社会的リハビリテーションを学びにいこう | 空 空 不

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訪問の理学療法士をやっています。

コメディカルが地域で活動する訪問看護ステーションのあり方を日々考えています。

その中で日々思った事や、臨床での事などを書き込んでいきたいと思います。

前回リハビリテーションを考えた臨床では、利用者さんの主体性がカギになるので、パートナーシップの関係性の必要性を書きました。

この考えは元々、ご本人も脳卒中当事者で脳卒中リハビリ研究所の福島とみおさんが日ごろ言われている事で、参考にさせていただいています。

私はこうやって当事者からの意見を参考にさせてもらう事が多いです。

そんなふうになったのも、私が以前勤めていた会社の社長が、脳卒中当事者グループの運営をしており、私はここのサポーターを3年務めさせてもらい、それからです。

正直に言って手伝い始めた当初、私はリハビリテーションという概念もほとんど意識していませんでした。

ただ当事者の方の主張されている意見が興味深い、またその意見に目を背けるより、正面から向かい合う事が何かを掴むことになると漠然と思い、サポーターをしていこうと決めました。

この当事者グループの方々は皆さん前向きに活動されており、その活動のお手伝いをしていく中で当事者同士の化学反応というか相互作用に魅了された私は、その後タウンモビリティにもボランティアでちょくちょく関わらせていただくことになりました。
 (タウンモビリティについて知りたい方はhttp://fukuneko-k.com/にてどうぞ)

ここでも前向きな当事者の方々が本当に多く、そこに関わっていく中で、はっきりしたことがあります。

こういう当事者の活動は、その人にも、周りにも、強力な社会的リハビリテーションなんだと。

脳卒中当事者グループメンバーの一人である竹下豊氏は、脳出血左片麻痺を発症し、回復期病院を経て自宅復帰されたあと、度重なる生活での失敗を繰り返し、自ら命を絶とうと真剣に考えた時期もあったとお話してくれました。

その中で竹下さんが言われた印象的な言葉

「病院のリハビリで生活動作は教えてくれたけど、暮らし方は誰も教えてくれんかった。」

この言葉を聞いても、何を言っているのか最初は私はわかりませんでした。
おそらく療法士の方でも、ほとんどの方も意味がわからないんじゃないかなと思います。

後々竹下さんと話をしていると、前途の名言に対して本人もその時は感じた事を言葉に出していたようで、今思うとあの時は社会的なリハビリテーションを誰も教えてくれんかったという事やろうねと言われていました。

病院で働く療法士の方でも、患者さんが自宅へ戻ると、今までの医学的な軸に社会的な軸が加わり、その2軸に沿いながら、暮らしながら緩やかに退院後は改善していく、そういうイメージを持っていて欲しいと思います。

そしてサポーターやボランティアをやりながら今まで当事者の方々と向かい合ってきて、ふと気がつくと自分みたいな療法士でも、少しは社会的リハビリテーションを見る目が養われたと感じています。
この視野は、続けていたらいつの間にか身についていて、気がついたら、あっ、そういうことだったんだと嬉しくなりました。

もちろん社会的リハビリテーションの形は、人によりけり、ケースバイケースですから、ここで学んだ成功事例があっても他の方に通用するとは限りません。というよりほぼ無いと思っていた方が正解です。

しかしニュアンスは通じる、だから前向きな当事者の意見と触れ合うと目が養われると思うのです。

そして療法士が療法士としての業務から離れたところで当事者と関わる、これもポイントなのかもしれません。

実際、何度も言いますが私の意見は当事者の方から教わった事が大きく、今まで私の書いてきた話に少しは興味を持たれる方がいたら、その人は当事者の意見に頷くことが多いと思います。

だから療法士には当事者グループのサポーター、ボランティアをする事をお勧めしたいです。

前に書きましたが、我々療法士は地域にいようといまいと医学的リハビリテーションが主たる役目です。
しかし地域にいると社会的リハビリテーションへの視野が必要で、医学的リハビリテーションと社会的リハビリテーションの相互作用を考えている必要があると思います。

正直に言って今までこのようにボランティアやサポーターをする事の必要性を訴えても、セラピストの反応は薄いのが現状です。
むしろ自分を安売りしたくないといった意見もあります。私も安売りしたくない気持ちは別の場面で顔を出すので、その気持ちはわかります。

しかし見方を変えて、社会的リハビリテーションの勉強と思って参加されてみてはどうでしょうか?

話は変わりますが、昔閉じこもりな方で腰痛の訴えがある方がいました。2年くらい腰痛に悩まされているとかでした。評価した結果、腰椎椎間関節性の痛みが疑われ、椎間関節モビライゼーションで改善しました。

だけど言われました。

「確かにおんしゃあにやってもらって腰痛は治った。けど、いかんぞ!」

そういっていつものようにその方はお酒を飲んでごろごろされていました。

地域の仕事ではハッキリ言ってこのように医学的リハビリテーションだけでは太刀打ちできない困難事例が結構あります。

今私はこういう事例に直面すると、間違いなく社会的リハビリテーションをどう進めていくかに思考変えます。

そしてそういった時に前向きな当事者との人脈は、言い方が良くないかもしれませんが、一つのカードになります。言わばこちらの人脈がスキルとなりうると思います。

当事者の集いに参加すると前向きな当事者との人脈も作れます。

また最初に話をした福島さんはピアカウンセリングを事業として推し進めています。
平成29年度高知県福祉活動支援基金助成事業としてです。
https://peer-support-reha.jimdo.com/%E3%83%94%E3%82%A2%E3%82%B5%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%88%E7%9B%B8%E8%AB%87-%E8%A8%AA%E5%95%8F/

これは県に認められている事業で、皆さんも活用できる事を知っていただきたいです。
ただここで気をつけないといけないのが前にも書きましたが、社会的リハビリテーションへのサポートの中心は、家族やケアマネージャーがベストという事。
特にケアプランに載っていない話をするようになる場合も出てくるので、せっかく良いアプローチの案になっても、療法士がしゃしゃり出すぎるとトラブルで台無しになる可能性がありますので、進め方には注意が必要です。

話が長くなりましたが最後に、高知には社会的リハビリテーションの勉強になる機会がゴロゴロしていると思います。

タウンモビリティ、先ほどの福島さんが始めた当事者グループ、そして竹下さんも当事者グループを作っています。

そして私が以前ボランティアを務めた当事者グループは、代表の方が倉内譲治さんといってこれまたパワフルな方で、またいつか本人の許可が頂けたら、倉内さんの伝説を書こうかと思います(笑)
 

実際、高知の通所リハに従事しているOTさんが、タウンモビリティに利用者をつないでどんどん積極的に外出するようになった成功事例もあります。

また特にタウンモビリティでは療法士のボランティアを必要とする機会があります。

そこで訪問看護ステーション I Amでは、社会的リハビリテーションの勉強をする目的で、療法士には研修として年1回タウンモビリティに参加することを企画しています。

これは起業したら、やりたかった事の一つです!

またその活動はいつか載せていきたいと思います。