☆先日10年振りに、我が子の遺した品々を再度点検していた時、大きなビニール製の買い物袋の中に、
よれよれになった二つ折りのA4サイズの白い紙が見つかりました。それを開いて見ると、何か詩のよ
うな文章が記してありました。詩題は「走り出したら止まることも」。
本日は、この詩を掲載します。
「走り出したら止まることも」 伊達風人 作成日未定
仕事帰りに波立つ海は
白い錠剤を私の足元に投げる
そのとき
私の右足はアクセルを踏んで
カーブを立ち上がろうとしていた
雪みたいに張り付いて取れない
随分前の錠剤なんだろう
バラックのすき間から風が吹く
町医者の細い指先から
処方された
駐車場なんて気の利いたものはなくって
草原に自転車を止め
土足のまま
受付の窓口を覗く
波ばかりが押し寄せてくる小さな部屋には
窓はなかった
ひとつきりの
窓口に放りこんだ
呼気
白い波間に揺られてドアを出ていく
「また
「ひとつ
「見送って
草原の木ぎれは
あてのない旅に出てしまった
海がいまも続いている
アクセルに右足を固定して
溺れないよう
掻き分けた
肉屋の駐車場に車を止めたら
走って揚げ物を買いに行く
地
に波
しぶき
蹴散らし
走れ
走れ
はしれ
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(以上)