みなさんこんにちは。
酒井根走遊会です。
今回は、
『夏・冬 外で走れない時期は”ジム”へ行こう』 第四弾 上半身
でお送りします。
中・長距離のランニングにおいて上半身のトレーニングはランニングの安定性を向上させるうえで非常に重要です。
今回は上半身を安定させるトレーニングをいくつか紹介します。参考になりましたら幸いです。
私の上半身のトレーニングは背中に集中したものが多いです。下半身と同じく上半身でも体の背面の筋肉群が前へ進む推進力を得るために有効であると考えるためです。また≪好きなトレーニングであるから≫ということも大きく関係しています。
ランニングにおける上半身の能力で≪肩甲骨の柔軟性≫というものがよく言われますが、実際によく勘違いしている人が多いのは肩甲骨の可動域が大きければ大きいほどいいというものではありません。
ランニングは手足の先端が体から遠く離れた分だけ、戻すことに力と時間を必要とします。肩甲骨の必要な可動域は、股関節の伸展とのバランスの上にあります。股関節の伸展が小さいランニングフォームでありながら腕を大きく振ることだけ意識してもタイミングが合わずうまく推進力を得られません。もしくは股関節の伸展域が非常に広いランニングフォームでありながら、(肩甲骨の可動域が狭すぎるため)腕をタイミングよく振れない場合においては脚に振り回されて上半身のバランスを失いやすいと考えられます。
つまり何が言いたいのかというと、現在のランニングフォームもしくは理想とするランニングフォームをよく分析してバランスよく能力を向上させなければ競技力は向上しないということです。
ナイキヴェイパーフライの登場で、接地時に体が反発するポイントというものを意識すること(ランニングエコノミーを向上させるということも含めて)は多くのランナーにとって非常に一般的になってきました。※私はナイキヴェイパーフライシリーズを履いたことがありません。友人の感想として客観的に理解したことを参考にして書いています。
腕振りに関しても実は、接地時の反発のように自然に跳ね返ってくる(人によって感じ方は違うと思いますが、最適な可動域の発見と無駄のないランニングフォームとの連動を感じることがある)ポイントが存在します。
こうしたポイントを発見するために、必要最低限の筋力を養うこと、関節可動域を広げること、意識的に腕を振っている角度をコントロールできるようになることは重要です。
ヴェイパーフライが接地ポイントの発見に役立つものであるとすると、道具という外的要因での発見が下半身においては可能になったのかと思います。
上半身は中長距離のランニングフォームにおいて最も受け身な部分なので見落としがちですが、改善ポイントを発見すると接地ポイント同様に大きな意識改革に繋がります。
これは最も受け身な部分を意識的にコントロールできるようになることで、ランニングフォームにおけるイメージが大きく変わることは間違いないと思います。
その第一歩として、上半身の意識的なコントロールを目指して今回の上半身の筋力トレーニングを読んでいただけると幸いです。
※ちなみにここで紹介するトレーニングを突き詰める必要はありません。脳に必要な刺激を与えるだけで充分に効果があります。
#1 懸垂
・ 背中に非常に有効なトレーニング
・ 肩幅よりやや幅広でバーを握る
・ 胸をバーに着けるイメージで体を挙上する
・ 体を弧の字に保ったままおろす
ポイント:上がる時・下がる時どちらの場面においても、≪背中≫の筋肉を使っていることを第一の意識として、≪腕≫の曲げ伸ばしという運動は補助的なものという意識で行うと良い。
#2 パワークリーン
・ デッドリフトの開始姿勢
・ 挙上開始時はお尻が膝よりも少し下がったところ (もしくは大腿部が地面と平行)
・ 背中をまっすぐに保ち、前を見る
・ 息を吐いて体幹部を固める
・ 下半身の力で勢い良く上げる(初動では大腿四頭筋も少し使う)
・ バーが腰の位置まで上がるタイミングで腰を伸ばす力でバーを加速させる
・ 腕で少し引き上げるとともに、手首を返して、肩・鎖骨の上に乗せる
※腕は手首・肘を返すだけで、バーの直線的な動きを意識する
ポイント:パワークリーンは特に≪連動性≫というものを意識して行います。実際にはこれを上手にできるようになったからといって脚が速くなるわけではありません。しかしランニングフォームとは正しいタイミングがかみ合って速さと強さに繋がります。タイミングがかみ合う瞬間というのをイメージするトレーニングとして行うと良いでしょう。さらにこのトレーニングでは下半身からコア・背中まで多くの関節と筋肉を使います。そのため非常にバランスの良い体力トレーニングといっていいと思います。
#3 腹筋
・ 肩と首で倒立する
・ 肩と首のみベンチにつけたまま脚をゆっくりおろしていく
・ ベンチの足の部分を強く握り、体を弧の字にして脚を下ろしていく
・ 足先が頭の高さよりやや下がるところまでおろす
・ 体のこの字を保ったまま倒立姿勢に戻す
ポイント:このトレーニングのポイントは重心です。脚を伸ばして重いものが遠くに落ちていくとコアに大きな負荷が掛かります。脚を曲げてみると負荷が軽減します。ランニング動作でも同じです。遠くに行ってしまったもの(体の中心から離れた手足)を戻すためには大きなエネルギーが必要であることが理解できます。そして戻すためのコアの強さも養うことができます。コアのトレーニングに関しては、以前紹介した片足のデッドリフトやスクワット、今回のパワークリーンで意識的に取り組むことをお勧めしますが、更に強い負荷を求める人は是非挑戦してみてください。
いかがだったでしょうか?上半身のトレーニングは下半身との連動性を高めるためです。そのため上半身のみの動きに執着してしまうとレーニングを多く取り入れることはバランスの不均衡を生じさせます。
一つ一つのトレーニングで≪何のための筋力レーニンなのか≫を明確にして取り組む必要があります。
また今回紹介しただけでなく、ジムトレーニングに一貫することは≪ランニングという動作を考える≫ということです。ランニング動作中にはうまくコントロールできていない部分や習性が難しい部分に対して、ランニング動作をしないところで心を落ち着かせて考えてみるところに、ジムトレーニングの最大の利点があります。
ジムトレーニングで考え過ぎたり、量を増やしすぎたりすると、走るトレーニングに支障が出ることもあります。
必要な分だけを自分のタイミングで効果的に行っていきましょう。