部屋の中にいると外の寒さがよくわからない。
朝のニュースを見ながら、今日は寒そうだなとは思うものの、それがどの程度か実感できないのだ。
いつも通りの身支度を済ませ、ドアを開けるとニュースで言っていた通りの気温が待っていた。
しまったと思いつつも引き返す気にもなれず、惰性で自転車にまたがってしまう。
明日からはモモヒキの出番。
いよいよ長い冬が始まる。
***
寒さで消耗した身体に残業は辛く、今日は外食することにした。
麦とろご飯を食べさせてくれる定食屋に、何ヶ月かぶりに行ってみる。
その店のマスターはたぶん70は過ぎていると思われるのに、
いつ見ても肌つやがいいのは麦とろを毎日食べているからだろうか。
そんな印象を持っていたマスターの顔が今日は赤い湿疹に覆われていた。
カウンター越しなので凝視するわけにもいかず、それでも気になってちらちらと見てしまう。
時折痒そうに目の上をかいている時に見える手のひらや、
白い割烹着の袖口から覗く手首のあたりも赤くなっているのを見て、何かの病気なんだろうかと思う。
その後はいろいろな想像が頭を巡り、食事がなかなか進まない。
バラエティー番組を見ながら笑っている常連客と、おかみさんのリアクションが大げさなもののように感じる。
笑っていないとやっていられないという風に見えてきてしまう。
今度来る時には治っているとよいなと思いつつ店を出る。
いつもなら「ありがとうございますぅ」と言ってくれるマスターは、
カウンターの中でしゃがみ込んだままだった。