口内炎で来院された成人の患者さんが、
「そういえば、先週から右足首が痒くて・・・」とおっしゃいました。
みると、右足首に湿疹ができています。

 

さて、原因は何でしょう。


ご本人は、何かを塗ったとか、虫にさされたとか、原因と思われることは何もしていないけれど、急に痒くなって搔いていたら湿疹ができていたと。

過去にステロイド外用薬を塗っていませんか?と聞くと、
「いや~、塗った記憶はないです!」と患者さんはキッパリ。

はてさて・・・
カルテをめくってみると、5年前に、
右足首の虫刺されに、ステロイド外用薬の処方があります。
 

「あ~、やっぱりステロイド外用薬を処方しています。

ステロイド外用薬を塗ると、5年後とか10年後に湿疹をぶり返すことがあります。
でも、カルテには、『本人の強い希望がありステロイド外用薬処方』と書いてあるので、
この時は、本当にひどい虫刺されだったのでしょうね。
ほら、カルテの絵をみると全く同じ部位でしょ?」

5年前のカルテの人体図の右足首が赤色で塗られて印がついていました。
カルテの記載をみせて説明すると、

「そうですね~、じゃあ、この湿疹は、そのまま何も塗らなくても大丈夫なのですか?」と問われたので、


「その湿疹に、ステロイド外用薬を再び塗ると、すぐに治まるでしょうが、

また数年後にもっとひどい湿疹がでるようになるかもしれません。もしかすると、それは数か月後かもしれませんし。
それは嫌でしょうから、そのまま放置して、かゆかったら掻いていいので、治るまで数か月待ってください。」

はい、そうします、と患者さん。

その2か月後の診察のときに、「右足首の湿疹はどうですか?」と聞くと、
「あ、あれは、そのうちに良くなりました。」と、右足首の湿疹はきれいに治っていたのでした。

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また、ある成人の患者さんが、
「左腕が急に痒くなりました。」といらっしゃいました。
この方も、原因は心当たりがないとのこと。。。

カルテをめくってみると、4年前に、

毛虫によってできた
左腕の毒蛾皮膚炎に、ステロイド外用薬の処方がありました。

ステロイド外用薬による後遺症という説明をして、同じく、ステロイド外用薬は塗らずに治るまで待つようにお伝えしました。
そうしてみます、と患者さんは帰っていかれました。


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脱ステロイド医が処方したステロイド外用薬で、「ステロイド依存」にさせてしまうなんて、
本当に面目ない事態ですが、
どうしてもステロイド外用薬を希望する患者さんには、
「ステロイド外用薬を使用すると、のちに湿疹を繰り返しやすくなりますが、それでも良いですか?」と必ず確認し、
患者さんから了承を得てから処方しています。

この二人のケースは、軽い湿疹でしたので良かったのですが、それでも、こういうケースに出くわすと、

「ステロイド外用薬の影響というのは、やはり怖いものだな」と
思い知らされます。


他の医院で処方のステロイド外用薬を塗っても治らなく、本当にひどい湿疹でいらっしゃる患者さんを診ることも多く、
お話を伺うと、

幼少時から湿疹やアセモや虫刺されなどができたら、すぐにステロイド外用薬を塗っていたというケースも多く、

ひどい全身の湿疹は、その結果と考えられ、
そういう「安易にステロイド外用薬を使用する現代医療」に対し暗たんたる思いがいたします。


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次に、私の夫の場合ですが、
私の夫は、かつて、左顎の軽い湿疹に弱いステロイド外用薬を塗っていました。
私が処方して塗らせていたのですが、
ステロイド依存について知ってからは、一切ステロイド外用薬を塗るのを止めさせていました。
湿疹はまもなく消え、全く問題ない肌の状態が長く続き、湿疹があったことさえ忘れていました。
そして、8年後の昨年秋に、左顎の湿疹がぶり返し、しばらくかゆがっていましたが、そのまま放置していると、3か月ほどでおさまりました。
おそらく、今後も同じ部位に湿疹を繰り返すかもしれませんが、ノンステロイドで乗り越えていきます。


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また、あるお子さんは、
毎年左肘にだけ夏に湿疹ができて、「あせも」と言われて、ステロイド外用薬を処方されていました。
なぜか「左肘だけ」に湿疹ができる理由はなぜでしょう?


「ステロイド依存」についてお伝えし、ステロイド外用薬を中止すると、左肘から腕全体に湿疹が広がり、胸や背中、首、顔までのほぼ全身に湿疹が広がり、
挙句に、カポジ水痘様発疹症という単純ヘルペスによる発疹もでて痛みで泣いて来院されました。

「こんなに湿疹がひどくなり、ヘルペスで痛がるのはみてられません。また、ステロイド外用薬を再開させたいです。」と泣き顔のお母さんを励まして、
ステロイド外用薬を使わずにいたら、
そのうちに、いつのまにか湿疹は消えていきました。

 

その後も何度か湿疹を繰り返し、
あれから数年たちますが、今はかさつきが軽くあるのみです。たまに左肘の湿疹が軽くぶり返すことがありますが、
やはり、ステロイド外用薬を塗らずにいると、勝手に治っていきます。

 

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そのように、過去にステロイド外用薬を塗った場所は、数年~数十年以降にも「湿疹」を繰り返すことがあります。
「なぜか」「いつもこの部位に」「湿疹を繰り返す」「理由がわからない」という湿疹がある場合、
もしかすると、過去にステロイド外用薬を塗った部位かもしれません。

それは、もう忘れてしまった、乳幼児の頃、もしくは小児の頃のできごとだったかもしれませんし、
5年・・・10年前のできごとかもしれませんが・・・。

たまに、仕事や日常生活で接する何かのカブレ(接触性皮膚炎)のこともあるので、
そのあたりはよく検討して、
そういうものがないのであれば、
もしかすると、ステロイド依存による湿疹・・かもしれませんよ。

 

 

まあ、皮膚科の診療では、こういう患者さんがほとんどなので、
ステロイド依存について知らない皮膚科医は

「乾燥による湿疹です」とか「肌が弱い体質なのでしょう」とか「湿疹が癖になっている」とか「肌の下の炎症がくすぶっている」とか「ストレス」とか「掻くのが悪い」とか言って、ステロイド外用薬をせっせと処方するのが常です。

 

「ステロイド依存」による湿疹にステロイド外用薬で対処していくうちに、難治な全身の湿疹になり本当に大変な患者さんがおりますが、
もうそこまで、ずぶずぶに薬漬けになっちゃっていると、もう抜け出すのは本当に難しいです。
アトピーの患者さんでなくても、そういうケースが本当に多いのです。

ですから、赤ちゃんや幼児のうちに、「ステロイド外用薬」を安易に使用しないように、
守ってあげてほしいのです。
がんばれ、パパ、ママ、そして、ノンステロイド中の赤ちゃん、お子さん!