紀伊半島桜だより 稲荷山公園と来迎寺中条山のソメヨシノ | バイカルアザラシのnicoチャンネル

バイカルアザラシのnicoチャンネル

 サイコロジストの日常と非日常を季節の移ろいを交えて描いています。バイカルアザラシのnicoちゃんの独り言です。聞き流してください。

 桜が満開近くになると想い起こす歌があります。江戸時代後期のお坊さん俊寛僧都の一首です。


 散る桜 残る桜も 散る桜


 俊寛僧都辞世の句です。散る桜もあれば、残る桜もある。それでもいつかは散ってしまうものだ。


 この三十一音には無常観が漂っています。すべてのものは移り変わります。咲けば必ず散るのも世の常です。4月5日は戦艦大和に沖縄特攻が命じられた日です。乗組員は上陸し最後の準備をしていました。家族や大切な人々と会うことが出来ました。会うのが許されると言うことは、別れることであることは、乗組員のだれもが知っていました。ある乗組員は俊寛僧都の言葉を友人に言付けて、出撃します。

 

 大和を率いる伊藤整一第2艦隊司令長官は6日、全乗組員に訓令を発します。

 

 神󠄀機將ニ動カントス。皇國ノ隆󠄁替繋リテ此ノ一擧ニ存ス。各員奮戰激鬭會敵ヲ必滅シ以テ海󠄀上特攻隊󠄁ノ本領ヲ發揮セヨ


 片道燃料援護機なし。そんな無謀な作戦があるでしょうか。しかし、長官は「大和が一億総攻の先駆けになる」と士官の言葉を借りて出撃命令を受け取りました。

 

 4月7日14時23分、アメリカ軍も猛攻を受け、北緯30度43分東経128度04分に大和は沈みました。戦死者は3056名、生存者は276名です。有賀艦長は操舵室に自分の体をローブで縛り舟とともに沈みました。実際は航海長だったという話もあります。


 さて、80年後の今、ドローンは稲荷山公園を飛んでいます。そこから来迎寺の中条山に向かいます。人は死ぬと魂は山の頂に宿り、祖先を守ると言います。日本古来の素朴信仰です。そして、いつしかそこには桜が植えられています。気まぐれな春風が桜の枝を揺らしています。桜が咲くと「散る桜 残る桜も 散る桜」この言葉がいつも想い出されます。

 

 私たちがこのように平和な生活を享受しているのも80年前の出来事にルーツがあることを思い起こしたいと思います。

 

 

 画像をクリックすると動画になります。見てね!馬 馬 馬