松阪市の市街から一時間ほど奈良県境の近くに菊壽って料亭がある。以前はテレビドラマの高校生レストランで有名な相可高校の食物調理科の弟子もここで腕を磨いた。百合を撮影に行ったついでに天ぷら定食を頼んだ。お値段は1000円。出てきたら豪華さにビックリ。エビが二尾もついている。タケノコもワラビも地元の物。お味噌も自家製。漬物や昆布の佃煮もすべてが手作り。すべてが美味しい。大満足。
ここ飯高町には「でんがら」って和菓子がある。和菓子と言うよりもおばあちゃんなどが家で作るスイーツみたいな物。パックを開けると朴の葉の香りが部屋中に広がる。中身は柏餅みたいな物。ヨモギの緑はもう夏を思わせる。素朴な美味しさ。きっとその土地の風土や人々の生活から生まれた逸品なのだろう。
帰ってきたらこんな物が玄関に置いてあった。誰が置いたのだろう?
包み紙を開いたら赤福の朔日餅だった。赤福はその月の初めの日に季節のスイーツを売り出す。よこせよこせで人気のある商品。朝からお店に並ばないと買えないこともあるらしい。もちろん本店でしか売らない。5月は柏餅だった。今月は何だろ?
「麦手餅」と書いてある。この季節は田植や麦刈りで猫の手も借りたい忙しさ。働き手のお礼に収穫した麦を手間賃に渡す。農繁期も終わり一休み。地元では「野上がり」と言う。和菓子の老舗が作る卓越した一品になっている。口に含めば新麦の香りが広がる。麦秋の香りだ。飾りもないけど美しい。赤福はさりげない和菓子を芸術品にまで高めてしまう。そんなマジックを持っている。