【オリエンテーション合宿】
誠は、高校に入ってすぐはにバスケ部に入部した。
中学校の時に、バスケ部に入部したが、集団競技に馴染めず、また他者からのプレッシャーを感じやすく1学期にはやめてしまった。
それが心の中でモヤモヤしたものとなっていて、高校に入ったらまたバスケ部に挑戦をしたかったという思いがあった。
一方、勘吉は、部活に入らずに中学で始めたボクシングをしていた。
市内のボクシングジムに通っていた。
ちょうどこの時期前後に、世紀の決戦といわれた世界タイトルマッチ、薬師寺保栄と辰吉丈一郎の試合があった。
日本中がボクシングという競技に注目していた。
高校入学してまもなく、オリエンテーション合宿(※)があった。
その合宿の中で、まず自分たちの高校の校歌をマスターするという課題が課せられた。
各クラスで練習をして、最終的にはそこの施設の体育館でクラス対抗で発表し合うというものであった。
小学生ではないので、年頃の高校生たちはどこか恥ずかしく真面目に歌おうとしない。
特にこの最底辺の高校生たちは、いい加減に歌っていた。
いざ本番のときもみんな真剣には歌っていなかった。
どこのクラスも似たような適当さがあった。
そして誠のクラスの番がきた。
しかし、誠のクラスは他のクラスと比べて、どこよりも声が大きく出てた。
いや、正しく言うと1人だけ、大声で絶叫するように歌っていた。
勘吉だった。
勘吉は歌詞が合ってようがいまいが関係なく、大声で歌ってみんなを驚かせていた。
当然、それを笑うものもたくさんいた。
それでも構わず歌っていた勘吉を見て、誠は、
「笑われているけど、何も気にせずすごい。」
と、心の中で勘吉を尊敬し始めていた。
※オリエンテーション合宿とは新入生が基本的な生活態度を身につけるとともに、生徒同士の連帯感を高めること、また規則正しい生活を送り、自学自修の態度も養うことを目的としている。