『プライオメトリクストレーニング』における基礎知識 | 酒井根走遊会のページ
走動作のための
『プライオメトリクストレーニング』における基礎知識

みなさんこんにちは。
酒井根走遊会です。

みなさん”プライオメトリクストレーニング”をご存知でしょうか。
短距離やフィールド種目のトレーニングとしては広く行われています。
中長距離選手も実は知らず知らずのうちに行っているのですが、あまり馴染みのない言葉だと思います。
高校時代にアシックスの”ゲルプライオ”を履いていて、『短距離用のシューズだろ。』といわれた記憶もあります。
それくらいプライオメトリクスは中長距離の選手とは隔たりがあります。
前述した通り”知らず知らずのうちに”行っているのですが、どのようなトレーニングがプライオメトリクストレーニングなのでしょうか。

長距離選手が行っているプライオメトリクストレーニング例
・ハードルジャンプ
・ボックスジャンプ
・スクワットジャンプ
・ランジジャンプ
・縄跳び
等があります。

これらの練習、ある程度レベルの高い競技団体でトレーニングを行っていれば”毎日”の練習の中に入っているものだと思います。
しかし長距離選手はそれがプライオメトリクスという特殊な練習であることを認識していません。
というのも毎日練習後に行うことによって”補強”の一環として考えているためです。
そのためプライオメトリクストレーニングの”本来の目的”から離れてしまった”ただのエクササイズ”になってしまっている現状があります。

今回はプライオメトリクストレーニング
・本来の目的
・導入すべきタイミング(計画)
・走動作を向上させる種目
これらを中心に解説していきます。



プライオメトリクスの効果・目的
プライオメトリクスは筋肉の伸張と短縮を瞬間的に発揮することで大きなパワーを発揮することを言います。
参考書等ではSSC(ストレッチショートニングサイクル)と紹介されています。
”筋肉が伸ばされて瞬間的に短くなろうとする力”
この神経系を鍛えるトレーニングこそプライオメトリクスの目的
です。
陸上競技では、短距離・スプリントハードル・跳躍・投擲種目においてこのSSCの優劣が結果を大きく左右していることはよく知られているところです。
・スタートダッシュ
・疾走時
・障害の踏切と接地
・跳躍の助走と踏切
・投擲のリリース
こういったすべてのパワーを要する瞬間的な運動においてSSCのパワーが関わってきます。

特に”走る動作”を細分化すると、
臀部とハムストリングスを使って下された脚は接地に向かいます。
接地時、足首を90度に固定していた場合、足の裏・ふくらはぎの筋肉が一瞬緊張し伸ばされる力を受けます。
衝撃を緩衝しすぎない場合、アキレス腱は伸張から短縮へと力が切り替わります。
この伸張反射を利用して体を大きく前に移動させます。
また前に進んでいる空中動作でも、臀部とハムストリングスが伸ばされた際に、短縮する力へ切り替わります。
このタイミングで地面へ向かって脚を素早く下していくと、接地時更に大きな力を得ることができます。

このようにして短距離走の中ではSSCがすべての局面で働いており、各動作を正確かつ素早く正しい方向へ導くことで大きな力を筋肉と筋肉の反射、地面からの反力を得ることができます。
世界のトップランナーはSSCの力を最大限に高め利用することによって、接地の時間は0.1秒以下で2mを大きく上回るストライド長で進んでいくことを可能にしています。

さて中長距離においてはどうでしょうか。
よく言われることは、
・中長距離では単発のダッシュはない
・疲れた時に体を動かすことが必要
・飛ぶ、投げるといった一瞬の力を要する運動はせず、規則的な小さい力を持続する

このためプライオメトリクストレーニングは必要ないと考えられていたことがほとんどです。
しかし、近年(2000年以降)
”SSCを改善することによって中長距離走のランニングエコノミーを高めることができる”
という研究結果が多く発表されています。
(参考はこちらから※近日更新します。)
規則的な動きを長い間繰り返している分、SSCのような筋肉の反射や地面反力をより大きく活用できる選手の方が、地面を足首関節とふくらはぎでキックし続ける選手よりランニングエコノミーが高いといえば当然の結果であると思います。
中長距離に関してプライオメトリクストレーニングがもたらす効果は
・ランニングエコノミーの向上
・スプリント力の向上

