墓参り | 原田コーチのブログ

墓参り

 午後5時をまわり辺りは夕暮れ。もう太陽の端っこも既に沈んで、


僅かなオレンジを滲ませている。スイミングクラブからタスクが出て


きた。


「帰りも歩くか?」 「いいよ!」


片道30分歩いてきた道を、1時間泳いだ後に帰りも歩くとは、7歳


男子の体力もまんざら侮れないものだ。今日は台風前の寒さと違


い、幾分過ごしやすい気温。2人は鼻歌まじりに歩き始めた。


「市民の森って近い?市民の森通って帰りたいなー」


「結構暗いぞ。大丈夫か」 2年前くらいまでは映画館の暗さが恐く


て、途中で抜け出てきたりしたのに。


「平気だよ」 まあそう言ってくれないと困るのだが・・・。


「よし、じゃールート変更だ。あの階段から森に突入だ」


本当に暗かった。薄い水色とグレーの森が、刻一刻と暗さを増して


ゆく。幸い地面には落ちたての枯葉が、ところどころ白く浮かんで見


えて、辛うじて山道のガイド役となってくれた。


「うっ、痛っ」 枝には要注意だ。目の前で腕を弄るように動かしなが


ら、真っ暗な森を徘徊する2人。


「おー」 湿った土に足をとられて、尻餅をついてしまった。

 

「大丈夫?パパ!」 う、だ、大丈夫だ・・・。


「うおっ」 今度は蛾の襲撃。何とも気持ちのよくない感触だ。冷静に


冷静に・・・。と、そういえばタスクは、何の動揺もなくすいすい森を奥


へと進んでいく。足手まといになっているのは、何でも教えてやるぞ


風、浅黒い肌の一見アウトドア派の僕だった。


「ここだ、ここだ!」 「ここに埋めたんだよ、カブト」


鎌倉で捕まえたカブトムシが、秋のはじめに死んでしまい、市民の森


の石柱のところに埋めたのだった。そうか、カブトに会いに来たのか。


人通りの少ない、すこし勾配のきつい坂の上の石柱に、2人並んで手


を合わせた。自分達の仲間が眠るこの場所に立って、すこし森との距


離が近づいた気がした・・・。