夏が来ました。棚田の蛍 | バイカルアザラシのnicoチャンネル

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 サイコロジストの日常と非日常を季節の移ろいを交えて描いています。バイカルアザラシのnicoちゃんの独り言です。聞き流してください。

 日本の棚田百選に指定されている「深野の棚田」の夜はどんな風景が広がっているのでしょうか。少し残念なのは街灯がまぶしく光っていることです。もちろん防犯上のことなので星空や蛍を撮ることに比べたら、防犯の方が大切でしょう。高感度カメラだとこうして空は真昼のように明るく写ります。

 

 それでもカメラを空に向けると北斗七星が写りました。街灯がなかった江戸時代ならもう満天の星が広がっていたことでしょう。

 

 南の空には蠍座のアンタレスが昇っています。木陰すれすれに見える星はアンタレス。その横を棚田を飛ぶ蛍が軌跡を残して飛んでいます。この前は溝の中に光る物がいました。ライトをつけると蛍の幼虫でした。蛍は水中に住む幼虫の時から光を放ちます。やがて孵化すると溝を上り、羽が乾くと夜空に飛び立ちます。南天のサソリ座まで飛んでいこうとするのです。深野の棚田にはそんな不思議な世界が広がります。夏にしか見られない美しい景色です。なんと言っても550光年もあるアンタレスに向かってわずか3mの距離の蛍が飛び立とうとしている。ここは時空を超えた世界なのでしょう。

 

 なぜ蛍が光を放って飛び交うのか。短い命、限られた時間の中で愛を完結するため。次の命を引き継ぐために相手を求めて飛び交います。彼らに時間はありません。そして、確実に来年も同じ光景が広がります。命の連続性は静かに進行しているのです。