ウィンザー素描集_RL12388_大洪水 | レオナルド・ダ・ヴィンチのノート

レオナルド・ダ・ヴィンチのノート

万能の天才、レオナルド・ダ・ヴィンチの活躍を紹介していきます。

今年の夏は各地でゲリラ豪雨による被害が相次ぎ、寝苦しく蒸し暑い日が続いている。猛暑の原因は「ラニーニャ現象」だと、池上彰の学べるニュースで言っていた。ラニーニャ現象って何?エルニーニョとエルニーニョ現象が違うってどういう意味?ゲリラ豪雨はどうして起きるの?そもそも雲はどうしてできるの?等とても分かりやすかった。

晩年のレオナルド・ダ・ヴィンチは、大洪水によって世界が滅ぶと考えていた。ウィンザー素描集には一連の大洪水シリーズのデッサンがあり、大自然の破壊的な力によって街や人が飲み込まれていく様が描かれている。描かれたのは1513年以降であり(レオナルドが61才を越えてから)ローマかフィレンツェか、またはフランスで描かれたと思われる。これらのデッサンと関連があるアトランティコ手稿f.328v-bのメモで、レオナルドは紅海の起源を山の倒壊の結果であると書いたあとで、「なぜならば、われわれ自身の時代にも似たような事が見られた。山を谷が横切って7キロに渡って川向こうへと崩れ落ち、谷をせき止めて湖を作ったからである。」これは実際に1513年と1515年の二度にわたってアルプスのベルリンゾーナで起こった災害であり、このシリーズに何らかの着想を与えているかも知れない。


レオナルド・ダ・ヴィンチのノート-ウィンザー素描集_RL12380_大地に落下する破滅
ウィンザー素描集_RL12380
水圧によって決壊する山の連なりと、崩れ落ちて湖の中に巨大な波を作り出している岩
1515年に起きたベルリンゾーナの災害の記録は、山が崩れて、防壁を越えた水があふれ出て町全体を水没させたと伝えている。


レオナルド・ダ・ヴィンチのノート-ウィンザー素描集_RL12388_大洪水
ウィンザー素描集_RL12388
大地に落下する破滅の習作

この紙葉に書かれたテクストでは雲の中での色彩の効果についてのみ書かれており、寓意的な素描群については触れていないが、そこには「大地から立ち上がる骸骨」や「怒りの日」のように天から降る破壊が描かれており、キリスト教の終末論の要素が見られる。また角塔や銃眼を備えた典型的なルネサンス様式の城が倒壊する様や、燃えている巨人、天空の火の玉、ダンテの「神曲 地獄編」を思わせる火口も描かれ、レオナルドの黙示録的ヴィジョンをうかがわせる。