中国が尖閣諸島周辺海域にまで防空識別圏を設定する等、日中間の緊張がかなり高まってきています。
我が国においては、米国の対中姿勢、さらには尖閣諸島が中国により軍事占領された場合の米軍の対応が気になるところであります。
筆者は、そもそも米国はこの問題に関してはあくまで中立、むしろ中国寄りの姿勢を続けるというように見ていますが、そのようなある面主観的な見解は置いておいて、日米安保条約(日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約)に立ち戻って、客観的に述べてみたいと思います。
結論から言うと、「日本が武力による侵略を受けても、自動的に米国が日本を守るようにはなっていない」ということです。というか、そのような約束事は記載されていません。
全文はこちらです。http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/hosho/jyoyaku.html
初めて全文をご覧になられる方も多いかと思います。わずか十条の条約です。
第三国からの武力攻撃があった場合の対応として、一番重要となるのは第五条前半です。
「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処するように行動することを宣言する。」
まず、「日本国の施政の下にある領域」ですが、尖閣諸島については、日本側からすれば、当然、該当領域ですし、施政権については米国も認めています。ただし、米国は日本の領有権については明確に認めておらず、曖昧な態度をとっています。なお、施政権とは立法・行政・司法権が及ぶということで、領有権とは財産権つまり領土であるということです。
次の「いずれか一方に対する武力攻撃が」は問題ないでしょう。例えば、中国が尖閣諸島に武力行使した場合のことです。
問題となるのは、次の「自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め」です。「自国」とは、日本と米国の双方を指しています。つまり、日本が攻撃を受けても、米国自身が米国の平和及び安全を危うくするものであることを認め(判断)なければ、米国は行動を起こさなくても良いのです。
では、次の「自国の憲法上の規定及び手続に従って」ですが、米国の憲法では戦争の規定はどうなっているのでしょうか
アメリカ合衆国憲法では、大統領の決定で戦争をはじめられるいわゆる戦争権限を明示している条文はありません。他方、合衆国憲法1条8節11項に「宣戦布告権」の規定があり、連邦議会で武力行使の権限付与に関する決議案が可決されると大統領は遂行できる仕組みになっています。つまり、当然ではありますが、議会の承認手続きが必要なのです。
そして、普通に考えれば、本国から遠く離れた尖閣諸島が中国から攻撃されようとも、米国本土は危機感を持たないこと、また、可能性は非常に低いですが、大統領が日米関係を優先し、武力行使を実行しようとしても、国民に直接利害関係のない極東の領土紛争に対して、米国議会が承認することはあり得ないと考えます。
したがって、日米安保条約は尖閣諸島を守る保障にはなり得ないのです。