こんにちは。
酒井根走遊会オセアニア支部からの更新です。
今回はトレッドミルトレーニングの有用性についてです。
みなさんは普段どのような練習環境で練習を行っているでしょうか。
常に計画的にできているでしょうか。私自身は故障復帰後から、一日おきの練習のような形で地道に体調を上げています。しかしウェリントンの気象や地形の状況から無理な練習になることも多々あります。また練習計画が適切に行えないことや、走り終わった後に予期しない負荷で次の日に走れない日も多々あります。
また海外の様々な土地で走ることによって、自身の感覚と走りのタイムが大きくずれることや、努力感と達成度が全く異なり不安になることもあります。
そうした中で、どんな場所であってもある一定の指標として用いることができる長距離ランナーのための練習があります。トレッドミルです。
使い方によっては、短距離・中距離の選手にも大きく貢献するかもしれません。
ご一読後、興味を持っていただけると幸いです。
トレッドミルの利点は以下のようになります。
① 気象・地形に左右されずに練習ができる
② 公道での信号・歩行者・車両に気を使う必要がない
③ 傾斜・鏡の利用によって動きを確認しながら練習できる
④ 練習計画を数値化し、スピード・距離に対して正確に把握できる
⑤ VO2max・乳酸値・低酸素等科学的なトレーニングを行うことができる
① 気象・地形に左右されずに練習ができる
マラソンでタイムを狙うには、フラットなコース、折り返しやコーナーの少ないコース、10度前後、無風、といったように多くの条件が必要になります。その条件というものはほとんどが自然環境に左右されています。この環境をコントロールできるといった点でトレッドミルは非常に優れているといえます。室内で行うことによって、無風状態、常に一定のリズムで走れるコース、適度な室温を設定することができます。また給水に関しても自己の体に着けることなく給水できるので常に自分の取りたいときに給水を取ることができます。ただ風がないために汗が常に自分の体にまとわりついてしまうことが難点とも言えます。このような点から、閾値トレーニングやマラソンペースでのランニングで狙った設定タイムや距離を確実にこなすことができます。
② 公道での信号・歩行者・車両を気にする必要がない
この点に関しては、事故防止という観点に非常に優れています。自身の走りに集中することができます。しかし、ランニングを外で行うことによって得られるリラックス効果や疾走感からくる快適さはトレッドミルの上ではあまり感じられません。
③ 傾斜・鏡の利用によってフォームを確認しながら練習できる
最近では動画を撮影できるカメラの普及によって自己の動きを確認できるようになりました。トレッドミルでは鏡を置くことによって、事後ではなく練習中に動きを確認することができます。また傾斜をつけることによってヒルトレーニングで行える動きの練習も取り入れることができ、フォーム矯正には非常に効果的です。しかし、小さなスペースで走ることにより、普段の動きとはやや違った感覚を最初のうちは感じるかもしれません。また接地面が動いているので、接地して反発力を意識して推進力に変えるという意識になるにはやや時間を必要とするかもしれません。
④ 練習計画を数値化し、スピード・距離に対して正確に練習ができる
自らの体でペースを作るのではなく、機械自体がスピードを作ってくれるので、ペーサーは必要ありません。また距離も正確です。この練習から練習の達成度、自己の走りのレベルを正確に把握することができます。この点に関しては、練習量によって満足、または不安から解消される日本人に多いタイプのランナーには非常に有効です。練習の『量』と『質』に関してはこちらのサイトが参考になりますので、必要な方は参照くださいhttp://cyclist.sanspo.com/181230
⑤ VO2max・乳酸値・低酸素等科学的トレーニングを行うことができる
トラックを走る時は常に同じところに居続けることは不可能です。そしてカーブや直線でペースや気象条件、フォームも変わります。しかしトレッドミルの上ではほぼ一律に同じ動きを行い続けることができます。科学的に見ると常に一定というのは外的・内的からの刺激と効果を測るうえで非常に都合のよい環境といえます。そのような環境を作ることによって、トレーニングに対する科学的な刺激を最も適した状態・状況で与えることができます。このことから最も効率の良いトレーニングが可能になるとも言えます。
こうして考えるとよいところしかないように考えられますが、トレッドミルのランニングにおける難点はどういったところでしょうか。
① ランニングで得られるリラックス効果が減る
同じ場所を走り続け、常に一定のペースで景色が変わらないランニングは苦痛でしかない人も多いと思います。いい天気の日に外に出て気持ちよくランニングできる感覚は得られません。
② チーム練習に向かない
チームで練習する場合集団で走り、ペースをコントロールしながらより実戦に近い形で練習できます。しかしトレッドミルでは、個人の走りに集中します。チーム練習では個人の走力よりもチームの目標からペース設定がなされますが、完全に個人に分かれるトレッドミルでは個人のペース設定が尊重されます。そういった観点から個人にとっては最適な練習ができますが、チームにとっては必ずしも最適とは言えません。チーム練習では時にややきつめの練習になってでもやり遂げる、そして士気・チームワークを高めるということも重要になってきます。
③ 気象や地形に対する適応性が減る
常に快適な練習環境で行うために、暑さ・寒さ・風・雨・上り・下りに対する適応力がなくなります。レースに挑むにあたっては必ずこうした環境と闘わなければなりません。そうした中で室内だけの練習では強化不足になりがちです。それを補うために補強運動やその他のトレーニングを組合さなければならず、やや多くの時間を必要とするかもしれません。
④ レースに対しての判断力が減る
レースではペースは一定ではありません。また集団の中での位置取りも重要な要素です。体から感じられる反応をいち早く感じ、自身の最高の走りを自分自身で維持しなければなりません。一定のペースで慣らされた体をレースの感覚を取り戻すまたは磨くためには、やはりトラックに出て競り合う練習が必要でしょう。
効果的に用いるためには、トレッドミル・トラック・ロードで練習する日を週の練習計画の中に効果的に取り入れる必要があります。
例えばこのような形になります。
月 ロード 40'EASY
火 トラック 200m×⒑ (Repetition)
水 ロード 20'UP 20'DOWN
トレッドミル 20' (Threshold)
木 ロード 40'EASY
金 (ロード or トレッドミル)40'EASY or 10'easy-20'marathon-10'easy
土 トラック 1200 X 4 (Interval)
日 ロード long run 90'-120'
私の考えるトレッドミルの効果的な導入は、閾値トレーニングやマラソントレーニングペースでの導入です。このペースはややきつく・やや物足りないペースです。これをマシーンに作ってもらうことにより、確実に自身の体に適切な刺激を入れることができます。
インターバルやレぺティションをトラックで行うことの利点は、走りの感性を磨くことができるからです。また実戦的な練習が行えます。
ロードのロングランやイージーランニングセッションは、リラックスしたイメージで行うほか、地形に対する走りの感覚を確かめるために使います。スポットを確認したり、ドリルを中心に動き作りを主に取り組んだりするのもよいと思います。
もちろんスピード練習をトレッドミルで行うこともよいでしょう。低酸素室やVO2max測定なども行い、休息と疾走時間の決定や、トレーニングレベルの再確認にも使うことができると思います。
また確実に60’マラソンペーストレーニングや閾値トレーニングでポイント練習に用いることもいいと思います。
使い方は各自のレース距離や練習プランに合わせて様々な設定が可能だと思います。
自分の練習計画を確認して効果的にトレッドミルトレーニングを取り入れてみるのはいかがでしょうか。