最近の入試問題を見ていると,以前ほど知識を問う問題は多くないと感じています。
スエズ運河の建設を指揮したイギリス人は?・・・答え:レセップス
日本人で初めて南極に行った探検隊の隊長の氏名は?・・・白瀬矗(しらせ のぶ)
こういう知識を聞く問題がゴロゴロありました。
塾で社会科の授業を受けている時に私が輝く瞬間でした😂。
問題の解答を一人ずつ当てられて答えていきます。
誰も答えられません。だんだん自分のところに回ってきます。
回ってきた!
答えられたら周りから視線を浴びる・・・。
あぁ気持ちいい!!!
・・・「輝き」と呼ぶには何とも寂しいですね💦
過去の偉人の成し遂げたことは,言うまでもなく人々に夢と希望を与えました。
白瀬中尉は日本の歴史を彩る人物の一人だと思います。
そういう人の名前やらマイナーな地名など,誰も知らないことを少しくらい知っているだけでイキれる私って・・・。
大人になってから色々と本を読む中で,自分がいかに何も知らないのかを思い知らされます。
何なら友人と飲み会をしている時の会話の中にも,私が全然知らないことが出てきます。
本当に社会勉強になります。
こんなのも知らんのかと呆れられそうなので,何を知らないのかは言いませんが😂。
それでもあえて言いますが,こういう知識を身につけるのに役に立ったのは「好奇心」,「ねちっこさ」です。
地図帳を見ていると,細かい地名ほど目に入ってきます。
変わった地形があると目が釘付けになります。
児島惟謙という人物を目にしたときに,「司法権の独立」の意味を知ったり。
・・・私はこれで裁判官になろうと思ったことがあります。
で,高校も文系に行こうと思っていました。
高校に入ってから軟弱なもので,なりたい職業が公務員になったり,さらに外務省になったり・・・。
いっとき大きな病気をした時は医者もいいかなと思い始めて,愛知県図書館で医学書を借りてきて一生懸命読んだり・・・そんな暇があれば数学をしろよと。
この時だけ理系志望。
でも,基本的には文系に行きたいとずっと言っていました。
高校二年生の時の担任の先生に一蹴されましたが😂。
細かいことが気になる人は勉強が得意になる素質があります。
数学や化学,物理で細かい質問をしてくる生徒は,メチャクチャに伸びる素質が十分にあります。
化学専業で教えていた頃,それはそれは本質をつく質問を何度か受けて,答えに窮したことがあります・・・お恥ずかしいことを話していますが。
数学や物理も然り。
生徒の質問が楽しみでもあり,ある時は怖いものでもあり。
グラフの細かいところをしっかり見てきたり,実験装置の細かいところに気づいたり。
蒸留をするときにどうして枝付きフラスコの枝のところに温度計の先端を固定するのか?
・・・これは今では受験の常識となっていますが,きちんと理由を説明できる生徒は案外少ないと思います。
入試問題を見て驚いたこと。
ちなみにこれは高校入試の問題です。
先週の化学の授業のネタにしました。
中学生(3年生)向けに化学基礎の授業をする枠と,高校生向けに化学基礎+化学の授業をする枠が続いていた日のことです。
木炭に食塩水を浸した布を巻いて,その外側にアルミホイルを巻いて電池ができます。
木炭とアルミニウムにクリップがついていて,そこに豆電球を接続すると,電球が点灯します。
なんだんだこれ??
