『糖代謝』『脂質代謝』 ”高強度トレーニング”と”マラソン” | 酒井根走遊会のページ

みなさんこんにちは。

 

酒井根走遊会です。

 

本日はランニングにおけるエネルギー

 

『糖代謝』・『脂質代謝』 “高強度トレーニング”と“マラソン”

 

というテーマでお送りします。

内容としてはどのような時に『糖代謝』『脂質代謝』になるかというよりも、

練習やトレーニング計画の目的に沿った『糖代謝』『脂質代謝』の状況の作り方と利用法についてです。

 

『糖代謝』『脂質代謝』に関して簡潔にまとめられた記事がありましたので、参考までにご紹介します。※参考記事

 

この記事を書くにあたって、きっかけになったワークアウトをご紹介します。

6月19日水曜日

ワークアウト開始時間12時

内容:8㎞テンポ(3’12”/km) 4×1㎞(3’04” R60”) 8㎞テンポ(3’12”/km)

実施:6㎞テンポ  4×1㎞ 2㎞-1㎞-1㎞ 

という結果でした。前回と同じくチームメイトのダンのゴールドコーストマラソンに向けてのサポートです。

もう少し走れると思ったのですが、思ったよりも早く『35㎞の壁』にぶつかり、練習後は完全に動けなくなってダンに家まで送ってもらいました。

ダンの練習の目的は、『マラソンペースの安定化(エコノミー向上)』

私の練習の目的は、『グリコーゲンの枯渇と脂質代謝の利用』

でした。

その為、私は前日夜7時に夕食を済ませたのち、朝は水のみ、10時ごろにコーヒーを一杯飲みワークアウトへ望みました。

結果、最初のテンポからかなり限界ぎりぎりで、1㎞で完全にグリコーゲンが枯渇し、後は動くだけ体を動かすといった内容となりました。

これを行った目的は、急遽6月30日に行われる地元ウェリントンでのウェリントンマラソンへの参加が決まったためです。

中距離ランナーになって早1年。マラソンに向けた練習は全く行ってこなかったのですが、やはり出るからには勝ちたい。

そしてどうすれば、マラソンの練習を中距離の練習の中でも行えるかということを考えて実施してみた結果です。

 

結論、『マラソン練習はマラソン練習で』という方法が最も効率的で、リスクを回避し、目標を達成する近道、と感じました。

やはり最近よく耳にする『時短練』・『走り込まないで自己ベスト』などは少し無理があるようにも思いましたが、それぞれ何らかの意図があって行っているのだと思います。

 

今回は、私の意図して試してみた”高強度トレーニング”や”マラソン”の『エネルギー代謝』に関するまとめです…

皆さんの練習のヒントになりましたら幸いです。

 

 

①     朝練で痩せる

よく言われるのが、朝ランニングをすると痩せる。ということです。

これは、朝は必然的に『脂質代謝』の状態になっているためです。夕食後から食べ物の摂取をしないまま、朝起きてそのまま何も食べずにランニングに行くことによって血糖値が低い状態からスタートします。『糖のエネルギー代謝』をカットしてそのまま『脂質のエネルギー代謝』に入る為、『朝ランニングは痩せる』ということになります。

つまり、朝ご飯を食べてから朝練習に言った場合、『朝ランニングで痩せる』は空腹状態で行うほどの『脂質代謝』ではないため、午後に練習を行うのと大して変わらないかもしれません。

 

 

②     朝筋トレは低効果

筋力トレーニングというのは『高強度』運動になります。呼吸で代謝されるエネルギーではなく、体の中に貯蔵されている『糖』をそのまま利用してエネルギーを作ります。

その為、朝筋トレを空腹状態で『糖』補給されていないまま始めると、たんぱく質が喪失して筋肉は痩せてしまいます。

 

※ 高強度トレーニングとエネルギー代謝参考記事

 

上記の①・②から見えるキーワードは『朝』・『空腹状態』です。食後10時間ほどの経過と空腹状態を作り出せれば、午後練習でも同じような内容になるというわけです。

 

