高校生レストランに行ってみた | バイカルアザラシのnicoチャンネル

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 サイコロジストの日常と非日常を季節の移ろいを交えて描いています。バイカルアザラシのnicoちゃんの独り言です。聞き流してください。

 日本テレビ系列で「高校生レストラン」が2011年から放送された。主演は調理科の教師をTOKIOの松岡昌宏さんが演じた。生徒役では朝ドラ「らんまん」の神木隆之介さんが出ていた。

 

 モデルになったのは三重県多気町にある相可高校食物調理科で、村林信吾先生。この方はもともと阿倍野調理師学校の教授をしていた人で、全国で初めて高校3年間で調理師の免許を取得させる目的で招かれた。卒業生達は大使館付のシェフや料亭神田川の料理人として活躍している。今年で創立20周年を迎える。

 

 多気町にある「孫の店」を訪れたらこんな感じのレストラン。ここの食材は地産地消で多気町の物が出される。生産者から見れば、丁度生徒が孫世代なのでこの名前がついた。平日は高校に通学し、土日にレストランが開かれる。調理人もホールスタッフも全部高校生。企画から運営まで高校生がやっている。

 

 3年ほど新型コロナウイルス流行のため閉店していたが、また再開となった。メニューは、「花御膳」と「麺定食」の二つ。これは花御膳で前菜、茶碗蒸し、季節の天ぷら、煮物、白会え、ご飯と名物のだし巻き卵と牛しぐれ。どれも丁寧に作ってある。テーブルからは高校生達が手際よくエビ天を揚げたり、だし巻き卵を焼いていく。

 

 村林先生の著書、「高校生レストラン 今日も満席」にあるように、満席でウェイティングリストに名前を書いて待合室で少し時間を過ごした。ほどなくテーブルに案内された。「いらっしゃいませ」「ご来店ありがとうございました」と食堂に大きな声が響く。もちろん、全員マスク姿。来客者にもマスク着用となっている。

 

 これは麺定食で、多気町名物の伊勢イモが麺に練り込んである。もちろん伊勢イモのトロもついている。美味しい。思わず汁まで飲み干してしまった。汁まで飲ませる美味しさがここにはある。

 

 名物のだし巻き卵。これほど薄い膜で卵が焼ける物かと思うほど巻いてある。料理の基本中の基本がここに凝縮されている。牛しぐれも普通に上手い。普通とは特色のない美味しさのこと。村林先生は、ここで美味しいと客に思わせたら失敗ですと言う。美味しさは基本の基本をマスターして自分の味を追求して出す物。可もなく不可もないお味に仕上げるのが食物調理科のレベルらしい。自分にはこのお味の普通感が返って洗練されたお味に感じられた。

 

 この高校には生産経済科もあり、松阪牛を生産している。松阪牛共進会で入賞した経歴を持ち、農業技術の全国大会でも上位入賞をしている。

 

 最後のデザートは水ようかん。これまた美味しいのはさておいて、柚の皮が散りばめられている。一口入れると柚の香りと苦さが鼻の上まで上がってくる。紅葉の形に切ったニンジンにしても紅葉を感じさせたり、収穫の秋を感じさせる仕掛けが各所につまっている。

 

 料理をいただいていて思ったのは、ここにいる高校生達はもはや高校生ではない。みんな職人、料理人の顔をしている。目的意識がある人は表情まで作り変えていくのかと思った。伊勢志摩サミットでも、配偶者接遇プログラムで料理を振る舞った。料理の質の高さにも驚いたが、こんな若いエネルギーに満ちた世界があるのかと、我を振り返った一日だった。