1983冬2
リックに何か名案があったとは思えない。この夜風の冷たい
季節に風呂上りの散歩とは、唐突な思いつきにしてもあまりに
侘しい選択だ。
しかし、リックはある種の賭けに出て、勝利を収めたかのよう
に笑顔だ。一緒に外を歩いている4人全員が足取りも軽く、その
表情はむしろ晴々としていた。日中もかなり気温が上がっていた
ようだが、夕方近くになってもまだ2月とは思えない程生温い風
が、ゆるやかに4人の間をすりぬける。散歩は正解だった。宿を
離れて間もなくは、自分達の部屋の灯りを探しては虚無感に襲
われていた。それがいつの間にか、いつも以上に近づいて見え
る満月、雪と枯れ木で浄化された空気に触れていると、身体の
中心から気持ち良さが充満していった。
4人はいつしか部屋のことなど忘れて、学校のこと、部活のこ
と、将来についてなど、生き生きと語り合っていた。招かれざる
僕らの妙な一体感。ひょんなことから心が解放された。満月の
縁取り部分が、ゆらゆらと温かく燃えているようだった。


