
伊勢市の宮川堤のソメヨシノは「桜の名所100」に指定されています。宮川は二十年に一回伊勢神宮の社を建て替え、ご祭神を新しい宮に遷す式年遷宮の行事が行われるところです。木曽檜などを宮川まで運び、ここから外宮や内宮へ御木曳(おきひき)といって御用材を運びます。もちろん古代と同じやり方で、すべて人力で何トンもある檜材を運びます。この行事に参加したことがありますが、人々の表情は晴れやかで感謝に満ちています。

どこまでも続く宮川堤の桜並木。堤防を平清盛が築きました。河川敷には陸上のトラックが敷いてあり、伊勢市民はここで散歩やジョギングをします。皇居のジョギングは天皇のお住まいの回りを走るのですが、ここは神様の傍を走ることになります。桜を見ながらのジョグはまた格別でしょう。

何とも華やかな咲き方。豪華です。満開から少し散り始めました。

キイロタンポポも咲いています。

外宮の遷宮館です。入場料は300円。どう見ても1000円は要りそうな展示内容です。最初の式年遷宮は持統天皇四年(690年)に行われました。それ以降、20年毎に行われ、2033年には63回を迎えます。伊勢神宮は125の社があり、すべての遷御が完成するのは十年後です。しかも、遷宮が終わると次の遷宮のための準備も行われます。

令和15年にはこの地に神様が遷御されます。そんなことを言っていると森林破壊だと批判する方もいらっしゃるかと。実は、遷宮は役目を終えた御用材は、各地の神社に下賜され新ししい社として蘇ります。前回は東日本大震災で被災した東北の神社が御用材で復興を遂げました。何と言っても伊勢神宮の社だった材木なので極上の物です。そして、広大な神宮林を擁しており、近い将来は神宮林だけで御用材がまかなえるように計画されています。式年遷宮は究極のリサイクルとリユースを1300年の間、行ってきました。

外宮の正宮で祈る人々。ここで私的な願いはしません。五穀豊穣や国家安泰など、無心に祈ります。二礼二拍手一拝。私的な願いは多賀宮でします。多賀宮は豊受大神の荒ぶる魂を祭っています。正宮は鎮まった魂。個人的な願いは荒ぶる神に願った方がパワーがあっていいのでしょう。ここにくると清々しい気持ちになります。それが私たちか世の中でよりよく生きていくことに繋がっていきます。その心の変化が大切なのでしょう。

神宮の森に夕陽が傾いて、木漏れ日から葉っぱを幹に照らし出しました。不思議な光景でした。

さて、お詣りの後は赤福餅です。お団子は桜のあんことヨモギだんご。ほうじ茶がよく合います。いたってシンプル。全国各地から徒歩でへとへとになって伊勢に到着した旅人を迎えた江戸時代からのおもてなしの配慮が各所に息づいています。店内に入って注文はタッチパネルなのに驚きました。カードで支払いを済ませて、テーブルに着くと店員さんがほどなく注文の品を持ってきてくれます。老舗なのにハイテク!

少し歩いて若松屋のお好み焼きをいただきました。お詣りとグルメは表裏一体。これがお伊勢参り。「美し国 うましくに」三重は海の幸・山の幸に恵まれた食材が多彩な国です。口の中にほおばれば、エビなのかイカなのか、様々な海鮮の出汁や天かすのうま味が口いっぱいに広がって、打ち上げ花火のようにお味が変わってきます。
伊勢神宮の外宮は、内宮のご祭神天照大神にお食事を献上する神様です。食に従事される方や広くは商売や物作りに関わる方、そして、新しい決意で新しいことに挑戦する方々の願いを聞いてくださります。
何はともあれ、伊勢に来たならこの季節、宮川堤のソメヨシノを見て、外宮に詣でて、グルメに浸る。午後は、内宮に詣でておかげ横丁でこれまたグルメを楽しんで。これがお伊勢参りの勘所です。伊勢は四季折々に魅力があるのですが、この季節は気候と言い、自然と言いマストシーの時節です。
神宮は寄り添う神様です。各地の神社には神宮遙拝所があり、また、伊勢神宮の方向を向いて拝せばそれで現地に来たのと同じ御利益があります。どんなに遠くにあっても、あなたの近くにあるのが伊勢の地です。このブログをご覧になられたすべての方に今日受けた御利益がもたらされますように。
NHKでブラタモリが始まりました。一番に選ばれたルートが伊勢路です。タモリさんが「伊勢路って魅力あんの?」とおっしゃっていましたが・・・。グルメで言えば、桑名の焼き蛤からはじまり、伊勢エビ・アワビ・伊勢うどん・手こね寿司、松阪肉。テーマパークは鈴鹿サーキット、ナガシマスパーランド、志摩スペイン村。宿泊施設は伊勢志摩サミットが行われた志摩観光ホテルがあります。歴史好きの人には、吉野ヶ里、多賀城遺跡とともに日本三大史跡の斎宮歴史博物館があります。全国で唯一ラッコを飼育している鳥羽水族館も。何と言っても迎える人の「おもてなし」の精神は、伊勢の街に根付いています。それは、見て、聞いて、触れて、味わえば、きっと納得の行くものになるでしょう。