吉野山の不思議! | バイカルアザラシのnicoチャンネル

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 サイコロジストの日常と非日常を季節の移ろいを交えて描いています。バイカルアザラシのnicoちゃんの独り言です。聞き流してください。

 ここは吉野山、修験本宗の総本山である蔵王堂がある。吉野山駐車場から歩くと銅の鳥居が見えてくる。青銅製でできているが、「かねのとりい」と読むらしい。ここに秘歌が書いてある。

 

 吉野なる 銅の鳥居に 手を掛けて 弥陀の浄土に 入るぞ嬉しき

 

 大峰奥駆修行を始めてする人を新客というが、ここで秘歌を唱えて修行をする。鳥居をくぐるとここは阿弥陀如来の極楽浄土なのだろうか。そうなると大峰山は北側が金剛界で南側は胎蔵界ということになる。修験道では浄土信仰が含まれているのだろうか。

 

 大普賢岳に登る途中に笙の窟がある。と言ってもこれは天然の洞穴ではなく、柱状節理を穿ったもの。人一人が修行できるスペースがある。事実、平安時代を始め多くの修験者がここで修行をしている。

 

 日蔵上人がここで修行をしていると死んでしまった。冥土をさまよっていると龍樹菩薩に出会う。ナーガルジュナはインドの高僧で仏教に「」の概念を導入した人。お釈迦さんの時代には「無」とか「空」の概念は無かった。仏教はこうして理論や信仰が後世の人たちによって発展深化してきたもので、それは現在も同じ。採灯護摩で般若心経を唱えるが、これはまさしく空の世界。

 

 蔵王堂の右前に小さな威徳天満宮がある。境内には稲荷神社や観音菩薩、愛染明王も祭られているので違和感はないが、自分にはこの天満宮に興味をそそられた。

 

 日蔵上人は冥界で後醍醐天皇に出会った。天皇は、「私は藤原時平の讒言で道真を太宰府に左遷してしまった。」と聞く。そして、道真にも会う。道真は、「今から眷属達が日本に大災害を起こそうとしている。私はそれを止めることができない。もし、私を威徳天として祭ったら眷属もこの怒りを収めて、天災が起こらないようになるかも知れない。」それを聞いた日臓上人は仮死から蘇生して蔵王堂に威徳天満宮を造営するよう進言した。

 

 天満宮は太宰府や京都の北野にあるが、天神信仰のルーツは蔵王堂の威徳天満宮にあるらしい。それにしても修験道とはいったいどんな宗教なのだろうか。浄土信仰もあれば、「空」を強調もする。観音さんも祭れば威徳天も祭る。採灯護摩にはゾロアスター教の流れがある。大峰奥駈修行は開祖役行者が始めたこと。役行者自体が道教の仙人のような存在でもある。節分会には全国の鬼が蔵王堂に集合する。境内をたむろしていた鬼が説教で調服する姿は滑稽でもある。

 

 吉野山に来るといろんなことを考えてしまう。桜の季節に来たらこんなことは思い浮かばないかも。花供懺法会には山伏達が威儀を正して大名行列を組む。採灯護摩は新しい管長猊下の元、厳かに行われる。

 

   今は人も少なく、桜の木々は枯れ木のよう。それでも寒さの中でしきりに桜の色素をため込んでいる。いまは寒風の中で萌え出ずる春に向けてパワーを充填しているのだろう。それが寒さに目覚めて爆発的に開花する。厳冬の吉野山は不思議さとエネルギーに満ちた聖地だった。