こうした状態を利用して目的に応じたトレーニングが可能になってきます。

早朝のレースでは、糖質中心の食事の過剰摂取による血糖値スパイクによる低血糖には注意が必要。

 

 

例1、   マラソントレーニング

マラソンのトレーニングは『筋持久力』を向上させることと『糖代謝』『脂質代謝』を体がうまく利用できるようになる必要があります。筋持久力に関しては、低強度で長い時間体を動かしてトレーニングする方法が有効です。

さて、『糖代謝』と『脂質代謝』に関してはどうでしょうか?マラソンでは35㎞で壁があるとよく言われます。これは何の壁でしょうか?おそらく『糖代謝』で蓄えられていたグリコーゲンが枯渇してしまい『脂質代謝』に切り替わる状況になるためだと考えられます。

けれども35㎞の壁にぶつかっても、ペースが落ちるだけでゆっくり走れば実際にはゴールまでたどり着ける場合がほとんどです。なぜゆっくりでは走れるのでしょうか?

マラソンでもハーフマラソンペースに近づくほど『糖』の利用が大きくなります。

大きいパワーを素早く出すには『糖の利用』が最も速いです。対して私たちが普段行う『JOG』というランニング。1㎞5分~4分前後だと思いますがこのランニングでは強度が非常に低いため『脂質代謝』が基本的に体内で活躍しています。

 

少し省略して書くと、スピードのない選手やマラソンペースに対してのエコノミーが非常に悪い選手にとっては、『糖代謝』の限界に30㎞~35㎞あたりで到達してしまい、そのあとは脂質を利用する低強度の動きしかできなくなってしまいます。

 

対して、スピードのある選手やマラソンに対してエコノミーが非常に高い選手は、『糖代謝』も多く利用されますが、その影で『脂質代謝』からもエネルギーを得て、42㎞を最後まで一定のペースで走ることができます。

 

さて、前置きが長くなりましたが、この『糖代謝』『脂質代謝』を目的に応じて引き出せる状態を作っておけば、マラソンのレースで起こりうる状態を練習でも行っていけます。

・     『脂質代謝』ペーステスト

空腹状態で行う朝練習のように『脂質代謝』を最初から利用するような練習をトレーニングの場に作り出します。実際朝練習は夕食から10時間ほどしか開いていない、またそのほとんどは睡眠であるので、エネルギーは枯渇するほど使われていない。これをさらにそのまま時間をおいて昼くらいまで空腹状態を持続させて高強度のワークアウトを行います。これにより体中のグリコーゲンはほぼ枯渇します。ここから20分ほど持続可能なペースで走ることに挑戦すると、35㎞を過ぎたマラソンの状態を『35㎞マラソンペースで走らなくても』体感することができます。

この練習のメリットは、『トレーニング量を増やせない人』がマラソンに挑戦する場合に効率よくマラソンでの『糖代謝』の壁まで到達できることです。

『トレーニング量が増やせない人』とは、

・距離を増やしすぎると故障しやすい人

・時間的な制約で練習量が確保できない人

などが挙げられます。

デメリットは、『効率よく』と記しましたが、どの程度の空腹状態か、どの程度の高強度ワークアウトを行うか、など非常に感覚やその時の状況によって変わることが多いことです。コントロールできる範囲が、非常に経験的、感覚的、また状況に頼るところが大きくなってしまい危険を伴うことがデメリットとなってきます。

マラソンではオーバーペースによる『グリコーゲン枯渇』によって極端にペースが落ちる。これがよく言われる『35㎞の壁』である。

壁にぶつからないためには?マラソンペースが糖質の消費を少なくなるペースまでゆとりのある練習を積むこと。

 

例2、   スピードトレーニング・筋力トレーニング

スピードトレーニングや筋力トレーニングを行うにあたっては、『疲労している状態を避ける』ことと共に『空腹状態を避ける』ことを意識した方が効果を得られます。

特に中長距離のトレーニングを行う選手は、ラストスプリントでパワーを発揮するには『ある程度疲労した状態でスピード練習をする』方が良いと考えている選手も多いと思います。しかし、体が疲労している状態を翌日に持ち越して高強度スピードトレーニングを行ったり、空腹の状態でパワー系のトレーニングを行ったりすることは、効果が高いとは言えません。

