受験の界隈で有名な言葉があります。
「医学部受験は下りのエスカレーターを上っていくようなもの」
・・・これ,どういう意味かお分かりでしょうか。
もちろん,危険な行為なので絶対にしてはいけません。
鉄道の駅にあるエスカレーターだともれなくブザーがなって追い返されます。
友人曰く「逃げ出したくなる」音が鳴り響きますから。
ルールとしての話は一旦脇に置いておきます。
医学部受験がいかに大変かを表している言葉だと思います。
東大や京大などの難関大学を受験する場合でも言えることだと思います。
・トロトロと勉強していたら間に合わない。
これ,本当に言えます。
親御さんに言われて嫌々勉強している子たち,間違えたら何を言われるかわからないからビクビクしながら問題を解いている子たち。
とにかくアリバイ的に勉強していれば大丈夫だろうと思っている子たち。
それでも平均点を超える点数が取れてしまうのが怖いところですね。
平均点を越えればいいと思っているとしたら,えらいことになるから気をつけていただきたいと思います。
・とにかく勉強する教科が多い。
共通テストを受験する場合は,国語や社会をやらなければなりません。
あとは情報かなぁ・・・。
ただ,今の時点ではどこまで出てくるかわからないですね。
配点を小さくする大学もあるみたいです。
とにかく受けてさえくれればいいよ,という姿勢の大学がけっこうあります。
しかし,国語と社会は逃げられません。
そこそこ配点が高いところが多いです。
あと,国立の二次試験で国語を課す大学もあります。
こういう大学を受ける場合は大変です。
・問題の難易度上昇
特に共通テスト。
まだまだ回数を重ねていないので,なんとも言えませんが,化学は本当に難しくなりました。
物理はそれほど変わっていないような気もしますが。
今年に限っていうと,数学は落ち着いた難易度になっていると思います。
でも,やはり難しいですね・・・。
時間内で全て解けと言われると,かなり苦しいと思います。
国語と英語で文章を読む量がものすごく増えてきています。
まぁおかげで,センター試験時代ほど高得点が要求されなくなってきています。
今は八割取れれば十分国公立二次試験で十分勝負の舞台に立てるのではないでしょうか。
・誘惑の多さ
私たちの頃はまだインターネットが流行り出す直前だったので,情報がなくて予備校に頼り切りでした。
あとは友人同士で話をしたり,予備校の先生方に話を伺ったり。
たまにカラオケで発散をしたり,買い食いをして空腹を紛らわせたり。
私が通っていた青い看板の予備学校は,当時は名古屋駅から離れたところにありました。
今も周りにあるのは愛知県図書館とCoCo壱さんとローソンさんくらい。
名駅や千種駅にある予備校は本屋さんを筆頭に時間を溶かす場所が多数あります。
インターネットで受験情報が多く出回るようになったことも大きいです。
信憑性のあるものから怪しいものまで種々取り揃えて皆さんのアクセスを待っています。
YouTubeを開けば,映画と同じクオリティーの動画も視られます。
先日映画版「ビリギャル」を初めて視てしまったおじさんがここにいます。
ゲームも最近は没入できるものが増えていて,いつの間にやらずるずると視てしまうものが・・・。
こういうのを視ている人に対しては,「二次元より現実の世界の方が楽しいよ!」という言葉が虚しく響きます。
ゲームなりインターネットでも,時間を浪費する対象がずいぶん増えてしまいました。
電車に乗っているとスマホの画面と睨めっこをしている人が必ずいます。
たまに私もそうなっていますので,人のことは言えませんが・・・。
・根本的に学力が足りない生徒が増えたこと。
中学校,いや小学校レベルの勉強をもう一度した方がいいのではないかと思われる生徒が増えています。
化学を教えていて痛感するのは,割合の計算ができない生徒が非常に多いこと。
分数の計算を以上に嫌がる生徒がまた多いことです。
平方根の入った計算ができなかったり,文字式の変形ができなかったり。
これはサインコサインとか,ログとか,ベクトルやら複素数平面とか,微分積分どうのこうの言っている場合ではありません・・・。
参考書をやる以前に学校の教科書傍用問題集すらきちんとできていません。
取り組むにしても解法を全部丸暗記・・・。
結局覚えないといけないのですが,それにしても理屈なしで丸暗記をするのはねぇ。
やれと言われたところしかやろうとしない子達。
指示された問題だけを丸暗記して,それを応用した問題を解いてもらおうとしたら,手も足も出ないことは珍しくもなんともありません。
自分から何をしなければいけないか考えることができるレベルにならなければ,ある程度以上の大学に受かることは困難です。
そして進学後に大変な目に遭うことは目に見えています。
うちの塾の卒業生,数学が一番できた子ですが,東大に入って最初の試験で「0点」を取ってきたことがあります。
別の子では東大の理学部に入って本物の数学を勉強していたら,その難しさに数学をする気がすっかり萎えてしまったという例も。
高校までの勉強と大学以降の勉強は根本的に異なります。
自分から学んでいく姿勢がないと,何一つ学べないまま終わります。
・・・とここでは医学部受験の話をするのでしたね。
・医学部は入学してからが大変です。
最初のうちは時間割の空白があるので,比較的楽です。
しかし,専門の授業や実習が入ってくると一気にシビアになります。
試験の厳しさは大学により違いますが,私立大学になると異様に厳しいところがあるようです。
それにしても,膨大な量の教科書の内容を全部理解して暗記しないといけません。
それでもまだまだ覚えることがどっさりある。
医学はそういう学問なのです。
書棚に本だけ並べている私ですが,これだけのことを覚えなければいけないのか・・・と毎日のように愕然としています。
興味があるところだけ読む分にはいいのですがね。
・仕事を始めてからが本番です。
研修医のうちはまだ「お客様」扱いされます。
でも,その後がとてもとても,大変そうです。
「専門医」や「医学博士」を取ろうと思うと,それなりに勉強をしないといけません。
もちろん,臨床経験も積まないといけません。
36時間連続勤務もおそらく無くならないでしょう。
2024問題,働き方改革。
国が言っている通りにことを運ぶと,医療は崩壊します。
今ですら危ないというのに。
指導医の立場になったら,スチューデントドクターや研修医のミスも,指導医たる自分の責任とされます。
何かを学んできた人間はそれなりの責任があります。
私だって,サイエンスを色々な人に知ってもらうとか,正しい学び方を知ってもらう責任があります。
もちろん,成績を上げるのは必要条件です。
世の中の仕事は,それなりに大変なものばかりですが,医師はちょっと特殊なところがあります。
何せ人の命がかかっていますから。
うちらも人の将来がかかっているので,真剣にならざるを得ないのですが,お医者さんやそれ以外の医療スタッフの方たちの心労に比べればまだまだ。
医師の方ばかりでなく,医療に携わる皆さんの貢献の大なることに思いを致しています。
災害現場に真っ先に飛び込む方にも本当に頭が下がります。
今日もここまでお読みいただきありがとうございました。
ONゼミナール代表 長田 俊将
www.on-semi.jp