イタリア中部沖のジリオ島付近で起きた豪華客船コスタ・コンコルディアの座礁事故で、乗客を船内に置いて避難した船長が、船に戻るよう求めた現地の沿岸警備隊の指示も無視していたことが明らかになり、事故は「人災」の様相を一層帯びてきた。一方、客船の監視体制や世界的な客船の大型化も被害拡大の背景に指摘され始めている。(ベルリン 宮下日出男、田中靖人)
13日夜の事故発生後に船を離れていたフランチェスコ・スケッティーノ船長(52)と沿岸警備隊の通話記録が17日公開された。「船に戻り、船内に何人いるか伝えろ」と警備隊が繰り返す指示に対し、船長は救命ボートで救助活動を指揮していると説明。船に戻っても「暗くて何も見えないのは分かっているのか」と弁明した。
死者は11人に増え、20人超の行方不明者がいる。過失致死容疑で逮捕された船長は17日、身柄を解放されて帰宅。在宅のまま取り調べを受ける。「事故は完全なヒューマンエラー」(船舶専門家)と船長の対応に批判は集中しているが、事故や被害拡大の背景には、近年の客船利用客急増に伴う課題も浮上している。
100年前のタイタニック号の事故では約2千人が乗船していたとされるのに対し、コスタ・コンコルディアには約4200人が乗船。世界最大の客船の収容力は6千人といわれる。
しかし、乗員は救命ボートの扱い方を習う程度とされ、AP通信は「何千もの乗客に対応できるか」との専門家の見方を紹介し、緊急対応の乗員教育の問題点を指摘した。
また、航空機が地上から管制される一方、船舶は船長の裁量が大きく、今回の事故も船長の判断でコースを変えた。欧州連合(EU)当局者は欧州紙に対し、「船の大型化に対応した規制が十分備わっているとはいえない」と述べた。
一方、海事プレス社などによると、船旅を目的にした客船は世界に300隻以上。1990年代以降、船の大型化と隻数の増加が進み、日本外航客船協会によると、世界の船旅人口は2010年で約1750万人。うち1千万人超が米国人で、日本人も約19万人が利用している。
大阪府立大の池田良穂教授(船舶工学)によると、出港地まで格安航空会社と連携し、1週間程度の短期間で安価な旅を提供するビジネスモデルが米国で成功。欧州にも導入され、近年では10万トン級の客船が毎年10隻前後建造されるほど業界は活況を呈し、市場規模は6兆円程度という。
市場拡大を受け、02年に海上人命安全条約(SOLAS条約)が改正され、船体の安全性の基準が強化されたが、池田氏は、船体強度への過信が対応の遅れの遠因になった可能性を指摘している。