1979冬
「卵になんかつけるなら食べなくていい。もう止めなさい」
「え、別にいいじゃん、こないだのすき焼きの時は卵おかわ
りしていいって言ってたじゃん」 「だめなものはだめです。
言うことが聞けないんなら食べでいいです」 何だか興奮
気味の母。どうして今日の鍋はポン酢で食べなきゃいけな
いのか、まったく意味が解らない。いやまったくとまではい
かないか。鱈の出汁がきいた白菜の鍋は、今だったら間違
いなくポン酢でいただくだろう。しかし相手は9歳男子、先日
のすき焼きに感動して是非同じ手法でいただきたくお願い
している。けれど願い叶わず、なくなくポン酢でいただいた。
「あーおなかいっぱいだ」
食べる前に妄想していた卵の味は、もう何処かに忘れ去ら
れてしまったかに思えたその時、母から信じ難い発言が・・
「いい出汁がでてるから、ご飯を入れておじやにしましょう。
最後に卵をとじると美味しいのよ」 「えっ、た卵・・・・・」
もう何が何だか分からない。あれ程厳しく禁じられたもの
が今は大歓迎を受けている。
「ほーら、美味しいでしょ」 「う、うん・・・」
でも、ほんとに美味しかった。こういうことを、教育って言
うのかな。釈然としない顔のままの自分の言い分を、今
ならじっくり聞いてあげれるのになぁ。


