防災の日から京都大学の鎌田先生の見た南海トラフ巨大地震を考えました。先生の視点は地球の歴史という長いスパンから見た防災でした。今日は、そのときそこで何が起こり、人々はどう行動したのか。ミクロの視点で考えてみたいと思います。
東日本大震災から14年が経ちました。この出来事を風化することなく今もその日のことを思い起こし、ここから何を学び、このようなことが起こればどう行動するのか。
現在の時点での死者・行方不明者は22,228名です。震災関連死の方を含みます。昨年能登半島で起こった地震では直接の犠牲者よりも震災関連死の方の数が多くなっています。災害で助かった命がなぜ失われたのか。自助や共助を越えて社会全体で考えなければならないことだと思います。
松阪市ではJR線の所まで津波が来ます。と言ってもこれは想定された物。自然は想定外のことをすることがあります。
東京大学大学院教授の片田敏孝先生は津波の三原則を提言されました。「想定外にとらわれるな」はその一つです。
三原則の二つ目です。とにかく逃げること。まず自分が助かること。一見エゴイストにも思えますが、自分が死んでしまえば他人を助けることはできません。巨大津波が来たとき、全員が助かることは簡単なことではありません。そのとき最善を尽くしてやるだけのことをやるしかありません。
まず、自分が逃げること。そうすれば、みんなも逃げます。何もなければ儲けものです。笑われたってどうってことないです。
片田先生は釜石と尾鷲に長年係わっておられます。尾鷲市は南海トラフ巨大地震が起こると言われています。そして、釜石で起こりました。それは尾鷲市でも起こりうることです。
片田先生のお話を国土地理院地図に落としてみました。津波が来たのはございしょのさとまで来ました。その様子は次にあります。
ここから小中学生に学びたいと思います。子供たちは片田先生の教えをそのまま実行しました。お年寄りを助けに行った中学生には、「彼はよく生きた」とおっしゃいました。この言葉は心に刻みたいと思います。
津波が起こったらどう対応するか? 簡単なことです。この三つのことをそのまま実行するしかありません。人はそのとき迷います。「今起こっていることは大したことない」「他の人も助けなくては・・・」前者は正常性バイアスという誘惑です。後者は大切なことなのですが、まず自分が助かることを考えましょう。そして、あなたも逃げましょうと誘いましょう。
東海地震が30年以内に起こる確率は70%と言われていました。今、それが80%になっています。昭和東海地震が1944年に、南海地震が1946年に起こりました。あれから80年が経ちました。しかも、前回は南海トラフ巨大地震は半割れで東海地震は起こっていません。大切なのは、南海トラフ巨大地震がいつか100%起こるという事実です。人はいつかは死にます。でも、それをどれだけ現実のものとして受け止めているでしょう。それと同じように巨大地震は必ずやって来ます。人生100年時代、人は一度か二度は巨大地震に遭遇すると言ってもいいでしょう。南海トラフ巨大地震では29万人の犠牲者が想定されており、津波で直接亡くなる犠牲者は23万人です。
あのとき、ここで釜石の小中学生がどう行動したのか。彼らに学びたいと思います。必ず起こる、いつかは起こると考えて、そして、そのとおり行動しました。世界は「釜石の奇跡」と呼びました。しかし、彼らは、言います。「釜石の実力」彼らは片田先生の教えの通り、訓練の通り行動しただけです。奇跡を起こしたのは、日頃の教育や訓練の延長。当たり前のことを当たり前に行っただけ。それが命を救いました。
鎌田先生の地球規模のマクロの視点、片田先生のミクロの視点。2つの視点を組み合わせれば、南海トラフ巨大地震に向かう私たちは、29万人の犠牲者を十分の一に減らすポテンシャルを持っていると思います。