正義をテーマに しばらく書き続けてみようと思う
彼の生き方は 正義と理想を求め続けた人生だ
彼とは物心がついたときから いつも一緒に遊んでいた
お互いの家は目と鼻の先 幼稚園から大学までおなじ道を歩き
社会人になってからも 月に数度 酒を酌み交わす終生の友だ
学生時代 彼は眼を輝かせながら いつも理想を語っていた
人々を幸せにできるような仕事に就き 自らの人生を全うしたい と
大学を卒業して 彼は大きな企業に就職して販売部門に配属された
誰もが知っているような 有名な製品を扱う企業だ
それらの製品の販売に携わることで
多くの人々に 幸せと満足をもたらせることができる
彼は 夢をふくらませていた
しかし 高度成長期の当時は
多くの会社が当たり前のようにそうだったのだが
今でいうブラックな職場だった
特に 彼が配属されたのは 売上一辺倒の部署だった
月末なのに 目標の売り上げに達しないこともしばしば
足を棒にして販売店をまわり
精根つきて深夜に営業所に戻ると 上司からは罵倒・恫喝された
彼は そんな仕事がつくづく嫌になってしまった
誰もが知っているようなすばらしい商品を販売できるという
やりがいと充実感を夢見ていたのだが その夢は打ち砕かれた
自分は もっと人々を幸せにできるような仕事
人のために尽くすことができるような仕事に就きたかった
彼は 酒を飲むたびにそう言っていた
終電で帰る毎日だったが 彼は猛勉強を始めた
そして 公務員試験を突破し 地方公務員に採用された
彼の眼が ふたたび輝きはじめたのがこの頃だ
自分が生まれ育った 愛する町に恩返しができる と
役所は9時-5時だが
彼はいつも深夜まで残って仕事をした
昼間は関係部署をまわり 人脈の形成と仕事の調整に専念して
皆が帰宅してから その日の事務処理にあたる毎日だった
長時間に及ぶ勤務の日々だったが 彼の心は満ち足りていた
予算枠があるため 残業代も満度に支給されなかったが
彼には そんなことはどうでもよいことだった
そうした仕事を何年も積み重ねて 彼は課長職に昇進した
もちろん責任は重くなるが
これで 上からの命令ではなく 自分の思うように仕事ができる
市民のために思いっきりやってやろう
その頃の彼の眼は 一段と輝いていた
つづく