またまた長編大作映画がYouTubeで無料で見られるらしい!   | バイカルアザラシのnicoチャンネル

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 サイコロジストの日常と非日常を季節の移ろいを交えて描いています。バイカルアザラシのnicoちゃんの独り言です。聞き流してください。

 東映シアターの登録者数が二十万人を越えた記念にYouTubeで無料で映画を放映している。この前、「二百三高地」を紹介したが、これは今日まで。今度は、高倉健と吉永小百合主演の「動乱」が2月26日まで公開される。東映のサイトによると内容は、こんな感じ、

 

 雪は知っていた。寡黙な愛ほど強く激しいーーことを。男が男であった、女が女であったーー時代とは。愛とは。 激動の昭和の時代に、男が男として、女が女として生きた姿を鮮烈に描いた超大作。物語の背景は、昭和7年から昭和11年。経済恐慌と凶作が重なり苦しみを強いられる庶民たち、皇道派と統制派に分裂する陸軍内部、昭和維新の声が高まる皇道派の青年将校たち、そして決起される二つのクーデター。昭和史の起点となった五・一五事件から二・二六事件までの風雲急を告げる動乱の中、時代の波に翻弄されながらも信念を貫き生きる寡黙な青年将校と、その妻との愛と生きざまを、一大叙事詩として二部構成の雄大なスケールで綴った感動のドラマ。仙台、朝鮮、山陰、雪の東京へと移り行く風景とともに、決して変わることのない“日本人の心”が浮き彫りにされていく。 

 

【キャスト】 高倉健/吉永小百合/米倉斉加年/桜田淳子/永島敏行/にしきのあきら/小林稔侍/田中邦衛

 

 二十世紀の日本は、五・一五事件から二・二六事件から始まった。犬養毅総理大臣が射殺された。二十一世紀には安倍元総理が射殺された。世紀の初めは総理がテロに遭うのか。この前の世紀は、青年将校が政府を武力で転覆するという動乱から始まった。今世紀はどうだろうか?国内自体は動乱ではないが、近隣諸国が日本近辺で不穏な動きをしている。昨日は大陸間弾道弾が北海道の西岸に落ちた。時の総理は、「関係機関に指示した。」と談話を出した。どこの国がこんなことをしたのか、断じて認めることはできないとか、コメントは一切ない。経済水域に弾頭は積んでないにしてもICBM本体が落ちているのに、危機意識はどこにあるのか。百年後の日本を見据えて政治を考えていたら、こんなコメントはあろうはずがない。

 

 二十世紀は、昭和が一発の銃声で始まったように、二度にわたる大戦、戦後は安保闘争などまさしく動乱と戦争の世紀だった。今世紀は見かけは国内的には平和で静かに進んでいる。しかし、このサイレントな平穏はいつ均衡が破られて、百年前の歴史を繰り返そうとするかは分からない。静謐の中で熱いものがうごめいてるようにも思える。

 

 「動乱」のテーマは、東映の解説にもあるように、青年将校とその妻との関係を描いている。変化の激しい生死の狭間で男女の愛はどのように変化するのが、動くのか。「寡黙な愛ほど強く激しい」という表現は、いったい今日の男女関係や夫婦関係と異質の物なのか。根本的には同質の物なのか。

 

 日露戦争で地上戦を指揮した乃木希典陸軍大将を紹介したが、旅順を陥落させるために日露両軍で十万人の戦死者が出た。日本の中核都市の人口だ。大将はたとえ戦勝国になってもいつも犠牲者のことを思っておられたことだろう。それは日本側の戦死者だけでなく、ロシア側の戦死者のことも・・・。

 

 大将は明治天皇崩御後の御大葬の日に静子夫人とともに自刀した。大将の命は天皇とともにあった。静子夫人も大将とともに命をともにした。いったい二人の間にどんな夫婦関係があったのだろう。固い絆で結ばれていなければ、命をともにすることはできないだろう。男であること、女であること、両性を遙かに超越したものがあったのだろう。

 

 見かけだけの平穏・平和の中で、まるで刃の先端を歩いているような平和の中で、人と人の関係はどうあるべきか、動乱の中を生きた青年将校と妻の関係から、解答が見つかるかも知れない。「寡黙な愛ほど強く激しい」の一言は、どの時代になっても不易なものなのかも知れない。「動乱」は戦争映画のようなタッチで描かれているが、激動する社会で生き抜く男女がどうあるべきか、そんな視点で見ると新しい地平が見えてくるかも・・・。

 

 それは、日本人の心をあぶり出すことでもある。戦前・戦中に大和魂と言う言葉がよく使われた。もう死語になりつつあるが、一部の軍国主義者や政治団体で軽率によく使われた言葉でもある。事実、この言葉は国家総動員のため利用されたこともあった。もともとは吉田松陰の幕府から断罪される二日前に弟子達に送られた「留魂禄」の一節にある。

 

 身はたとひ 武蔵の野辺に 朽ちぬとも 留置まし 大和魂

 

 私の身はたとえ武蔵の野辺に朽ち果てても、日本を思う心は留めておこう。人はなぜ寡黙になるのか。それは言葉では表現できない程、強くて激しいものなのだから。内に秘めるしかないほど強くて激しいものだから。松陰先生の三十一音は、世紀を超えてまた新しい意味を付け加えて、私たちの心に問いかけてくる。

 

 

 この作品は東映シアターの公式チャンネルで今月二十六日まで無料で見ることができます。