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映画ライターもどきの本音ブログ

映画ライターをしている20代後半の男です。好き勝手感想を書くために始めました。

 

 

【公開】
2019年(日本映画)

【脚本・監督】
深田晃司

【キャスト】
筒井真理子、市川実日子、池松壮亮、須藤蓮、小川未裕、吹越満

【あらすじ】

初めて訪れた美容院で、リサは「和道」という美容師を指名した。数日後、和道の自宅付近で待ち伏せ、偶然会ったふりをするリサ。近所だからと連絡先を交換し、和道を見送った彼女が戻ったのは、窓から向かいの彼の部屋が見える安アパートの一室だった――。リサは偽名で、彼女の本当の名前は市子。半年前までは訪問看護師として、その献身的な仕事ぶりで周囲から厚く信頼されていた。なかでも訪問先の大石家の長女・基子には、介護福祉士になるための勉強を見てやっていた。基子が市子に対して、憧れ以上の感情を抱いていたとは思いもせず――。
ある日、基子の妹・サキが行方不明になる。すぐに無事保護されるが、逮捕された犯人は意外な人物だった。この事件との関与を疑われた市子は、ねじまげられた真実と予期せぬ裏切りにより、築き上げた生活のすべてを失ってゆく。自らの運命に復讐するように、市子は“リサ”へと姿を変え、和道に近づいたのだった。果たして彼女が心に誓った復讐とは何なのか――。

公式サイトより

 

 

 

92点

 

何て恐ろしい、そして深みのある一作なんだろう。静かだけどとても雄弁で、でも掴み切れない。

筒井真理子が犬になる場面とか何の意味があるのかわからないけど、インタビューとか見ても深田監督が意外となんとなく出入れてるらしく、ガチガチにロジカルでもないのが面白い。
今回だって筒井真理子の横顔がきれいだったって言うのが発端らしいし。でもこれだけのものを作ってしまうのがおそるべし。

海を駆けるの時もそうだったけど感覚的な部分に委ねてるところもあれば、計算づくなところもあって油断ならないし、見るとどっと疲れるうえに忘れがたい場面がたくさんあるのが深田作品。

人によって解釈はバンバン分かれるだろう。

ただ毎回人生の不条理さや理不尽さを描いてるのは明白。淵に立つなんてそれの最たるもので、地獄みたいなシーンが続いたし、海を駆けるでは津波とそれの象徴のような男ラウを出すことで自然の不条理さ、本人の責任とか関係なく突然人生が壊される恐ろしさを描いていた。
作では、特段近い家族でもない甥の犯罪により自分の人生の土台が崩れていく女性を描いており、今まで以上に世界の不安定さが恐ろしく描かれる。

ただその人生が壊れていく過去パートと、復讐として他人の人生を壊そうとしていく現在のパートを交互に描いているので、単に市子に同情はできない作品になっているし、一番の被害者のサキの方には寄り添っていないのが市子の主観的世界を表していると思う。

また明らかにレズの基子(市川実日子に15歳の妹がいるって設定はさすがに無理があるが)は市子に好意を寄せるあまり嫉妬によって加害者になってしまう。
自分の中で正当性があっても、それは他者を追い詰めてしまうことがあるという加害者としての落とし穴も描いているのが深田作品としては新しい。


そして加害者になろうとした市子の思惑が脆くも崩れ去る展開も皮肉。人は加害者にすらなれない時もある。

信号が点滅している時に2人で駆けだすも基子だけが渡り切って、市子が取り残される場面とか、夜の公園で市子が真実を明かそうと思うといった時に基子が「言わなくていいよ、来れないと寂しいし」という場面で彼女の顔が逆行で表情が見えない場面とか、2人の決裂や対峙を画で説明・予感させるのが流石うまい。劇中唯一のスローモーションを歩行者用音楽で走る時に被せるセンスもすごいわ。
決定的なことが起きる場面じゃなく、その予兆を感じさせる場面をドラマチックに描くのが深田流なのかな。
だからこそ最後は叫ぶ代わりにクラクションを鳴らす。
その他マスコミのシャッター音とか、インターホンの音とか音の使い方も巧い。
そして色での意味づけもいつもの深田晃司らしくきっちりしている。

まず冒頭、真っ赤な服で髪を明るい色に染め、その後も和道と会う時は暖色系の服を着ている市子(リサ)。
過去の市子は黒髪で地味な色の服を着ていたので変化が目に見えて分かる。
一方の基子は青色の服装を着ていることが多く、市子とは色分けがなされている。
戸塚と別れた後、洗車機に入っていたずらで塗られた赤いペンキを落としているのをじっと見ている市子も印象的。赤い色は深田作品では不吉の象徴だし。

市子が和道の部屋を覗いている時には青色の服を着ており、復讐の対象の基子と同化している彼女の心情が見て取れた。

肝心の和道は何物にも染まらない染まれない黒の恰好をしており最初からこの争いに組み込まれていなかったのもわかる。

そして復讐が無駄だった後、公園で遊んでいる最中に基子の幻影を見る場面では、市子は黄色、基子は青色の服を着ている。

市子が幻影を見ているにもかかわらず、彼女が基子に張り倒されて過呼吸になってしまうのは基子に復讐しようと彼女を意識しすぎた結果か。
その後、黄色と青色を混ぜ合わせてできる色の緑に髪を染めて、水に入って生まれ変わる(この表現も深田晃司的)市子の姿も印象深い。

それでも生きていくことを決める場面だったんだろう。

と、まあ色々考察しがいがあってキリがない。おばあちゃんが昔画家だった設定はいったい何だったんだろうか。
辰男の犯行動機は?なぜ北海道に行くと嘘をついたのか。
こうやって個人個人100人100通りの解釈が広がっていくのが監督の狙いだろう。

またしても傑作を出してしまった深田さん。まだ39歳って信じられない。これからも最注目の監督だ。