2009 春
首の長い金髪のプラナバは言った。
「一度だけ日本に行った事があって、その時に食べた味噌スープを
思い出して作ってみたんだ」
「すごく美味しかったよ。そうか、日本に行ったことあるんだ」
「ああ、とても美しい国だったな。もう15年も前のことだよ」
「今日の味噌スープ、たまねぎ、わかめ、豆腐のトリオは日本でも王
道中の王道だよ。よく材料が揃ったものだね」
「そりゃシンに食べてもらおうと思って作ったのだから、美味しくしない
とね」
そうか、やっと気付いた。今日の夕食の献立はプラナバの提案で、
白米を炊いて、トマトのカレーと炒めた野菜、フレッシュなフルーツ
に豆腐の味噌汁、大学芋的さつま芋。一昨日アシュラムに着いたば
かりの僕のために、滞在している200人の夕食が日本風に彩られた。
「涼しくなってきたね、おやすみ」
赤道にほど近いヨガのアシュラムには、世界中から修行の徒が集い、
様々な形で仕事をしている。オーストリア人の彼は元スキーヤー。今
ではアシュラム随一のシェフである。カルマヨガと呼ばれる彼らの仕事
は、僕らのような新米来訪者をあたたかく迎え、アシュラム中に気持ちよ
く流れる空気を、より純度の高いプラーナ(エネルギー)に変えて満たし
てしまう。こんな空間に足を踏み入れたなら、呼吸法の練習や汚れ物の
掃除、アサナや瞑想、チャンティングなど、行為のすべてが「その空気」
に包み守られているようで、心から安心できてしまうから不思議だ・・・・。
「おやすみなさい。ありがとう」