若狭湾沿岸に、行き場のない4,280トンの核のゴミ=使用済み燃料 これを増やし続けてよいのか!! | 脱原発の日のブログ

脱原発の日のブログ

12月8日は1995年、もんじゅが事故を起こして止まった日。この時、核燃料サイクルと全ての原発を白紙から見直すべきだった。そんな想いでつながる市民の情報共有ブログです。内部被ばくを最低限に抑え原発のない未来をつくろう。(脱原発の日実行委員会 Since 2010年10月)

若狭湾沿岸に、行き場のない4,280トンの核のゴミ=使用済み燃料

これを増やし続けてよいのか!!           越前市 山崎隆敏

                                  (若狭ネットニュース原稿に追加)

「誰もが納得する理論」で世論喚起を

樋口英明元裁判長は「原発を稼働してはいけないと誰もが納得する理論を社会に浸透させ、世論を形成することが大切だ」と述べています(共同通信12月5日)。そのあと、美浜3号差し止め裁判に関して「老朽炉の危険性の訴えは世論を大いに喚起するだろうと思っていたが、世論にあまり響かなかった」という関係者の嘆息を耳にしました。思い返せば90年代には、敦賀3・4号の増設反対 ともんじゅの運転再開反対の声が福井県内に大きく広がりましたが、その声の中心には保守良識層と中間層の人たちがいました。また、3・11のあと、福井で初めて市民集会とデモの呼びかけに応えて集まった人たちの大部分は無党派の市民たちでした。私は、これらのことを常に念頭に置いて福井での運動を考えてゆきたいと思っています。

福井では使用済み燃料問題が最大のアキレス腱

福井においては、「核燃料サイクル破綻の現状」と「行き場のない使用済み核燃料問題」をていねいに県民に伝えてゆく活動こそが、「誰もが納得する理論」形成にもっとも有効であろうと考えています。原発に絶対反対の人でなくとも、つまり、「老朽炉とはいってもたちまち事故を起こすことはないだろう」「しばらくの期間は原発を動かしてもよいのではないか」と考える人たちにも、この問題は少しと立ち止まって考えてみようというテーマになりうるからです。 

しかもこのテーマは、関電や国など原発を進める側にとっては最大のアキレス腱です。この活動を広げる中で、とくに政治的中間層・良識的保守層の共感を引きだし、超党派の広範な県民世論を形成してゆく必要があるだろうと私は考えます。

10月4日、福井県議会は自民党県議が中心になり「事実上の破綻が指摘されている核燃料サイクル の確立に国が責任をもって取り組むよう求める意見書」を可決しています。もとより、核燃料サイクルの確立など望み得ないからこそ「破綻」が指摘されるゆえんで、このような意見書を書く能天気さには呆れますが、少なくとも、福井県の自民県議たちも「核燃料サイクルは事実上の破綻」と考えているのです。

福島の被災者たちを前にして原発回帰を語れるか 

12月19日、私は社民党の脱原発・脱プルトニウム全国連絡協議会の一員として対政府交渉に参加しました。テーブルに着いた9人の若手官僚たちに福島の佐藤龍彦さんは、福島で苦しむ人々の嘆きを穏やかな表情で切々と伝え、「貴方たち一人一人に問いたい。貴方たちは福島の被災者たちを前にして原発回帰を語ることができますか」と詰め寄りました。佐藤さんの訴えに私は、かつてチッソ社長に対峙した水俣病患者家族の姿を思い出し重ね合わせていました。その佐藤さんの問いかけに一人の官僚が「福島の人たちには同情するが、 私たちは責任あるエネルギー政策を進めなければならない」と答えたのに呆れ、思わず私は「貴方たちは責任ある政策というが、核燃料サイクル政策の破綻という克服しえない現実が目の前にあるではないか」と糾問しました。続いて青森の笹田隆志さんは「大間原発ではフルMOX燃料を使用するが、核燃料サイクル政策は破綻し、その使用済みMOX燃料の行き場はない。 貴方たちは将来、愚策を進めたことを後悔する日が必ず来る。良心の証として、原子力政策には未来がないことを政治家たちにせめて耳打ちしておくべきではないか」と若い官僚を説諭されました。

使用住みMOX燃料は原発サイトで永久保管!? 

高浜原発の使用済みMOX燃料の行き場は最初からないという問題について私も、政府 (経産大臣)はMOX使用済み燃料を処理する第2再処理工場は必ず造ると福井県にたびたび回答しているが、それはいつどこに造る予定なのかと質しました。第二再処理工場については、2007年に原子力政策大綱で「高速増殖炉サイクルの開発が成功すれば、2050年頃から導入開始」などと論じていたのです。しかし、2010年には原子力委員長自身が「2050年に高速増殖炉を実用化する国の大綱の実現なんて誰も考えていない」と本音をもらしています(朝日新聞 2010年6月17日)。そして、それはその通り、現実のも のとなりました。にもかかわらず、「第二再処理工場の建設計画はある」と答弁する若い官僚にいら立ち私は、「霞が関はヤルヤル詐欺のカルト集団ではないか」と捨て台詞を浴びせかけました。 

ところで福井県知事は「使用済み燃料の県外移送は国との約束」と自分達には責任がないかのように言いますが、プールの寿命を超える長期間 (約90年※ )の冷却が必要な使用済みMOX燃料は当初から行先がなく、県民への説明もないまま高浜での永久保管が宿命づけられてしまっています。この問題を私たちは対県交渉で繰り返し追及してきました。県の担当者も危機感を深めています。