ということになります。



中長距離のプライオメトリクス練習計画

プライオメトリクストレーニングは”非常に負荷の高いトレーニング”です。
そのため毎日行う”腹筋運動100回”のように毎日の回数を決めて行うべき練習ではありません。
『昔々、忍者は成長の速い葦の草を毎日飛んで跳躍力を鍛えたのだ。だから毎日欠かさずジャンプしなさい。』
『長距離はレース終盤に疲労してくる。だから疲れたところでジャンプしたりスクワットをたくさんして我慢できるようにしなさい。』
というようなコーチングは以前はごく一般的であったと思います。
また日本人の感性では毎日の継続こそ力になり、それで成長することが美徳という考えを全て取り除くことはほぼ不可能です。

しかし、視点を変えて短期的に毎日のトレーニングに自己満足や客観的な評価を求めるのではなく、
・長期的な練習計画
・効率的な各トレーニングの導入

をコンスタントに行い結果に繋げることこそ『競技スポーツ』としての本質です。
そして狙ったレースと結果に向けてのトレーニング生活を洗礼していくことのほうが、毎日考えもなしに同じことを繰り返す競技生活よりも充実した時間になることは間違いありません。
やや話が逸れましたが、『プライオメトリクストレーニング』もレースや高負荷の走練習同様の集中力と練習中の意識を持って行うべきトレーニングだということです。
つまり、毎日100回跳んでいるから足が速くなるというものではありません。

効果・目的の中でも記したように、中長距離に関しての練習では
・毎日行う
・回数を多く行う
・練習後に行う
・筋肉や関節・腱が疲労した状態で行う
ことに重要性と美意識を見出している。
この間違った認識がプライオメトリクスからプライオメトリクスの効果を奪い去っていることは前述しました。

プライオメトリクスで重要なことは
・最大パワーで行えるように回復日を設ける
・回復日の低負荷な種目を区別する
・回数を多くやり過ぎない
・同じ種目に偏らない
・セット間十分に休養を取る
基本的な参考
・週に2~3回(24時間~48時間の休養)
・インターバル90秒以上(3分前後~が望ましい)
・1種目 1セット 5~15reps(一日の練習5種目以上・3SET以上を計画に組む)
・5種類以上を組み合わせる
(・アキレス腱・ハムストリング・大臀筋・股関節伸展など狙いを変える)


また練習前、練習後完全回復した後(朝練走トレーニング・午後プライオメトリクス)、プライオメトリクスに集中する日など体がフレッシュな時に行いましょう。
※運動ニューロンを最大に刺激する・成長ホルモンを多く分泌する・筋繊維の動員率を高める、これらの目的でインターバルを短く設定したり練習後の疲労した状態で行う方法もあります。最終的には方法理論や経験論からくる自分自身にとって最も目的と効果に沿ったやり方で実施しましょう。
このあたりの感覚はウェイトトレーニングと同様です。


プライオメトリクス種目
・垂直ジャンプ
・片足ジャンプ
・タックジャンプ
・片足タックジャンプ
・ハードルジャンプ
・スクワットジャンプ
・立5段跳び
・片足ホップステップ
・バウンディング
・ステップスイッチ
・縄跳び
・ボックスジャンプ
・ハードルジャンプ
などがあります。

方法
プライオメトリクストレーングの方法を説明する前に、行う際常に考えてほしいことは
”速く反応する”
ということです。
ウェイトトレーニング1RMはどんなに速く行おうとしても、力を強くゆっくり加え続けなければならないポイント(スティッキングポイント)があります。
そのポイントを過ぎれば速度を増して上げることができます。
プライオメトリクストレーニングは重さがかかって筋肉が伸ばされる。この時の筋の瞬時の短縮する反応を利用します。
そのため力をゆっくりとかけるのではなく、強く速く使います。
※ 種目によっては、筋肉が伸ばされた状態と関節角度を作って一回だけ大きな力を発揮するものもあります。

今回は酒井根走遊会の行うプライオメトリクスを紹介していきます。
(次回は各種目について解説していきます。)

・その場ジャンプ
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・片足ホップ

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・連続スクワットジャンプ
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・スクワットジャンプ
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・タックジャンプ
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・片足タックジャンプ/片足台ジャンプ
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・ハードルジャンプ
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・片足ハードルジャンプ
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・バウンディング
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・片足スクワットジャンプ

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近日詳細を更新します。