額・首・上背部・前腕に長引く湿疹で
お悩みの患者さんが来院されました。
ステロイド外用薬を塗っても
なかなか改善しないとのこと。
湿疹が広がっている範囲
(シャンプーのすすぎ液が触れやすい部位)から、
「現在使っているシャンプーによる接触皮膚炎(かぶれ)の可能性」をお伝えしたところ、
患者さんは少し驚いた様子で
スマホの画面を見せてくださいました。
「でも先生、私『肌に優しいアミノ酸系シャンプー』を使っているんです」
画面に表示されていたのは、
オーガニック風のおしゃれなパッケージと
「アミノ酸系洗浄成分だから肌に優しい」
「石油系不使用」
という魅力的キャッチコピーでした。
成分表示を確認してみると
以下の成分が含まれていました。
- ココイルグルタミン酸TEA
- ココイルアラニンTEA
- ラウラミノプロピオン酸Na
これらは
「アミノ酸」を原料の一部に使った
合成界面活性剤です。
「アミノ酸系=絶対に安全」という誤解
「アミノ酸」という言葉を聞くと、
体に優しく健康的なイメージを持つ方が多い
と思います。
しかし、
これらも洗浄力を出すために
化学合成された界面活性剤の一種です。
石油系洗浄成分(ラウリル硫酸Naなど)に比べて刺激が少ないという謳い文句ですが、
ここに大きな落とし穴があります。
1. バリア機能の低下と「残留性」
アミノ酸系界面活性剤は、
「髪や肌に残りやすい(吸着性が高い)」
という性質を持っています。
しっかりすすいだつもりでも肌表面に残ってしまい、
皮膚のバリア機能を維持する「角質層」や「セラミド」にダメージを与え続けることがあります。
2. 常在菌バランスの崩壊
肌の表面には、
うるおいを保ち悪玉菌を防ぐ「美肌菌(皮膚常在菌)」が存在します。
洗浄成分が皮膚に残ることで
この常在菌のバランスが崩れ、
肌が本来持っている「自ら潤う力(自己治癒力)」が低下してしまうのです。
3.アミノ酸系合成界面活性剤のカブレ
その成分そのものに対して、接触性皮膚炎(カブレ)を起こすことがあります。
決して稀ではなく、診療中に、よく遭遇します。
また、何件かの皮膚科クリニックや
大学病院皮膚科を受診して、
原因不明やアトピー性皮膚炎とされているケースがあり、
疑ってみないと、診断できないことになります。
どんなに強いステロイドを塗っても、
毎日このシャンプーを使い続けている限り、
湿疹が治らないのは当然と言えます。
まさかの「壁」とはこのことぞ、
と思われます。
また、「使いはじめた時は、湿疹が良くなってとっても良かった」
という体感の記憶をずっと持ち続けてしまい、
そのうち、
その成分にカブレて湿疹が治らなくなっても、
「良かった記憶」に縛られて、
そのシャンプーによる湿疹
と疑うことができなくなっている方も
よく遭遇します。
キャッチコピーではなく「成分と肌の反応」を見る
化粧品の
「肌に優しい」「石油系フリー」といった
キャッチコピーは、
あくまでイメージ戦略に過ぎないことがあります。
アミノ酸系であっても、
肌質や体質によっては十分にかぶれの原因になり得るのです。
この患者さんには、
合成界面活性剤の入っていない
「純石鹸シャンプー(シャボン玉、ミヨシ、パックスシャンプーなど)」への切り替えを
ご提案しました。
その後、
シャンプーを変えていただき、
長年悩んでいた湿疹は
ステロイド外用薬を使わなくても、
順調に治まってきています。