昨年、読者さんから、「仁こどもクリニックの伊藤仁先生は、強酸性水を使ってアトピー治療をしています。強酸性水についてどのように考えてますか?」というコメントをいただきました。

ドクターゆきの脱ステロイド先輩医師に、「強酸性水」を治療に使っている方がおりませんでしたので、よく知りもせず、「黄色ブドウ球菌に対抗する常在菌も減らしてしまうのではないか」と否定的な返答をした記憶があります。
その後、強酸性水について気になりつつも、使用しようとせず、忘れかけておりました。

しかし、この夏、強酸性水を使わざるを得ない患者さんに遭遇したのです。
脱ステロイドは希望されない、ステロイド外用薬使用中のアトピーの方でしたが、湿疹が悪化し、夜も眠れない状態でした。ステロイド外用薬を強めても、抗生剤の軟膏や外用薬を処方しても、ジュクジュクした湿疹がどんどん広がっていきます。

・・・ステロイド抵抗性(steroid resistance)です。ステロイド耐性ということもあります。

深谷元継先生のブログに「ステロイド抵抗性」について書いてあったことを思いだし、読み返しました。
「皮膚に黄色ブドウ球菌が繁殖すると、ステロイドが効きにくくなる(ステロイド抵抗性)。
ステロイド抵抗性は、黄色ブドウ球菌が産生するスーパーアンチゲンが関与している。
スーパーアンチゲンは、ステロイドで抑制されない。
ステロイド抵抗性に打ち勝つには、黄色ブドウ球菌を減らすこと。」
とありました。

黄色ブドウ球菌を減らす作戦として、①~④の方法があり、ひとつひとつ検討してみると、
①抗生剤を使う。・・・・これは、耐性菌(MRSA)を作りやすくて問題なんだよな。
②消毒薬を使う。・・・イソジン療法は、ヨード過剰症を起こしたり、かぶれを起こすと問題なんだよな。
③一切何もしない。・・・脱ステロイド先輩医師の方法はこれに近いけど、症状がきついと本当に大変なんだよな。
④強酸性水を使う。・・・・以前、ブログで読者さんに「伊藤仁先生」が使っていることを教えていただいたっけ。害もなさそうなので、これを試してみよう。

深谷先生のブログでも強酸性水の使用がすすめられており、ご紹介されていた強酸性水生成器を購入しました。

 

 



強酸性水をスプレーボトルにいれて、患者さんにお渡しし、自宅で、朝と夜の2回、患部に噴霧していただきました。そして、1週間後の診察時、「強酸性水で、良くなっている気がする。」と、本人と、一緒にいらっしゃったご家族もおっしゃってます。確かに、湿疹の勢いがおさまっています。
その後も、継続して噴霧していただき、湿疹が軽くなり、ステロイド外用薬の強さを弱くすることができました。

この結果に気を良くして、ほかのアトピーの患者さん達にも試してみましたが、湿疹が軽減し、痒みが軽くなったりと効果がある人が多い印象です。数回噴霧しただけで、湿疹が改善しているのを感じるとおっしゃる方もおります。悪化した人は今のところいないですね。
アトピー赤ちゃんに使用すると、ジュクジュクが乾いて、かさぶたもなくなっていくので、重症の黄色ブドウ球菌感染症や低タンパク質血症になる心配もなくなりました。
強酸性水は、肌を乾燥させる性質があるので、「保湿」にはならないことも分かりました。夏の汗をかく時期に、強酸性水は肌をさっぱりと乾燥させるので、脱保湿療法をサポートしてくれるのでは、と思います。
しかし、これから乾燥する時期に、強酸性水で乾燥しすぎる心配は残ります。

強酸性水について調べてみると、
・強酸性水は、食塩水を電気分解し、酸性(ph 3以下、残留塩素 30PPM、酸化還元電位 1000ミリボルト以上)を示した水です。
・一般細菌、ウイルス、真菌、芽胞菌(枯草菌)などのすべての病原体に対して有効な殺菌作用があります。
・皮膚に対しては、①殺菌効果②収斂作用(ひきしめる作用)③漂白作用④消炎作用⑤止血作用などがあり、アトピー性皮膚炎、湿疹、足白癬、尋常性ざ瘡の症状の改善がみられます。
・ケガや火傷、床ずれなどへの感染症対策にも使用できます。

・アトピー性皮膚炎の肌には、黄色ブドウ球菌が定着しており、湿疹の悪化原因になっています。また、カンジダやマラセチア菌などの肌に常在しているカビにアレルギーを持っている方も多く、湿疹の悪化原因になっていることがあります。強酸性水の噴霧により、黄色ブドウ球菌、カンジダ、マラセチアを殺菌し、さらに、肌が酸性になることで、表皮ブドウ球菌などの美肌菌が増えやすくなります。
・強酸性水は、ガーゼや肌などの有機物にふれると、すぐに失活し、10秒ほどで塩水に戻ってしまいます。スプレー容器などにいれて、直接肌に噴霧し、10秒ほど経過してから、タオルなどでふき取ってください。
・強酸性水は、日光照射や高温、空気にさらすなどで失活するため、強酸性水をいれたボトルは、遮光し、冷蔵庫保存すると、約1週間は効果を保てます。
・・・・とのことでした。

 

火傷やケガ、汗疹、おむつかぶれなどにも強酸性水を使用していますが、使った方が治りがよいように感じます。
深谷先生のブログを読むと「強酸性水を使ったアトピーの子供は、使わなかった子より、湿疹のコントロールがよかった」という小児科医師の論文があるようなので、皮膚科学会のアトピー治療ガイドラインに強酸性水について載っていてもよさそうですが、なぜか載っていません。
学会の医師達が強酸性水を使って、赤ちゃんの湿疹がよくなれば、ステロイド外用薬を使わずにすむかもしれないのにな、残念に思います。
そのように、強酸性水の効果を実感しております。
以前、「強酸性水治療」について、否定的なことをお伝えしてしまい、質問された読者さんには、大変申し訳ないことをしてしまいました。


はてさて、問題は、強酸性水を患者さんに渡す方法をどうするか?だと思います。

強酸性水生成器が高額なので、患者さんは購入しづらいですし、医師からも薦めづらいです。
クリニックで強酸性水を渡すとしても、生成した強酸性水は1週間ほどしか効果が保証できないため、患者さんが何度も受け取りにくる必要がでてしまいます。
おそらく、強酸性水を患者さんに渡す方法などの管理が大変で、強酸性水の治療が広がらないのだろうなと思います。


参考までにですが、強酸性水生成器は、他に、家庭用のものですが、安定した強酸性水を作ってくれる
還元水素水生成器 | 株式会社プランビー - PlanBee (38万円位)
というのもあります。これは、月々少額でのレンタルもあるようです。

あと、強酸性水を郵送してくれる業者さんもあるようですが、私はよく知りません。

強酸性水の治療について詳しく知りたい方は、仁こどもクリニックの伊藤仁先生のご著書
 

 

を読んでみてはいかがでしょうか。
 

令和3年9月23日追記→ (※強酸性水の使用は、皮疹の調子がよくなる方もいらっしゃいますが、「使ったらよけい乾燥して痒みが悪化した」という方も数名いらっしゃいます。秋・冬の乾燥する時期には、使わない方がよい場合もあるかと思います。ご自身の肌の調子をみてお使いください。)