行き当たりばったりのアウトドアツアー 熊野路 | バイカルアザラシのnicoチャンネル

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 サイコロジストの日常と非日常を季節の移ろいを交えて描いています。バイカルアザラシのnicoちゃんの独り言です。聞き流してください。

 気まぐれに任せてアウトドアに出かけました。行き当たりばったりの1日です。

 

 熊野市の花窟神社。一人の女性が一心にお祈りを捧げています。こんなことをしたことがない自分にとってはハッとさせられる光景でした。

 

 

 

 久しぶりにアウトドアに出かけようと国道42号線を南下して紀伊長島町の海岸にやって来ました。ガスストーブでお湯を作ってピラフをいただきました。お湯を注げば美味しいピラフのできあがり。後はホットココアで体を温めます。


 腹ごしらえを終わったら海岸を散策します。海辺には小石が打ち上げられています。黒潮で洗われた小石は表面がなめらかでツルツルです。那智黒石があれば、花崗岩砂岩チャート石英鉄鉱石まで様々な石が転がっています。中には木星のような横縞模様の砂岩や真っ赤な火成岩も見つけました。堆積岩があれば、火成岩があり、何とも多種多様。いったいどこから流れ着いたのが不思議です。


 向こう岸は鈴島という無人島があり、その手前を数艘のカヤックが列をなして漕いでいきます。溶岩質の岸壁にはツワブキが黄色い花を咲かせています。駐車場の近くには大きな柑子の木が小さな実をみのらせました。いっぱい実をつけています。


 紀伊長島を出てさらに南下して熊野市まで来ました。無人市場に蜜柑を売っています。1袋が百円のもありました。小さな蜜柑ですが皮が薄くて甘いこと。美味しさは格別です。車は花窟神社にやって来ました。玉砂利を引いた参道を歩いて行くと程なくご神体の垂直の壁に当たります。熊野はこの世の果ての国、黄泉とうつつの境にあります。伊邪那美命が火の神を産み、焼けてしまい黄泉の国に行きました。夫の伊弉諾は黄泉の国に妻を取り返しに行きます。ウジ虫で蝕まれた体の伊邪那美命は彼を追いかけてきます。這う這うの体で現世にもどった夫はこの地に妻の墓を建てました。人類最初の墓はこの伊邪那美命の墓だと言われています。花窟神社と言われるようにお花を志す人たちがここでお祈りを捧げています。一心にひとりの女性が純白の玉砂利の上で祈りを捧げています。その祈りは垂直の岸壁を登っていき、やがてご神体の岸壁の中腹から貼られた御綱に触れました。彼女の祈りは伊邪那美命に確かに届いたのでしょう。二月と十月にこの御綱取り神事が行われます。巫女が舞を舞い、人々は綱をご神体に架けます。この綱は現世とあの世を繋いでいるのです。夏に来るとひんやりとした境内に純白のハマユウが咲き誇り、クロアゲハが何羽も舞っています。女神に捧げられた境内の夏は、絶壁のご神体に大輪のハマユウがまっ白に咲きます。今は、冬そのもの。容赦なく冷たい北西風が絶壁のご神体に吹き、まっ白な大波の怒濤をご神体に響かせています。夏は夏、冬は冬の美しさを発見できる花窟神社です。


 早くも太陽は西に傾き暗くなってきました。帰路はひたすら北上するのみ。始めの神と書いて、はじかみテラスでコロッケをいただきました。何か行き当たりばったりのアウトドアツアー。心にしみる1日でした。

 朗読ソフトの辞書が貧弱なので数カ所誤りがあります。花窟神社は「はなのいわやじんじや」で、伊邪那美命は「いざなみのみこと」です。