こういう問題が入試問題で出てきます。
ちなみにこの電池はかなり昔の東大寺学園高校の入試問題の一部です。
普通に中学校の授業を受けて復習をして,学校のテストでいい点をとって・・・だけでは得点できない問題です。
おそらく合否にあまり関係しない問題だとも思いますが,それでもこういう問題が解ける生徒は一定数いて,そういう子は試験でその分有利になります。
高校生は人生経験が豊富なせいか,案外気がつきます。
言い換えると,「イオン化傾向」というものを知っていますので,アルミニウムが負極になるかなということを知っています。
電池が酸化還元反応を利用して電流を流す装置だと知っているので,アルミニウムが還元剤とわかった時点で酸化剤を探すのだと見当がつきます。
酸化剤はどれだろう・・・問題文をどれだけ見ていてもわかりません。
答えのキーは問題文の選択肢にありました。
「木炭の中に入り込んだ酸素」
これが酸化剤で,木炭とクリップがつながっているほうが正極になります。
選択肢を見ようなぁ・・・というヒントを与えたとき,中学生はもちろんわからないのですが,高校生はそれでピンときたようです。
そう,中学生はまだそこまで授業が進んでいません・・・。
高校生にはつい最近教えたばかりです。
無茶振りしてごめんよ💦。
高校生の学ぶ図形と式の単元に,円と直線の交点に関する問題がたくさんあります。
原点に中心がある半径4の円と,点A(4,0)を通る直線がある。
直線が半径4の円と2点で交わるとき,その2点をP,Qとする。
AP✖️AQが一定になることを証明せよ。
という問題です。
高校生の反応ははっきりしています。
全くわからないから講師の説明を待つ子。
参考書を開いて類題を探す子。
図を書いて「あったりまえじゃん」と言って解答をさっと書いてしまう子。
真面目に円と直線の交点を二次方程式の解と係数の話に持ち込んで,ゴリゴリと対称式の計算をする子。
「あったりまえじゃん」となる原因は何でしょう・・・?
・・・「方べきの定理」を知っているかどうかです。
証明は三角形の相似を利用すれば簡単です。
一行か,長くても二行で解答が終わりますよ。
あまり勉強する人がいない「平面幾何」。
色々な定理が出てくるので敬遠する生徒が多いですし,学校でもあまりきちんと説明されないことが多いようです。
チェバの定理はわかりやすいのですが,メネラウスの定理になると途端にわかりにくくなる。
そう悩む生徒は,高校生時代の私だけではないはずです。
この分野も観察力が大事なのです。
大事なポイントは何なのか?
これは教えて何とかなるものではありません。
気が付かないとできませんから。
その肝心な「気がつくべきポイント」を説明することはできるのですが,すぐに生徒が同じことをできるかどうかと言いますと,難しいです。
それを何とかするのが塾なのですがね。
何事も好奇心を持って見てみることが一番かなと思います。
地図帳でも,医学書でも,資料集でも,参考書でも,入試問題に出ている題材でも。
何でもいいですから,「これって何?」という好奇心を持って欲しい。
大人たちもただ暗記を強いるだけでは無く,どうしてこうなるのかを生徒と一緒に考えるくらいの姿勢でいていいのではないかと思います。
もちろん私たちが授業で教える際は答えを知った上で臨むのですが,答えを出すまでは生徒と一緒に色々なことを考えることが必要だと思います。
一つ一つの法則や公式の成り立ちを考えることも。
面積の公式=6分の1公式 と反射的に答えてしまう生徒は受験で損をするかもしれません。
学校で「覚えなさい」とだけ言われて勉強しているだけの人は,どうしてそうなるのかを突っ込まれると答えに窮してしまいます。
状況が違うと違う面積公式があるのですが,その公式も暗記するのですか?
どう使い分けるか説明できますか??
詰まるくらいなら覚えないほうがいいでしょ。
普通に数値を代入して計算したほうが1000000倍マシ。
・・・と言ってもそんなことをしているとどこかで計算ミスをします。
計算が合わなくて一晩悩んでいた者がこのブログを書いています。
そんな私だから声を大にして言えるのですが,積分面積の問題に限らず,公式を自分でどう作るのか考えてみましょう。
何度も使っていれば自然と覚えられるものも出てきます。
それだけの勉強量が必要です。
必要な勉強量をこなしているうちに気がついたら6分の1公式だろうが,12分の1公式だろうが,30分の1公式だろうが,そんなのすぐに出てきます。
三平方の定理を拡張していくと,余弦定理ができますが・・・。
公式を見てそれに気づきますか?
何かにているかなぁと思える観察力・・・というか感性というか・・・が大事です。
経験を積んでいくうちに観察力がついてきて,何かに気づくことに慣れてきます。
そしてあらゆる問題に対応できる力がつくのだ・・・と思います。
理系の入試の趨勢を決めるのは数学です。
数学強者はとにかく経験に裏打ちされたあらゆる問題に対応する力があります。
その源泉は好奇心,観察力・感性,ねちっこさだと思います。
長い文章になりましたが,ここまでお読みいただいた皆様,ありがとうございました。
ONゼミナール代表 長田 俊将
www.on-semi.jp