みなさんこんにちは。
酒井根走遊会です。
今回は『意識的に刺激しない能力』というテーマでお送りします。
多くのランナーが、“トレーニングキャリアを積み重ねての停滞”というものを経験したことがあると思います。今回の記事が“停滞を打ち破り、一歩先へ進むヒント”に。そして『キャリアを積み重ねてからのトレーニング』の一つのサンプルになればと思いながら書きました。
今回の記事では、結論から言うと、
“レースに対して重要な能力は最後まで刺激しない”
という方法が今まで越えられなかった壁を越えるポイントになります。
なぜそのように考えるのか、是非最後まで読んでみてください。
目次
1 体の慣れと適応
2 トレーニング計画 “刺激しない能力“を決める
3 基本的な能力の向上 レースの刺激での向上
4 トレーニング計画
5 ピークの持続できる範囲と休養
※今回の記事は後編(4・5)です。 前編(1~3)はこちらから
4 トレーニング計画
トレーニングの計画として多くの選手が、年間計画・半年計画(春夏・秋冬など)・4か月計画(マラソン・HMなど)を計画すると思います。
その中で、
『ワークアウトは週2回、ロングランは週1回、ジムトレは週2回、しなければいけない。』
なぜなら参考書や雑誌にそう書いてあるから。今までそうしてきたから。
という先入観を持っているランナーは多いと思います。
しかし年間・半年・4か月など大きな範囲でトレーニングを見て、大きな括りで必要と思われるトレーニングを設定して能力を刺激していけば、“週間“という短いサイクルの中での回数に捕らわれずに、トレーニング計画を進めることができます。
以下はその参考です。
① 月ごとの計画
半年(秋・冬シーズン)
4月 練習:スプリント・無酸素ペース・ロングラン レース:なし
5月 練習:スプリント・無酸素ペース・ロングラン レース:マラソン
6月 練習:無酸素ペース・テンポ走・ロングラン レース:ハーフマラソン・クロカン
7月 練習:10kレースペース・テンポ走 レース:10㎞クロカン
8月 練習:Vo2・テンポ走 レース:5㎞・10㎞
9月 練習:10kレースペース・テンポ走 レース:10㎞
上記のように月別に刺激する能力を、出場するレースを計画したとします。
② 週の計画
ワークアウトの頻度
中強度を週1回(週末に1回) + ロングラン
高強度を週1回(レース) + ロングラン ※中強度をレース前に1回
週の計画は、月の計画ほどの具体性を持たせずに柔軟に取り組めるようにします。
それは自分の生活やトレーニングによる疲労と回復の時間に対しての“ゆとり”を考慮して取り組む必要があるためです。
例えば、6月中のトレーニングで、土曜日にテンポ走、日曜日にロングラン。
もしくは、土曜日にロングランの中でテンポ走。そのほかのトレーニングの軽い日の終わりに200mなどの流しで無酸素ペースの動きなどを入れておけば、十分に必要なトレーニングを行えていると考えます。
そのように『必ず何曜日には何のトレーニングをしなければいけない』という考えから離れて、その月や期間ごとに必要とするトレーニングをできるときに行えば十分に準備が可能です。
③ クロストレーニングの頻度
ウェイトトレーニング
スプリント
モビリティ
最近では長距離の選手でも『ジムトレ』を行う選手が増えてきました。ジムでのトレーニングは“走る”という運動の基礎を支えるうえで重要です。その要因として筋力・可動域・バランス・ランニングフォームなどが関わっているためです。
こうしたトレーニングは、レースが迫ってきた時期に行うのではなく、レースがまだ遠い時期に時間をかけて取り組むことが必要です。その理由としては、“走る“運動の基礎を支えるトレーニングですが、”走る“運動とイコールで結ばれているわけではないので注意が必要です。ランニングフォームに関しては、即効性がありますが、レースの時期にはレースの動きを長時間発揮できるように準備しておく必要があります。
その準備は、体を自由にコントロールできる能力をレースから離れた時期にじっくりとトレーニングできるかどうかにかかっています。
5 ピークの持続できる範囲と休養
さて、ここまで壁を越えるためには
“レースに対して重要な能力は最後まで刺激しない”
という理由を書いてきました。
ここまでの流れでレース期を過ごしていると、ワークアウトやレース毎にレベルアップを感じることができます。
こうした状態においては、”もっとレースペースでの練習を継続したい”・”レースを繰り返したい”と思うところです。
しかし最初に述べたように、人間の体は刺激に慣れていきます。そのため、ある程度ピーク期が続いた後は、パフォーマンスの向上は停滞し、少しずつ低下していきます。
ここで大切なことは、レース・練習に一区切りつけて、じっくりと休むことです。
休養することで、精神的・肉体的な疲労が回復するだけでなく、
“体が刺激から解放される”
ということが起こります。刺激から解放されることによって、一時的に今まであった能力はなくなってしまいます。
しかし、休養後にトレーニングを始めると体は“新しい刺激”としてトレーニングを吸収していくことができます。これはトレーニング効果を高めるうえで非常に重要なことです。
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停滞している壁を越えるには、
今まで繰り返されてきたトレーニング計画と習慣を振り返り、今までにない刺激を体に与える方法を考え実践することがカギになります。
今回紹介した例は
・ 新鮮な状態でトレーニングを開始する
・ 基礎的な能力を頻繁に刺激する / 専門的な能力を意識的に刺激しない
・ レースの刺激を与えてレベルアップする
・ すべての刺激から解放される
一つの例にすぎません。
違った場所ではまた違った方法もあるでしょう。長い間、同じ方法を繰り返して限界と決めてしまうよりも、失敗を恐れずに新しい方法を実践してみてもよいのではないでしょうか。
最近ではYoutubeなどによるトレーニング方法を参考にしている方も多いと思います。そのほか書籍やインターネット上で多くの方法が紹介されています。これらは多くのコーチや選手が様々な方法にチャレンジした結果です。こうした情報を紹介してもらっていると思って眺めてみると、自分が見落としていたヒントなんかもあったりするかもしれません。
また、今までをやめて新しい方法で取り組んだ時、長い間結果が出ないこともあります。そんな時期にはやはり、“今までが良かった”と思うこともあるでしょう。しかし新しいことは私たちの周りに無数に存在しています。ただ過去にすがるのではなく、新しいことにチャレンジしていく未来の方が、同じことを繰り返すだけの競技生活よりも楽しめるのではないかと思います。