さくら荘に着くと蛇の目傘を差した管理人の大濠さんが慌てて洗濯物を取り込んでいる。私と由美は、大濠さんに軽く会釈をして、ただいま戻りましたと声をかけると傘の向こう側からにこりと微笑みながらお帰りなさいと小声で返してくれた。彼女はいくら忙しくても笑顔だけは忘れない人でさくら荘の名物的な管理人さんでもある。彼女の事が気に入ってここに引っ越して来た人も結構な数居たという話も聞く。不思議な魅力の持ち主と言うべきか、いやいや、このさくら荘にはまだまだ個性の強い住人がうようよと居るというのに。
私と由美も相当、個性は強い方だとは自覚しているが果たして。正常と異常というものの線引きはいつ如何なる時になされたのか気にかかるものだ。
つづく