( ※ 使用済みウラン燃料の崩壊熱を「乾式貯蔵可能なレ ベルの約2kW/トン」へ下げるにはプールで約10年冷やさ なければなりませんが、使用済みMOX燃料では約90年かかるのです。) 

美浜3号と高浜1・2号は2023年末に運転不能に 

私は、質疑の冒頭で「2021年に関電は、2023年末までに計画地を確定できない場合は、美浜3号機 と高浜1、2号機の運転を止める」と杉本知事(ひいては県民)に約束したが、この約束が守られなかっ たとき監督官庁の経産省は、この県民との約束を遵守し3基の原発の運転を止めるよう関電を指導すべきと質しました。それには 「仮定の話にはこたえられない。中間貯蔵先を探すことに努力します」の建前論が返ってきただけです。政府は、60年超え原発の運転を進めると虚勢をはりますが、そもそも関電の7基の原発は稼働すれば残り4~5回の燃料交換で使用済み燃料プールが 満杯となり、その後は燃料交換ができず運転不能となります。 

行き場のない使用済み燃料をこれ以上つくるな !!

「核燃サイクル政策の破綻」が引き起こす矛盾=「行き場のない使用済み核燃料」問題は90年代半 ばから顕現していました。以下のように、関電の原発は、将棋でいえばほぼ「詰んだ」状態なのです。 この問題は1990年代から現在まで先送りされ続けてきました。1998年に「2000年までに使用済み燃料 の中間貯蔵の候補地(県外)を決め、2006年ころに建設する」と関電は栗田(元)福井県知事に約束し、 プールのリラッキング(貯蔵ラックの格子間を狭めることによる使用済み燃料の詰め込み)を認めさせました。その後も関電は西川(前)知事に「2010年までに」「2018年までに」「2020年までに」と約束と反故を繰り返してきたのです。そして、ついに2021年には「2023年末までに計画地を確定できない場合は、美浜3号機と高浜1、2号機の運転を止める」とまで言い出したのです。関電は、むつ市貯蔵施設の共同利用をねらっていますが、今年5月の市長再選後もむつ市長は拒否を表明しています。「詰んだ」状態のまま、なお悪あがきをつづけ、行き場のない使用済み核燃料 (高レベル廃棄物)をこれ以上増やすことなど決して許されることではありません。もとより私たちは、福井県知事と同様「これらを県外へ」と主張するつもりはありません。「行き場のない使用済み核燃料をこれ以上つくるな」の福井県民の声を大きくしてゆきたいと考えます。何千年ものあいだ安全に保管できると、生きている人間の誰も保証することなどできぬ核のゴミ= 使用済み燃料が若狭湾沿岸に4,280トン(美浜480トン、大飯1,790トン、高浜1,380トン、敦賀630ト ン:2022年9月現在)もため込まれている深刻な現実を福井県民に知らせ、「これを増やし続けてよいのか」と問いかけてゆきたいと思います。

 

岸田政権の原発回帰は「核燃サイクル破綻」の現実を無視した荒唐無稽な妄想!

経産省は2030年には再生可能エネの発電単価が原発火力を下回ると発表しています。その時代に初期コストの大きな原発を新たに作るなど、電力会社もやりたがりません。そのため今回の計画案では、廃炉の跡地への建て替え(リプレース)を打ち出すものの「新増設」は後退させています。もう一つは、たとえば福井県でも90年代に敦賀3・4号増設反対の県民世論が広がりこれを食い止めたように、また和歌山や京都、三重などの新規計画も頓挫したように、新増設を打ち出すと、周辺地域の反対運動が大きくなることを恐れたようです。

かように、他の電力会社は新増設には消極的ですが、なぜか関電だけが美浜4号の新設に意欲的なのが不思議です。彼らがコズルイのは、美浜4号の新増設をリプレースと位置付けていることです。これに対しては、行先のない核のゴミ=使用済み核燃料を美浜1・2・3号機にため込んだまま、さらに4号まで造って核のゴミを増やすつもりか、と反撃してゆかなければなりません。

 

 自民党などの政治家たちはリプレースと簡単に言いますが、そもそも、廃炉解体の完了までには約40年かかり、建設に10年、原発が動くのは50先のことになるため、まず実現性はありません。たとえば2008年から解体を始めた「ふげん」は、解体廃棄物(低レベル)と使用済み燃料が邪魔をして、これまで解体作業が進んでいませんでした。そのためと考えられますが、今年になって突然、廃炉終了予定は7年延びて2040年になったと発表しました。2040年の予定もあくまでも順調に進めばの話しです。また、美浜1・2号機は2045年に解体終了予定ですが、ふげんと同じように使用済み燃料が構内にあるため、解体作業が進まない可能性があります(ふげんの場合は使用済み燃料をフランスに送ることになり使用済み燃料問題に関しては解決)。

50先のそのころ、再生可能エネルギーが世界市場を席巻しています。EUは、今年5月に発電における再エネの割合目標を2030年までに40~45%にすると提案。ドイツは、再エネ割合の目標値を2030年に80%に引き上げ、中国も、2022年から27年にかけて再エネの発電容量を倍増させると発表しているのです。原発に固執する日本が今後、鎖国政策をとるのであればともかく、原発の電気で作った製品はコスト的にも太刀打ちできず、日本の経済にとって大きな負の要因となります。