人には適応能力というのが備わっており、
ある環境にいると、その環境で生きやすいように体質が変わります。

例えば、夜勤の仕事の人は、はじめは、昼夜逆転で調子くるっていても、
そうのうち、昼夜逆転に慣れていきます。

例えば、毎日、化粧水や乳液などを塗りたくっていた人が、
肌断食といって、すべての保湿剤を中止すると、はじめは肌がつっぱって乾燥して大変ですが、
そのうち、何も塗らなくてもつっぱらない生き生きとした肌になります。


赤ちゃんの肌は、外の環境に最大限に適応しようとしています。
ですから、自然にそのままでいいのです。ありのままでいいのです。

石鹸で洗う必要はありません。
水道水ですすぐだけで十分に汚れは落ちます。
保湿剤を塗らないと、冬の乾燥する時期は、肌がカサカサになりますが、
そういう環境に生まれたことを肌は認識しようとします。
何も塗らない肌は、春の暖かさ、夏の蒸し暑さ、秋の気温湿度の変化、冬の寒さや乾燥などを覚えて適応できる体を作っていきます。
逆に、保湿剤を塗りたくった肌は、保湿剤を塗っている状態に適応してしまい、季節の変化に適応できなくなります。次第に、保湿剤を塗らないと生きられない肌になります。

 


1月は、乾燥して寒い季節です。
そんな季節は、赤ちゃんは、週に1度の1分程度の入浴で十分です。
赤ちゃんは体温が高いので、短時間の入浴がいいのです。長湯すると、冬でもアセモができます。
それ以外の日は、おむつを下にひいて、暖かいお湯をペットボトルなどにいれて、陰部臀部だけをすすいであげるだけで十分です。首や脇などの蒸れるところは、お湯で濡らしたガーゼでやさしく拭いてもよいでしょう。


それでも乾燥する時は、産着を2~3日に一度のとりかえにするとよいです。
洗った産着は、脂取り紙と同じ作用があり、皮脂を吸ってしまうので、冬は毎日取り換える必要はないのです。
汚れてしまった産着は、適宜とりかえる必要がありますが、さほど汚れてない場合は、そのようにしてみるのも乾燥対策になります。


よだれで口周りやほっぺがガサガサなら、ベビーワセリンや白色ワセリン、プロペトなどをちょっとだけ塗ってもよいでしょう。米粒半分程度の量の白色ワセリンを両掌にのばして、ほっぺにくっつけます。

肌の表面は、本来サラサラしているものなので、白色ワセリンを塗るときは、ほんのちょっとだけ塗って、サラっとした状態になるように気を付けてください。
ワセリンをべた塗りすると、肌バリアにとっては保湿過剰の洪水状態になり、バリア機能が破壊されてしまいます。

毎日、赤ちゃんを入浴させない方が肌にとっていいのです。
週に一度の1分の入浴・保湿剤は塗らない・陰部のみ毎日お湯だけで洗う・産着も2日に一度のとりかえ、
このくらいがちょうどよいのです。ママも楽ちんになります。今のママたちは頑張りすぎて、逆に赤ちゃんの肌バリア機能を破壊しちゃってます。

ママも、入浴時はボディソープを使用せず、お湯だけ洗いにします。
そうすると、肌の表面に常在菌(表皮ブドウ球菌などの善玉菌)が増えて、赤ちゃんに与えることができます。

赤ちゃんの肌の表面に、常在菌が沢山増えて覆われると、悪玉菌(黄色ブドウ球菌や大腸菌など)をはねのけてくれます。さらに、常在菌は保湿剤も作ってくれます。
約1歳までに、赤ちゃんの肌表面の菌の占拠率が決まることが分かっています。黄色ブドウ球菌に占拠される場所が多いと、アトピーの湿疹の重症化につながってしまいます。
なんとか、善玉菌を肌表面に増やさなくてはならないのです。
この勝負は、1歳までと期間が限られているので、本当に真剣にお伝えしています。

 

 

ほとんどの赤ちゃんは、上記の方法で十分なのですが、
気を付けなくてはいけないのは、ジュクジュクの湿疹に黄色ブドウ球菌がくっついている赤ちゃんです。
赤ちゃんの免疫力が弱いために黄色ブドウ球菌に負けて、SSSS(ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群)や細菌性関節炎(←本当にまれです)を発症させてしまうと、本当に大変です。
そうならないように、抗生剤の塗り薬を患部に塗って、黄色ブドウ球菌の量を減らします。
ドクターゆきのクリニックでは、強酸性水を患部に毎日噴霧してもらい、黄色ブドウ球菌の量を減らすようにしています。強酸性水は、抗生剤と違って黄色ブドウ球菌の耐性化がおこらないのと、10秒で普通の塩水になるので安全で、湿疹を乾燥させるので保湿にはならず、赤ちゃんの黄色ブドウ球菌対策として、本当に重宝しています。


黄色ブドウ球菌がくっついているジュクジュクした湿疹のある赤ちゃんは、ほとんどが栄養状態が悪いためなので、母乳より粉ミルクの量を増やしてもらいます。栄養不足が、免疫力低下をもたらし、黄色ブドウ球菌を排除できなくなっています。粉ミルクや早めの離乳食で、栄養状態が改善すると、抗生剤に頼らなくても、黄色ブドウ球菌が減っていき、湿疹が自然に改善していきます。


食物アレルギー対策として、生後4か月からの早めの離乳食を開始し、生後6か月には、すべての食材を食べれていることを目指します。栄養状態が悪いことが、アレルギー発症の原因になるため、タンパク質をはじめ、ビタミン・ミネラル・脂質・炭水化物などバランスよく摂取させてもらいます。

上記の方法の実践で、湿疹に保湿剤やステロイド外用薬を塗らなくても、食物アレルギーになりませんし、
アトピー性皮膚炎は時間をかけてゆっくり改善していきます。

ですから、「保湿剤とステロイド外用薬を塗らないとアトピーや食物アレルギーになってしまう」なんてことはありません。逆に、他の病院で保湿剤とステロイド外用薬を塗る治療をうけていて、食物アレルギーを発症した子、アトピーが治らない子が受診するの多いです。ありゃ~、はじめが肝心なのです。塗ってからだと、脱ステロイドは苦労します。でも乳幼児のうちに、脱ステロイドする方がやりやすいので、頑張りましょう。