※     このような点は以前に書いた記事『1500mとマラソンを両立できるのか?』のポイントに挙げられることの一つにもなります。端的に書くと・1500mはフレッシュな体で・マラソンはやや疲労した体で、ワークアウトを迎えることになってくる理由の一つです。

もちろん食べてからすぐにスプリントするのは、内臓に優しくないと思います。適度に糖質を補ってから高強度のトレーニングを行うことで、高強度トレーニングの達成度が上がることを意識しておく必要があります。

 

”スプリント”は高強度であるが、”ジャンプ動作”や””ウェイトトレーニング”ほどではない。

ジムで行える1~5回ほどしか連続して行えない運動が特に”高強度”トレーニングといえる。

 

例3、   有酸素運動の時間を抑えて脂肪を落とす

特に800mのランナーでは、短距離型の選手が『体重を落としたいがあまり長くJOGができない』という状況にあることをよく耳にします。

こうした選手の場合、真っ先に挙げられるのは『朝、空腹時に軽くJOGをする』ということです。『脂質代謝』が高まっている状態で、『低強度』の運動をすることで、脂肪を効率よく燃焼することができます。

これ以外の空腹のコントロールで行くと、朝食をとってから昼食を取らずに午後の練習でJOGを行うというものです。これは『例1』のパターンに似ており、日中の生活における活動で意識的に『グリコーゲン』を低下させてから運動をすることによって『糖代謝』から『脂質代謝』に入る時間を短くし脂肪を燃焼するというものです。こちらのメリット・デメリットも『例1』と同じです。

 

例4、   高強度運動と低強度運動の組み合わせによる代謝コントロール

『高強度運動』は『糖代謝』

『低強度運動』は『脂質代謝』

ということを一つの練習の流れの中で行い、目的に応じた効果を得るものです。

これはマラソントレーニングや減量などに効果的に用いることができます。

・     筋力トレーニングで『糖代謝』によるエネルギーを十分に利用した後、30分以上継続できる有酸素運動で『脂質代謝』を利用し脂肪を燃やします。

・     スプリントトレーニングやプライオメトリクスで『糖代謝』によるエネルギーを十分に利用したのち、30分以上継続できるペースでランニングをします。

このような方法は上手に利用することによって体重管理の助けとなります。また『脂質代謝』の切り替わりを自ら得られるような状況を作っていくことは、体に掛かる負荷を分散させながらマラソン練習を効率よく行っていく方法にもつながっていきます。

もちろんデメリットもあり、スプリントトレーニングで得た良い動きをゆっくりな動きの中で失いやすいこと。またマラソン練習に繋がるという過信から『筋持久力』を向上させるロングランなどを疎かにしやすいといった面も持っていることを理解しなければなりません。

 

自体重のトレーニングは少しずつ”高強度”から”中強度”へと筋力の向上で変わっていきます。

 

終わりに…

 

『糖代謝』・『脂質代謝』 ”高強度トレーニング”と”マラソン”

ということでお送りしましたがいかがだったでしょうか。マラソンの練習で、中長距離の練習で、効率よく練習を行える手助けになればと思います。

一つ注意しなければならないことは、『脂質代謝』のみに偏ることは良くないということです。

『低糖質ダイエット』が一般的に非常に流行っていると思います。

これは常に『糖質をとらない』ことによって、『糖代謝』のエネルギー供給を行えないようにして『脂質代謝』で体重を落とすことを目的としています。これは『糖の貯蔵』がなくなったのち、みるみる体重が落ちていくので、非常に簡単なダイエットとしてはやっています。

しかし『糖』のエネルギーが使えない場合、残されたエネルギーは『脂質』と『タンパク質』です。特に『タンパク質』をエネルギーとして体が多く代謝してしまう場合

・     筋肉は痩せていきます

・     総蛋白が減り、貧血になります

さらには骨まで痩せてしまうようなリスクもあります。

『毎日空腹状態の朝練では強くなれない』ということを理解して、食事と体の状態をコントロールしつつ効果的なワークアウトに望める計画を立てていきましょう。

 

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