明日:第5回ストレステストに係る意見聴取会@経産省 | 脱原発の日のブログ

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12月8日は1995年、もんじゅが事故を起こして止まった日。この時、核燃料サイクルと全ての原発を白紙から見直すべきだった。そんな想いでつながる市民の情報共有ブログです。内部被ばくを最低限に抑え原発のない未来をつくろう。(脱原発の日実行委員会 Since 2010年10月)

東京の杉原浩司(福島原発事故緊急会議/みどりの未来)です。
22日(木)の9:00~12:00に第5回ストレステストに係る意見聴取会
(経産省本館・地下2階講堂)が開催されます。委員の一人である
井野博満さんが提出されている意見・質問書をご紹介します。ぜひ
ご一読ください。

意見聴取会の案内は以下(保安院URL)にあります。
http://www.nisa.meti.go.jp/shingikai/800/29/005/231222.pdf

平日午前と難しい時間帯ですが、当日でも傍聴はできるようですの
で可能な方はぜひご検討ください。 また、電波の都合で事後になる
そうですが、原子力資料情報室からUstreamの記録動画も見ること
ができるそうです。[転送・転載歓迎]

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ストレステストの基本的問題についての意見と質問
(12月22日意見聴取会での提案)

井野博満

その1:回答の形式について

 例えば、第4回意見聴取会(12月8日)での保安院の回答(資料1-4)
をみると、左欄に私および後藤委員の質問の要旨が2-3行記され、右
欄に回答(保安院の考え方)がびっしり書き込まれている。こういう書き
方は、質問回答として、不適切である。質問説明内容も含めた全文を
引用し、質問内容に逐一、対応する回答を書き込んでいただきたい。

その2:福島第一および第二原発においてストレステストを実施すること
を求めた質問状(資料1-4[井野質問1])に対する回答についての意見
と新たな質問

東電は「図面・資料を探すことが難しい」と言っているとのことだが、
東電社内の品質マネジメントシステム規程[QMS:Quality Management
System、日本電気協会「原子力発電所における安全のための品質保
証規程(JEAC4111-2009)準拠]では、実質業務を実施する主契約者を
含めて技術文書のコピーは各所に保管されることになっているはず。
もし、無ければ、QMS社内規程違反であり、安全管理上の大失態であ
る。書類・図面の保管基準、保管場所、保管期限、部数は具体的にど
のように定められているのか?その実態は?QMSの一環として保安院、
原子力安全基盤機構によるQMS審査、指摘は実施されているのか?

「発電所内の踏査が難しい」という言い訳については、ストレステス
トはシミュレーションゆえ、理由にならない。また、福島第二原発におい
ては、踏査をすることに、何の問題もないはずである。

「相応の期間が必要」とあるが、一向に構わない。柏崎刈羽原発の
ストレステストを急ぐのでなく、福島を優先すべきである。

「東電に膨大な作業を求めることになる」とあるが、主要機器の地震
応答解析等はすでに実施済みである(12月2日東電中間報告書、P31
参照)。今、各電力から出されているストレステスト報告書程度のもので
あれば、視点を変えてその資料を使うことができるはずである。簡潔に
要点を絞れば、それほどの作業量ではないと考える。

福島第一・第二各号機のイベントに関わる機器類の耐震裕度は果
たしてどの程度であったのか?設計強度は、言われている実際の揺れ
あるいは基準地震動Ss(600ガル)に耐えたのか?もし、計算上は耐え
ていたとされていても、実際に破損が起こっていたのであれば、ストレス
テスト手法そのものに基本的な問題があることになる。その点を検証す
べきと考える。特に福島第二原発については、現場を見ることができる
ので具体的な対比・検証ができるはずである。

福島第二原発は、今後の調査・検証のために、最小限の保安活動
を除いて、現場保存をおこなうべきである。保安院から東電への指示を
求める。

その3:原子力安全委員会が求めた「シビアアクシデントに至った場合
の影響緩和策」について

ストレステスト各報告書において、裕度評価のシナリオは「炉心損傷」
で終了している。炉心損傷以降の「閉じ込め機能」については、例えば
大飯3号機報告書では「5.6 その他のシビアクシデントマネジメント(P83)」
にその概要が述べられているが定量的評価が欠落している。

最も重要な格納容器の耐震裕度をはじめ、閉じ込めの多重防護に
係る設備、システムの耐震ならびに対津波裕度が検討されていない。
閉じ込め機能に係る全ての多重防護装置の裕度評価を実施すべきで
あると考えるがいかがか。

また、その防護装置が機能しなかった場合の放射能量、敷地境界
線における数値、敷地内作業への影響対策等々を追加すべきである
と考えるがいかがか。

その4:JNESの公正性・中立性および審査員の利益相反への疑問

総務省「政策評価・独立行政法人評価委員会(岡 素之委員長)」から
枝野経産相に提出された「独立行政法人の主要な事務及び事業の改
廃に関する勧告の方向性について」(平成23年12月9日)には、JNES
の検査業務等の中立性と公正性に関しての大きな疑念が述べられて
いる。例えば、

「繰り返される検査ミスをみても、これまでのJNESは、到底国民の期
待に応えてきたとは言い難く、危機意識の欠如・マネジメントの不在な
ど、組織風土に根差した根本的原因に大きな問題があると指摘せざ
るをえない。」

「検査等の業務を厳格に行うためには、検査員等が原子力事業者か
ら独立し、中立性・公正性が確保されていることが不可欠であるが、
JNESは、検査員として原子力事業者等の出身者を多数採用してお
り、検査の中立性・公正性に疑念が生じている。」

「・・・検査等の業務に従事させる原子力事業者等の出身者を極力低
減させるとともに、検査対象を、出身元とかかわりのない施設に限る
ものとし、国民の信頼を確保するための措置を講ずるものとする。」

これらは、後藤委員による指摘事項(前回資料1-3)がまさに国民の
常識に基づくものであることを裏付けている。

この間の意見聴取会に陪席していたJNESメンバーのうち3名(佐藤部
長、藤本グループ長、福西審議役)が三菱重工業のOBであることが
知られている。過去に原子力発電プラントメーカーで設計、解析に従
事していた人物が、原子力発電プラントストレステスト審査側の中心
人物になる。これは、まさに、総務省「政策評価・独立行政法人評価
委員会(岡 素之委員長)」が指摘した利益相反ではないのか。

「検査」と同等、あるはそれ以上に重要な今回のストレステストにおけ
る審査体制の基本的欠陥を指摘せざるをえない。JNESの審査員は、
最低限、「出身元が関わった施設の審査には参加させない」ことを求
める。今回の審査に関わる方々の出身元をほかのメンバーについて
も明らかにしていただきたい。

その5:意見聴取会委員の利益相反の疑いについて

 意見聴取会委員は、その就任に際し、その役割が利益相反に当た
らないかどうか、「企業、団体等に関係する活動概要」(様式1)および
「企業、団体等に関係する活動内容」(様式2)を原子力安全・保安院
長に提出している。各委員について、その記述内容を公表していただ
きたい。

 報道によれば、山口彰委員は、ニュークリア・デベロップメントか
ら「受託研究」の名目で3,385万円の研究費を受け取っている。ニュー
クリア・デベロップメントは、現在審議中の大飯原発・伊方原発・泊原
発などの主製造メーカである三菱重工の関連企業である。これが事
実であれば、利益相反の事例に該当する可能性があり、研究者倫
理としても委員にはふさわしくないと考えるが、保安院の判断をお聞
きしたい。