基本性能 ”本来持っている能力” | 酒井根走遊会のページ

みなさんこんにちは。

酒井根走遊会です。

 

本日は基本性能というテーマでお送りしたいと思います。

 

中長距離ランナーとしての基本練習

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これまで様々なトレーニングについてブログで紹介してきましたが、結局陸上中長距離の基本はこの三つだと思います。トップランナーのトレーニング全体の約75~85%を占めるトレーニングであり、もしかしたら中学生やビギナーランナーにとってはレースを除けば、ほぼ100%に近い割合のランナーも多いのではないでしょうか。

今回このブログでは、“基本練習”(ベースとなる練習)と個人の“基本性能”(本来持っている能力)を考察していきたいと思います。

 

 

“基本性能“ 本来持っている能力

 

『あいつJogしかしていないのに速いな。』

『○○はJogしかしていないのにこの間の記録会8分30秒だったらしいよ。』

 

こういった会話はチームでトレーニングをしていると様々なところで聞かれます。

しかし会話に上がった選手が、その後Jogから専門的なトレーニングに上がった時に、調子が悪くなったり、故障をしたり、慢性的な疲労を抱えたり、練習が十分に吸収できなかったりして、Jogしかしていなかった状態よりもパフォーマンスを落とすことも至る所で見られます。なぜこういったことがみられるのでしょうか?

それには様々な要因が考えられますが、もっとも大きな要因は選手の“基本性能”と後から足した(足そうとした)開発能力がうまく合わなかったことが原因と考えられます。

※この点に関しては長くなりそうなので、詳細は次回以降にまとめたいと思います。

 

今回注目したいところは、“基本練習”だけでその選手にとって調子がいい(パフォーマンスがある程度発揮できる)状態になるということです。

“基本練習“、つまり中長距離選手としてのベースを作る練習というのは、ある程度負荷が一定であり、”疲れて明日はもう走りたくない”・“休養が欲しい”といった状態には陥りにくいです。それは毎日のトレーニング負荷がおよそ50~60%程度の努力感で推移していて、練習のストレスが一晩の休養でほぼ回復するためです。

このように中長距離選手として、同じ基本練習を毎日繰り返してもフレッシュな状態でいられる時にその選手の“基本性能”が良く見えてくると思います。

ある選手は400mが非常に速く、またある選手は軽くテンポペースで走ってみても10㎞程度は難なく走れてしまったりします。

さらに言えば、この状態である程度“選手の力量”も見えてくると思います。目の肥えたコーチ、経験の多いコーチには、この選手はすでにこのレベルなので段階を踏めばこのパフォーマンスレベルになる。という見立てがわかるところでもあります。

 

中長距離ランナーの原点として

 

多くの選手が、時にスランプという壁にぶつかります。もしくは長引く故障、慢性的な疲労などもあります。

これらは“強度の高いトレーニングを行いたい“・“前より高いパフォーマンスを発揮したい“という思いが強ければ強いほど陥りやすいことです。

しかし、基本練習のみで50~60%程度の負荷(一晩寝たら次の日はフレッシュな状態)のトレーニングを継続している時にはあまり見られないようなことでもあります。

つまり、どのレベル選手でも、もし今現在“パフォーマンスの慢性的な低下”を感じているようであれば、現在のトレーニングを一度やめて、“基本練習“に戻る期間が必要です。”基本練習“の期間を数週間過ごせば、自分の”基本性能“を感じられる時が必ず訪れます。そして心も体もフレッシュな状態で少しずつ許容できるトレーニング負荷でパフォーマンスレベルを向上させていくことができるでしょう。

 

“基本性能“とベースの形

 

多くの選手にとって、“基本性能”が同じということはないでしょう。もしかしたらチームやライバルで似ている選手もいるかもしれませんが基本的に違います。それは前述したように、400mなどの最大下スピードが強い選手もいれば、LT値が既に高い状態の選手、もしくはピュアスピードがあったり、無酸素性作業閾値での運動に強かったりと様々です。

 

さらに選手は“ベースの形”も違います。“基本性能“の土台が横に広い選手は、その上に多くの能力を足していき高いピークを作ることができます。こういった選手は吸収力があり、伸び代が多い選手ということになります。

対して“基本性能”だけで大きな△を作っていて、その土台の上乗せられる能力はほんのわずかという選手もいます。こうした選手は吸収力が少なく、伸び代が少ない選手と言えます。

基本ベースの形の違いのイメージ

 

どちらの選手にもトレーニングを積み上げていく上で長所・短所があり、

前者では伸び代が多く、多くの練習に取り組んでパフォーマンスを向上させられる点が長所です。

短所は、トレーニングを効果的・段階的に行わなければスランプなどに陥りやすい点です。またコーチ・選手ともに強度の高い練習での飛躍が、選手の吸収力の量(トレーニング負荷の許容量)の判断を鈍らせます。その結果、大きなパフォーマンス低下の連鎖に繋がってしまうことです。

後者ではすでに完成形のようなパフォーマンスを基本練習だけで得られるため、無理に負荷の高い練習に挑んでいく必要がありません。バランスの良い基本トレーニングを継続して、狙ったレースの前にレースの距離に体を適応させるだけで良いパフォーマンスが発揮できます。

短所は、ある程度完成された状態である為に様々なトレーニングを行えば“トレーニング内容を行う”ことは可能です。しかしその大きな負荷に対しての吸収とレベルアップはあまり見込めません。そのため、吸収内容よりもトレーニング内容とそれを超えるだけに注意が行き過ぎると、負荷と回復のバランスが崩れてしまいます。こういった選手はハードなトレーニングを行っている時よりも、基本練習だけの時のパフォーマンスが優れている、という状況がよく見られます。

 

 

まとめ

 

今回は“基本性能”というテーマでお送りしました。

実際にこの点はコーチよりもまず、選手自身が自分自身をよく分析して気付くべきポイントです。しかし現実に、多くの選手は様々なトレーニングを行った上に今の自分があると考えているので、常に様々なトレーニングで刺激を与えることによってしか成長はないと考えています。

多くのトップランナーが意図的に年間計画の中で休養期間とその後の”基本練習”期間を設けており、その長さは選手によって様々なのは、そうした自己分析の結果なのではないかと思います。特にコーチをつけていないランナーはピークを引き延ばし続けるようなことはせずに、ピーク期が終われば休養を取り、基本練習に立ち返ってそこに多くの時間を割いています。そのシーズンの自分の基本性能をよく確認して、今シーズンに上げていける量・負荷を確認しているのだと思います。

コーチの元で長い間トレーニングを積んできた選手、チームの流れでトレーニングを継続してきた選手にとっては、もし休養期間があったとしても“基本性能”を確認する期間を意識できることは少ないです。それはトレーニングが迫ってくる緊張感やストレスも影響しているかもしれないです。こういった場合にはコーチが負荷の高い練習から選手を遠ざけて、基本練習だけで走れる状態、“基本性能”を発揮できる状態を作って選手に自信と分析する時間を与えることが重要です。

子供の頃に走り始めたときは、すこし練習すればこれくらいで気持ちよく走れた。

という感覚に似ているかもしれません。そのの時に、“ロングラン”・“インターバル”・“レペティション”、はたまた“走り込み”などは行っていなかったことと思います。

バランスの良い“基本練習”が自分の“基本性能”を顕著にしてランナーとしての原点を思い出させてくれると思います。