みなさま(重複失礼、拡散歓迎)
FoE Japanの満田です。
現在、福島第一原発の敷地にたまり続けているALPS処理汚染水ですが、東電によ
れば、約860兆ベクレルのトリチウムが含まれています。(ちなみに2010年に福
島第一原発から海洋中に放出されていたトリチウムは2.2兆ベクレルとのことで
す)
ご存じのように、この処理汚染水の中には、トリチウムだけでなく、セシウム
137、134、ストロンチウム90、コバルト60、アンチモン125、ルテニウム106、ヨ
ウ素129なども残留しています。
タンクにためられている水の実に72%が、告示濃度限度比総和1を超えた状態に
あります。(告示濃度限度比総和=それぞれの核種の濃度を、当該核種の告示濃
度で割ったものを足し合わせた値で原子炉等規制法では排出の際は1未満にしな
ければならない)
2018年10月の東電資料ではタンク水の告示濃度限度比は最大約2万となっていま
したが、改めて東電に問うと、14,442倍とのことでした。
告示濃度限度比でいえばもっとも高いのはストロンチウム90とのことです。
基準を超えている72%の水について、東電は「二次処理」を行って告示濃度限度
比総和1以下にするとしていますが、もちろん完全に除去できるわけではありま
せん。
ちなみに、告示濃度限度比総和1を超えていない水については、「二次処理せず」
に希釈して流すとしています。
問題なのは、各放射性物質の総量が示されていないことです。
FoE Japanが原発ゼロの会のご協力を得て提出した質問に対する回答で、東電は、
「算出していない」と述べています。昨日も原発ゼロの会主催の会合で、議員か
ら、「算出できるのに算出しないのか」と質問したところ、同じ答えを繰り返し
ていました。
二次処理するからいいじゃないかということなのかもしれません。しかしそれで
は、二次処理後はどの程度の量になるのか、実証試験を踏まえて、その推定値を
示すべきだと思うのですが、もちろんそんなことはしていません。
そのほか、東電が3月24日に発表した、処理汚染水の排出の「素案」には、あい
まいな点がたくさんあります。
たとえば、海洋に放出したときのシミュレーション。
「素案」のp.22には放出量年間22兆ベクレル、40兆ベクレル、50兆ベクレル、
100兆ベクレルの4つのパターンについて、年間放出量ごとにトリチウム1ベク
レル/L以上となる海域が示されているますが、沿岸沿いに数km~数十km、沖合
に0.7~2kmという結果になっています。
しかし、このシミュレーションには数々の疑問が呈されています。
まず、影響範囲を1Bq/L以上としている理由が不明です。
また、初期条件と環境条件が不明。
原子力市民委員会委員、大沼淳一さんは以下のように指摘しています。
「そもそも拡散シミュレーションをする場合には、初期条件と環境条件を明らか
にしてからしか作業することが出来ないが、それが明らかにされていない。日間、
月間、年間を含めた干満、沿岸流、海底地形、流入河川水、年によって変動する
黒潮の蛇行などである。放出される汚染水の水量、放出速度、放流水深、放流口
の形状、水温、密度なども必須の入力項目である。シミュレーション結果は、こ
れらの変数を変化させて、そのケース毎に拡散図が示されるべきである」
こんなに問題点が多いのに、経済産業省は、この「素案」を「東電の見解を示す
もの」として、そのまま経産省のページに載せ、「ご意見募集」の基礎資料の一
つとしています。
その他、東電の「素案」の問題点をあれこれ、以下の記事にまとめましたので、
ぜひご一読ください。
▼疑問だらけの東電・処理汚染水放出「素案」
https://foejapan.wordpress.com/2020/04/29/tepco_osensui/
▼東電の素案はこちらからみれます。
https://www.tepco.co.jp/decommission/progress/watertreatment/images/200324.pdf
▼ALPS処理水 パブコメ・セミナー
〇第3回 5月2日(土)14:00~15:30
内容:ALPS処理汚染水の処分の代替案、本当に環境中への放出しかないのか など
講師:川井康郎さん/元プラント技術者、原子力市民委員会規制部会)
〇第4回 5月3月(日)14:00~15:30
内容:トリチウムの危険性とは
講師:伴英幸さん/原子力資料情報室
〇第5回 5月5日14:00~15:30
内容:ALPS処理汚染水をめぐる議論のポイント
講師:満田夏花(FoE Japan)
ご参加の方は、前日17:00までに以下からお申込みください。
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満田夏花(みつた・かんな)
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