やがて彼は教育委員会の社会教育部に配属された
 そのときも 彼は熱く語っていた

 「教育には 学校教育部門と社会教育部門があるんだ
 学校教育は言わずもがな 子どもたちを育成する重要な取り組みなんだけど
 社会教育も これに負けず劣らず重要な取り組みなんだよ」 と

 戦後 見渡す限りの焼け野原となった日本
 社会インフラや住宅など 物理的な復興はもちろんのこと
 荒廃し すさんでしまった人々の 心の復興が真に求められた時代

 当時 文部省の課長であった寺中作雄が提唱した「公民館構想」について
 彼が 何度も何度も語ったのが忘れられない 

 そして私も 寺中の著作「公民館の建設」を読んだ

 公民館をつくろう
 この焦土と化した日本の復興のためには 
 人々が集い さまざまなことを学び 自らを高めていくための場所が必要だ
 そして そこで お互いが一身の利害を超えて切磋琢磨し 協力し 話し合い助け合いながら
 日本を ほんとうの意味でのすばらしい社会
 いわゆる ほんとうの民主主義社会に 復興させていこうではないか

 そういう取り組みが社会教育なのだ 

 戦後何十年も経ち 豊かな暮らしが当たり前になった今
 自殺や孤独死、児童虐待・育児放棄などの社会問題が跡を絶たない
 人が自らを高め 人と人が協力し 助け合える社会が実現するならば
 このような深刻な社会問題は起こることはないのではないか
 
 戦後復興に大きな役割を果たした寺中作雄の精神は 今も忘れてはいけない 

 東日本大震災で壊滅的な被害を受けた ある地域のこと
 自分の家の再建よりも まず公民館を再建しなければならない という地域があった
 公民館がなければ 皆で話し合うこともできない 

 励ましあう場所が必要だ
 皆で話し合わなければ 何からどうしていけばよいかすらわからない
 地域を復興させるためには 公民館という我々の居場所がなければ何も始まらない
 それほど大切な場所が公民館なのだった。。。。

 そして さまざまな問題が起こっている現代こそ
 大きな社会問題を 住民と行政が一体となって克服し 
 この日本を より心豊かで幸せな国にしていくことが大切だ

 寺中の著書のように 彼は いつもそう語っていた

 ところが これに対して大きな逆風が起こった

 それまで 職員を経験した叩き上げの人が 歴代の市長に就任していたのだが
 新しく 民間出身の若い市長が就任した
 改革と行革を公約にした人だった

 さまざまな改革案のなかで 
 公民館についても民間委託化を進めるように 命令が下った

 しかし 彼は声を大きくして これに反対を表明した

 利潤追求が目的である民間事業者に委託した場合 
 窓口などでのスマートな市民対応は期待できるだろう
 そして 間違いなく経費節減にはつながるだろう
 しかし 行政が住民と話し合いながら この地域をよくしていく 
 という取り組みには  決してつながらない

 このまちを 人々がいきいきと暮らし 活気あふれる幸せなまちにしていくためには
 市民の皆さんのまちづくりへの参画と  

 市民から信託を受け このまちを心から愛している  我々行政職員の力こそが必要なのだ と。。。

 

 

 

 また つづきます