~健康な皮膚はバリア機能を有しており、細菌などの病原微生物の侵入を抑制している。~
皮膚のバリア機能は、
「物理的・化学的バリア」「生物学的バリア」「免疫学的バリア」により構成されている。
①角層の強固な構造からなる「物理的・化学的バリア」
②皮脂膜中に存在する常在細菌群(ブドウ球菌属、コリネ型細菌)などによる「生物学的バリア」
③表皮角化細胞とT細胞・B細胞が担う自然免疫(抗菌ペプチドなど)や獲得免疫(液性免疫、細胞免疫)からなる「免疫学的バリア」
(照井 正:皮膚バリア機能.宮地良樹編:スキンケア最前線.メディカルレビュー社 pp124-127.2008.)
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ベビー石鹸・シャンプー・保湿クリームを使用すると、
常在菌からなる「生物学的バリア」が破壊されます。
さらに、タンパク質と脂質からなる表皮角質層(「物理的・化学的バリア」)も同時に破壊されます。
「生物学的バリア」「物理的・化学的バリア」が破壊されると、
第3のバリアである「免疫学的バリア」が、頑張らなくちゃいけなくなり、過剰な炎症反応を引き起こします。
それが、アトピー性皮膚炎の発症理由のひとつ、とドクターゆきは考えています。
ですので、それに対する戦略として、
「ベビーシャンプー・ボディソープ・石鹸・保湿クリームの使用を中止して、
お湯だけ洗いで、過剰な汚れはおとしつつ、
常在菌バリアが破綻しないように適度な皮脂膜を残す」
ということを指導しています。
皮脂膜の中では、常在菌が皮膚のタンパク質や脂質を利用して「保湿剤」を作り「肌を弱酸性に保たせる」ことで
悪玉菌やカビの繁殖を抑えます。
全身の皮膚を、この「常在菌バリア」でコーティングすることが大事です。
これは、アトピーや細菌感染、ウイルス感染を発症させないための、「作戦」なのです。
逆に、「石鹸やボディソープで洗い、保湿クリームを塗る」という安易な行為で、
赤ちゃんを危険にさらします。
先日も、毎日、ボディソープで洗われ、毎日、保湿クリームを塗られていた赤ちゃんが、
ジュクジュクした皮疹を発症し、小児科でステロイド外用薬を処方され、治らないと
来院されました。
これは、黄色ブドウ球菌(皮膚バリアを破壊する悪玉菌)による発疹ですよ。
他でもない、これを引き起こしたのは、ママがよかれと思ってしていた「洗剤による洗浄と保湿剤の使用」でした。
肌表面の常在菌バリアが破綻していますから、黄色ブドウ球菌は、勢いよく広がっていきます。
残念ながら、黄色ブドウ球菌の増殖スピードは驚くほど速いです。対して、常在菌の増殖スピードはかなりのろい・・・。
それゆえ、
「数日前から、急に全身にジュクジュクや水疱が広がった」と受診される、全身のとびひ(黄色ブドウ球菌や溶連菌による皮膚感染症)のお子さんは、ほぼ全員が「毎日、洗浄剤と保湿剤を使用」されています。
生後すぐから、全身の皮膚表面は、菌達による「椅子取りゲーム」が開始されています。
ボディソープと保湿クリームにより、常在菌が立ち退くと、ここぞとばかりに「黄色ブドウ球菌(アトピーや感染症を引き起こす菌)」が陣取ってしまいます。
黄色ブドウ球菌は、一度、陣取ると、立ち退きが難しい、そういう奴らなのです。
ですから、非常に大事なお話として、
「赤ちゃんにベビー石鹸やシャンプー、保湿クリームは塗らないでください」と
お伝えしています。
その子の一生の肌の問題につながるからです。
大事なお話なのです。
・・「お湯だけ洗い」を笑うと「肌」で泣く 軽んずべからず・・・・ そういうことです。