれの詩人、ナジム・ヒクメットの「生きることについて」を日本人に捧げたい、と提案してくれた。

【チェルノブイリ原発事故】
1986年4月26日チェルノブイリ(ソ連、現ウクライナ)原子力発電所4号炉で爆発事故が起き、国際原子力事象評価尺度(INES)において、最悪レベルの7に達した。4号炉は炉心溶解(メルトダウン)ののち爆発、放射性降下物はウクライナ、白ロシア(現ベラルーシ)、ロシアを汚染した。原発から北東へ約350キロの範囲内には「ホット・スポット」(高濃度汚染地域)が約100カ所点在し、農業や畜産業は全面禁止となった。

【映画の内容】
190トンの放射性ウラニウムと放射性黒鉛が空気中に拡散。のべ60万人のリクビダートル(清掃人)が大量の放射能を浴び、13,000人以上が死亡。避難民の総数は40万人を超え、汚染地域では2,000以上の集落が廃村となった。だがひときわ大きな放射能被害を受けたのは、子供たちだった......

◆エイディ・ロッシュ(チェルノブイリ子どものプロジェクト代表)が映画の道案内役となる。
ウクライナの国境:「強制退去地域」(爆心から半径30キロ以内)に入る。鉄道引き込み線のある土手に登ると、チェルノブイリ原発跡が見えた。4号炉は石棺に覆われ、雨が降るたびに水が亀裂から浸水し、その重みで天井が崩落する危険がある。
夜:線量計の数値は11,000以上、ニューヨークの1,000倍だ。

◆ベラルーシ・ミンスク市(爆心から300キロ)
甲状腺がん治療専門病院。甲状腺がんは10代の青年たちに多く、手術を受けたばかり。いずれもゴメリ州(爆心から100キロの汚染地域)の出身者。医師は「チェルノブイリ事故当時幼少期や思春期だった子どもに多発」という。
その中に1986年4月3日生まれの少女(当時16歳)がいた。生まれて23日後に被曝。医師は病室外で「少女はがんだが、本人には話さない」この地方の甲状腺がん発生率は1万倍に増加した。

◆ノヴィンスキ精神病院(ミンスク郊外)
この病院には重度障害児が収容されている。脊髄損傷と脳性マヒの子、全員知的障害を持つ。
17~18歳になると成人用の精神病院に移送(半監獄状態)される。障害児は増加傾向にあり、遺伝子の破損も増えた。放射能との因果関係は実態からしか汲み取れない。
事故以来、障害児の出生率は25倍に増えている。

◆強制退去地域:ほとんどの住民は1986年に避難したが:チェルノブイリから240キロ
セシウム137の汚染地域。放射性物質は内部被曝すると筋肉に蓄積する。
村人「心配だけど、どうすりゃいいのよ」「放射能かい?みんな、こんなに長生きしてる」「骨が痛い」

◆ある高校:チェルノブイリから200キロの汚染地域、高校生の体内にあるセシウム137を調査
生徒「キノコとイチゴ類は食べます」瓶入りのジャムの数値が高かった。
科学者「セシウムはがんを誘発しやすい。消化器系統、心臓、肝臓、腎臓そして肺です」

◆ヴェスノバ精神病院(ベラルーシ南部)
曲がった腕の少年、腰から下を引きずって歩む少年は「医者になって、子どもたちを助けたい」と。
サーシャ君は、両手をできものに覆われ、特別なクリームを塗ると苦痛で顔がゆがむ。
女医「勤続19年ですが、障害児が増え、しかも遺棄されるのです」

◆ゴメリ市:チェルノブイリから80キロ、人口70万人
遺棄乳児院「ナンバーワン・ホーム」
遺棄乳児院には水頭症の子が多い。エイディが抱きかかえる子ども。

◆ゴメリ市立病院
分娩室では妊婦2人同時にお産の真っ最中。健康な赤ちゃんが生まれた。
ブラコフスキー医師「健常児が生まれる確率は15~20%。放射能の影響があります」
子どもたちは出生後、免疫システムが弱く、ベラルーシの乳児死亡率は、ヨーロッパ諸国の3倍。

◆ゴメリ市立小児病院
イナ:12歳の少女は心臓に重大な欠陥がある。同じ病気に苦しむ患者が7,000人心臓手術を待っている。

◆ミンスク第一小児病院~2週間後
ミンスクには14名のアメリカの手術チームが来ていた。
米人医師「この子は心房中隔欠損症で2つの心房の間に穴が開いている。手術で塞ぎます」
ターニャは手術を控え、両親も心配そうに見守る。
 ノヴィック医師(執刀医)「患者は別の病院で手術不可能と言われた。重度の心臓疾患があり、このままなら確実に死ぬ。ターニャの心臓は2つの穴があき、ウクライナ人が『チェルノブイリ・ハート』と呼ぶ。左右の心室の穴を塞ぐ手術だ」
無事手術は成功。母は医師の胸で泣き崩れる。
年間300人の子どもたちが心臓手術を必要としている。

◆ホワイトホース
マキシム・スルコフは事故当時、チェルノブイリから3キロのウクライナ共和国プリピャチに住んでいた。4万8千の住民は全員避難した。事故から20年(2006年)マキシムは家に戻った...
車が出発したのはウクライナのキエフ。爆心から150キロ。強制退去地域(爆心から30キロ)を通過。
そして誰もいない町、プリピャチに入る。荒れ果てているが、家は残っていた......

【スタッフ】
監督:マリアン・デレオ
製作:ダウンタウンTVドキュメンタリーズ
日本語版翻訳:中村英雄
提供:タキシーズ
配給:ゴーシネマ
配給協力:アニープラネット

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レジュメに記載されている「○○倍」などの数字については、調査条件や規模など、母数の条件が変わると結果も変わってくることなので、その数字自体を云々しても仕方ないことで、その数字だけを見て安全安心または危険論を展開するだけでは現実に対処するには不十分かつ意義があまり無いことと言えるでしょう。

むしろ目を向けるべきは、「時間が経つにつれて被害者数が増加し、減少することがない」というシンプルな事実でしょう。
つまり、「ピラミッドの頂点から裾野へ向かって下りていくような状態」が厳然たる実態であり、それはいつ終わるのか人類の時間軸ではとうてい測れないシロモノだ、ということです。
ということは、必要なのは「○○だから安全だ」「○○だから危険だ」と対立し続けることではなく、「どう対処すべきか、どう判断し行動すべきか」でしかないのではないでしょうか。

映画の中の子供達が直面している、あまりにも過酷な現実に胸を痛め、涙をこらえながら議員会館を後にし、日本と日本からの拡散放射性物質での犠牲が一人でも少なくありますように、と内心強く強く祈らずにはいられませんでした。

かつて旧ソ連諸国やヨーロッパ諸国を襲ったこのような被害を、今後もとい現在進行形の日本で少しでも減らすためには、目をそむけてしまっては不可能なのだ、と痛感しながら......。



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