今週末にある皮膚科学会学術大会の抄録集をパラパラと眺めていました。
講演する先生方の書いてる内容を読んでみると、
アトピー性皮膚炎の診療における皮膚科医の本音が見えてきます。

 


「アトピー性皮膚炎は、掻痒のある湿疹性病変を繰り返す慢性炎症性皮膚疾患で、長期寛解維持を目標に適切な治療を行うことが大切である。既存の治療ではいずれも効果に限界があるか、副作用のため使用継続が困難で、長年、効果を発揮する安全性の高い治療薬が求められてきた。・・・・」
(既存の治療=ステロイド外用薬・プロトピック軟膏・シクロスポリン内服などですね)


「成人アトピー性皮膚炎患者さんの多くは、『我慢と諦め』の境地にいる。医師からは外用療法以上の提案がないまま日々やむなく塗り続けている。・・・・」



「生物学的製剤などの新規治療の登場は、アトピー性皮膚炎の難治例の寛解導入、維持に大きく寄与し、クリニックでも取り入れることができるようになった。クリニックには多数のアトピー性皮膚炎患者が受診し、病院と比較すれば重症例が少なく軽症、中等症例が多いが、それでも寛解導入、維持に成功している事例は決して多くない。・・・・」



「寛解導入および寛解維持は、『日常生活に支障をきたすことがない状態を維持する』とした、アトピー性皮膚炎診療ガイドラインの治療の目標そのものといえる。
 寛解導入にあたっては、治療により症状が改善することを示す成功体験が重要である。・・・・」


・・・・・上記の先生方のコメントのとおりに、アトピー性皮膚炎は、ステロイド外用薬を使っても、うまくコントロール(寛解導入・維持)することが難しいです。
そして、そのような状況は、「患者さんがちゃんとステロイド外用薬を塗っていないからだ、医師がちゃんとステロイド外用薬を塗らせないからだ」ということで、こういう学術大会では、「いかに患者さんにステロイド外用薬を塗らせるか」という講演がなされます。
何年もの間、そういう内容の講演が続いています。もう、内容が同じで飽き飽きしてます。

 

大勢の皮膚科医が自覚していると思いますが、
「ステロイド外用薬でコントロールすることが理想だけれど、うまく行かない」という現実は、もう大分前からあります。その現実が、我々皮膚科医の眼前に大海のように広がっています。まさに、ステロイド外用薬の海です。
その海の中で、ステロイド派医師、脱ステロイド医師、ステロイド依存の患者さん、アトピーの患者さん、患者さんの家族が、もがいている・・・・そのように思います。

それなのに、「ステロイド外用薬をうまく使えば、副作用の心配なく、コントロールできますよ」という嘘をいつまで言い続けるのでしょうか。ステロイド外用薬を塗っておけば、しばらくは安泰かもしれません。しかし、そのうち、副作用で身動きできなくなる(コントロールできない)将来が待っているのに、先のことは考えてあげないのでしょうか。
今がよければそれでよいということで、「嘘も方便」ということでしょうか。